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隠し攻略対象の先輩と友人兼サポート役の美味しい日常

作者: 巽 玲也

特に内容はない感じなのでさらっと読んで楽しんで頂けると幸いです

「助けてくれてありがとう!私の名前は水鏡千賀っていうの。良かったらお友達になって欲しいな!私結構情報通だし、お友達になるメリット盛り盛りだと思うの!どうかな?」


 これは私が2日前に初対面の女の子に言った言葉だ。

「いや、こけたところ助けてもらったからって初対面ですぐ友達になろって普通言う?それに情報通って意味わかんないし、お友達になるメリット盛り盛りってパワーワード何?メリットとか考えて友達とか作らないってか、盛り盛りって言葉なんて普段使わないよ!!私は記者か情報屋のパリピですかってーの!?」

 私は自然に満ち溢れた裏庭で一人頭を抱える。なんでこうなった。こんな人間じゃないはずなのに!いや、よく考えるとこの世界に生まれてしまったこと自体が悪いのかもしれない。

「なんで、この世界は乙女ゲーの世界なのよ!!」

 確信があるわけではない。けれどわかるのだ。99%の確率でここは乙女ゲームの世界に違いない。じゃなければ、イケメンの顔を見ればよくわからないステータスなるものが周りに表示されないだろうし、書き込むのとかめんどくさくて絶対に手帳持たないマンである私の手に季節の行事やイケメンのプロフィールが書かれた分厚い手帳がある訳がないのだ!きっとこの世界の私の役割は主人公の友人役もとい主人公のサポート役なんだろう。乙女ゲームやった事ない私ですらそれくらい知ってる。まあ昨日調べたんだけど。

 そもそも一昨日コケた私を助けてくれたふわふわしたピンクベージュの髪の毛の女の子(とても可愛い)に言ったさっきの言葉だって私の口から勝手に滑り出たものだ。なにこれこわい。ホラーかなまじで…

「はあ、まあでも3年我慢すれば自由になれるかな。」

 そう。乙女ゲームには学園系、ミステリー系、ファンタジー系、時代物系など色々あるが、この街とかイケメンズに特にやばそうな秘密はなさそうだし、きっと学園系に違いない。であれば3年間、卒業まで親友役を頑張れば勝手によくわからないセリフを話すことも、変なイベントに巻き込まれる事はないのだ!

「3年無事になんとか程よい距離感で情報教えまくれば良いだけなのよね!大丈夫!私ならきっと出来る!イエス、ウィーキャン!!」


「いや、3年は長いだろ。それに一人だからYes,I can.じゃないか?」


「はっ!?誰!?」

 突如声が聞こえて来たので慌てて横を向くと紺色の艶やかな肩までの髪にとてつもなく整った男性的な美貌を持った男子学生が立っていた。無表情だけど。

 周りにステータスが出るのできっと彼も昨日のゆるふわ女子の攻略対象なのだろう。えーと名前は、名前は…

「え、俺か?俺は「皇光弥!?うそ、隠しキャラ!?」

 名前の横に皇光弥(隠し攻略対象)とご丁寧に書いてある。細かい所まで気を使ってくださり、ありがとうございます!!でもなんでだろう、素直に感謝できない!

「あー、もしかして俺は攻略対象ってやつ?」

「と、突然変なこと言ってすみま、え、え、あ、はい!そうらしいです!って、え、ここが乙女ゲームの世界ってわかるんですか!?」

「いや、なんとなくそうなのかなとは思ってた。あいつらの態度変だったしな…」

 先輩の言動に驚きつつ、あいつらと言われたのが誰か気になって手元の手帳を捲る。皇先輩に会ったからか、後ろの方の空白のページに彼のプロフィールが追加されていた。

「えーっと、2年生で生徒会長や会計と幼馴染?」

「ああ、その通りだ。その手帳そんなことまで書いてあんのか?個人情報だだ漏れでやべえな。」

「す、すみません…!でも、役割的に持たされてるだけなんです…個人情報過ぎて必要最低限しか見ないですし、話す相手は1人だけなので見逃して欲しいです…」

「春成 花奏だっけか?」

「彼女のこともご存知なんです!?」

「あいつらが不思議なくらいに突然春成の話ばっかし出すからな。まあ、そんな感じだから知り合いの妹がやってるっていう乙女ゲームなんて存在思い出したんだけど。隣座っていいか?」

「あ、じゃあちょっと横ずれますね!なるほど…結構皇先輩って勘鋭いですね…」

「偶々だろ。ん、やる。」

 皇先輩は横に座ると手に持っていた白い袋をごそごそと漁った。そして私に何かを差し出す。白い紙に包まれた…これなんだろう?

「くれるんですか?」

「あったかいうちに食ったほうがいいぞ」

 ありがとうございます、とお礼を言いながら恐る恐る受け取ってみる。温かくて柔らかい。やっぱり何かわからなくて皇先輩を見ると、彼はもう白い紙袋に包まれた食べ物にかぶりついていた。大きく口を開いて豪快に食べる姿を見ていたら急に小腹がすいてくる。

 先輩も食べてるなら危ないもんでもなさそうだし、手帳でも本人自体も良さそうな人だし、大丈夫でしょきっと!ええいどうとでもなれ!

「え、甘っ!美味しい!」

 がばっと紙を開け、中身も見ずにかぶりついた私の口の中で砂糖の美味しい甘さが炸裂する。これベルギーワッフルだ!美味しい!!

「だろ?これ移動販売のやつなんだけど美味いんだよ。」

 そう言って2個目のワッフルを食べる先輩は先程の無表情とは違い、少しだけ柔らかい表情をしていて、私は少しだけ見惚れてしまった。くっ、これだからイケメンは罪深い!!しかもあんなに豪快に食べてるのがワッフルとかギャップ萌えもあるとか強い!

 イケメン見ながら美味しいワッフルを食べられるという最強のシチュエーションだったからか、さくっとワッフルを食べ終えてしまった。ちょっとだけ物足りない気がしないでもないが流石に2個目は意地汚いというものだ。家に帰ったら何かおやつを探そうそうしよう。

「ほら。」

 また紙袋が差し出される。先ほどとは違い、今度は茶色の紙袋だ。

「え、いいんですか?でも先輩の分が…」

「食べたいだろ?あんバター」

「え、あんバター風味のワッフルですか!?(そんな、申し訳ないですよ…)」

 しまったぁあああああああああ!!あんバター風味なにそれ食べたいって一瞬思っちゃったから本音と建て前間違えて言っちゃった!初対面な上に2個目も食べるとか食い意地張りすぎでは!?今すぐ穴掘って埋まりたいレベルだよ!

 とかなんとか思いつつ、私の身体は本能に従いちゃっかりあんバターのワッフルを受け取っていた。茶色の紙袋からはあんこの甘い香りとバターの芳醇な香りが入り混じり、なんとも美味しそうな匂いが漏れ出ている。

 堪えきれず、ガサガサと紙をめくるときつね色の美しい焼き目がついた生地が視界に飛び込んで来る。生地にはあんこが練りこまれ、表面には所々に砂糖の塊がついていてなんとも美味しそうな見た目をしている。

 豊かな風味の香りをたっぷり吸い込みつつ、私はワッフルにかぶりついた。

「あんこ…次にバターが来る…美味しい…」

 歯で噛み千切った生地はふわりと柔らかくけれど程よい弾力で、砂糖の塊が時々しゃりしゃりということなる食感を与えてくれる。

 なんという幸せ!!

 冷めるのが嫌で、美味しいうちに食べ終わりたくて、一所懸命口を動かす。けれどしっかりと味わって。

「ご馳走様でした!!」

 もう物足りなさはなくなって、至福の満足感が私を襲う。

 そんな私の耳に笑い声が聞こえてきた。

「せ、先輩!」

 先輩は笑ってる。私の顔を見て、楽しそうにカラカラと声をあげて笑っている。その表情が素敵で、私は何度も心の中のシャッターを切った。

 好きだな、この表情…

 笑われてるのは私だから私は怒ったりするべきなのに、そんな気は微塵も起きずに彼の表情に魅入ってしまった。

「悪い、すごく美味しそうに食べるからつい笑っちまった!お前、食うの好きなんだな!」

「好きです!」

 先輩の表情も、美味しい食べ物も!

「そっか…」

 先輩は笑うのをやめて、ふと俯いた。私なんか返事間違えちゃったかな…


「だったら、俺と色々食べないか?」


「え?」

 急になに言ってくるんだこの人?私は言われたことが理解できなくて首を傾げる。動揺を表すかのように、私の髪がさらりと揺れた。

「俺、食べるのが好きなんだよ。美味しいものがたくさん食べたい。でも一人じゃ寂しいだろ?だから、もしお前も食べるの好きなら一緒にどうかなって。」

 あ、お金は心配すんなよ?俺んちお金持ちでお小遣い結構貰ってるからさ。一緒に食べてくれるだけで、美味しいって思ってくれればそれでいい。

 先輩はそう言って優しく微笑んだ。

 近くに咲いた桜の花びらが舞い散る中で微笑む先輩はまるで1枚の絵画のように綺麗で、私は思わず息を飲む。まさにこれがスチルってやつ…?

 その破壊力たるや半端なく、初対面だって言うのに先輩すごいこと言いますねって言おうと思って開いた口は勝手に「ぜ、ぜひ!」と答えていた。


 こうして攻略対象の皇先輩と主人公の友人兼サポート役の私による美味しいも探索の日々は始まりを告げたのでした。

 素敵な先輩と一緒に美味しいものをこれからもいっぱい食べたいので、主人公が皇先輩の存在に気づくまでどうかまだまだ時間がかかりますように!

美味しい食べ物とイケメンの組み合わせは最強だと思います。ガチで!


あ、ちょっとと言うか結構書き直したいので近々『薔薇と初恋』を1回下げたいと思います

書き直したらあげますので!すみません…

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