9,今は、どんなひとが
楽しむ事こそが、幸せなんだと。
こんな時間にごめんなさい。
予約しようとして間違ったのですが消す訳にもいかないので、前書きに謝罪を追加します。
私の“余興”の後、最後にデザートを食べてパーティーは終わった。
今はそそくさと部屋に帰って、さっさとお風呂に入ってネグリジェに着替えたところ。
「はぁ……。疲れたぁ〜。」
ドサッ……と、ベッドにうつ伏せに倒れ込む。
かなり緊張したし、疲れるのも当たり前だよね……。
そんな事を思いながらベッドに腰掛け直して、すぐ近くの窓から星空を眺めた。
闇夜を照らす、とても美しい星空。
思わず、唇から歌が零れた。
電車の窓から 見える赤い屋根は
小さい頃 僕が 住んでたあの家
庭に埋めた柿の種 大きくなったかな
クレヨンの落書きは まだ壁にあるかな
今はどんな人が 住んでるあの家
一番を歌い終わって、ふと気付いた。
……というより、歌ってる途中にだけど。
ここの世界は、日本語じゃないんだなってこと。
歌ってる時耳に聞こえてきた言葉が、さっきまで喋っていた言葉と違っていた。
……それで、ちゃんと分かるようになっちゃった……。
今まで話してたのはリリアーネの記憶にある言語、つまりこのゲームの世界の言葉で、日本語とは異なる。
まるでさっきの歌みたいね。
リリアーネの体に、私が住んでる。
今は、私が。
昔は、どんな人が……?
……多分、転生した時に物の価値とか知ってないとダメなやつはリリアーネの記憶を受け継いだのね…………。
……だから、今ならあのオレンジ色の飲み物の名前は分かる。
あれは「カーリル」って飲み物で、何かの実──これはリリアーネも知らなかったみたい──を絞って作ったジュース。
レ…………ゴホン、お父様が好んでるものなのね……。
で、あの甘い青い液体が、リリアーネの好物。
ラカルの実を絞って発酵させた甘酢で、「ツィンパフ」というジュース。
私もこれは好きになりそうね。
ご飯に出てきたもので食べられないものはなかったし、午後のティータイムに出てきたお菓子も──その時はどんなお菓子なのか分からなくてヒヤヒヤだったけど──味が好みだったし、私とリリアーネの味の好みは似てるのかもねぇ……。
……ちょっと接点が見つけられたかも!
そもそも何があって私はリリアーネになったんだろう……。
一人でなにもすることがないと、そんなことばっかり考えちゃうわね……。
でもかなり重要なことだと思うし記憶を辿ってみるけど、なにか手がかりになるような記憶はない。
先が思いやられるわ…………。
……と、その時、コンコンと扉がノックされた。
「どなた?」
「セシルでございます。入っても?」
「いいわよ。」
どうしたのかしら……?
……まあセシルはリリアーネ付きの召使いだし、理由がなくてもくるわよね。
「失礼します。」
そう言ってセシルは、なにか銀のボウルのような物を持って現れた。
リリアーネはどこにいるんだろうね………。