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きっかけ

デビューシングル発売記念イベントでCDを買ってくれた人達と握手をしながら私はドルオタ君改め、三沢くんが教えてくれた事を思い出す。


「あぁ、桜井かぁ。あいつならしばらく学校には来てないぜ。いや、学校で見かけたやつがいるらしいから、さわやかクラスには来ているかもしれないけど」


さわやかクラスと言うのは学校内にある特別な教室だ。集団生活に馴染めなかったりなにかしらハンデを抱えてしまっている生徒達に配慮して作られたクラス。

自分の所属している教室に行かずとも、出席した事が認められ、与えられた課題を黙々とこなせば成績にも響かない。


その状況から察するに彼女は逃げ出したのだろう。

私はさわやかクラスに逃げ場を求めた事はなかった。どうやら私は彼女よりも強い人間だったのだろう。


彼女はいったいなにから逃げ出したのか?


「なんかひどいイジメうけてるらしよ?」


そう言って三沢くんは知る限りの情報をだらだらと話す。だが、そのどんなエピソードに対しても私は驚きも哀れみも感じなかった。


それは以前私が彼女のいるグループにされてきた事のまだまだ序盤なのだから。

私が驚いたとしたらその点である。


そんなもんであの子は逃げ出すの!?


怖い話が苦手な女子に怖い話をするかのように、どんどん拍車がかかるいじめられる側あるあるを話してあげたくなった。


「ったく、いじめなんてこの時代流行らねぇよな。なにが楽しんだか」



三沢くんはそう言いながら話を長々と続けてくれた。小説やら創作物の中でしかしらないが、情報屋ってもっと見返りを求めたり、これ以上は言えねぇな!そんな口のかたいイメージだったのでなんだか拍子抜けだ。もし、もっと切り込んだ質問をしていたらその台詞を聞けたのかもしれないが今知りたい事をべらべらだらだらと間抜けな顔で真剣に話し続ける。

聞きに来たこっちから会話を終わらせたいと思ってしまうほどだった。

「ごめん、これから仕事なの!今日は最初のサインだから下手でごめんね。これからも応援してね!じゃあ、またメールする!」


私がそう言うまでその口は言葉を発し続けていたが、その一言が彼のオタク心をくすぐったようで満面の笑みで

「ありがとう、頑張って!」

言っていた!


そう、ちょうど今目の前に延々と現れて握手してくれているファンの皆様のように。

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