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「対面」

夏休み明け。二学期の始業式。

ただでさえ憂鬱な登校なのに。


私達の夏休みは何もなかった。そうゆう事になっている。誰もあの話をせず高校生らしく夏をエンジョイしていた。そうゆう事になっているのだ。

みんなで海に行ったり図書館で宿題すると言う名目で集まり勉強できるクラスメイトを呼び出しただただ書き写す会をしたあと、そうそうに冷房が効いている場所を探し求めカラオケやファミレスでくだらない話をしながらただただだらだらと、そんな日々を過ごしていた。


時折、話題になるのはあのアイドル様のお話。

胸糞悪い。嫌な記憶が蘇る。今日なんか特に学校中があの子の話題でいっぱいだろう。大事に大事にいじめてきたのにもう学校に来ることもないだろう。この夏休みはあまりにも彼女の人生を大きく変えた。

新しい子を探さなければ。私が次の標的にならないとは言い切れないのだから。


新しい子の選択をミスって反撃でもされたり、彼氏や仲の良い男子が強キャラだったりしたらめんどくさい事になる。

あ、兄弟も把握しなければひとりっ子や長男、長女も探らないと。

とりあえず登校しながら、学校の裏ページで嫌われてそうな子の名前を探しながら、その子の名前をSNSで検索する。


数人候補の見立てができた頃教室に着く。


「おはー。まじだるぃねー。」


「おはっ。ってか冷房の効き悪すぎじゃね?」


そんなくだらない話をする。1学期の終業式の次の日のように自然に会話が進む。


なんだか廊下がざわついてきた。


「なに?これ?」


「やばっ。アイドルきたって!」


「はぁ?マジで!?」


意図がわからなかった。そのままあっちの世界に行けばいいのにどうしていじめられる事しかないクラスに来るの?

スクールカーストに革命起こしに来たの?

マジで理解不能。


教室の扉が開く。

まだこの時期には早いであろうコートを身に纏っている。


たまにテレビで見る女優みたいだ。日焼け対策?うざっ。


コートを脱ぐと、その必要性を理解した。

復讐だったんだ。

そして、復讐劇の衣装を隠したかったんだ。


家事で焼け焦げた制服。


それを目にした瞬間。あの時の光景が蘇る。

錯覚なのか制服からする臭いなのか、嫌な刺激が鼻を襲う。


そして私は叫び声をあげていた。声を出したことによりその導線が定かになったのか、ひどい吐き気が押し寄せてきた。導線は涙腺までもを刺激して私はトイレを目指して教室を飛び出た。


莇里奈は気づいてる。

あの火事は、彼女の父親の死は、

たわいも無いいじめの延長にある事を。


便器に吐き出した朝食は、

「王様の耳はロバの耳!」

と叫んだ少年のような解消感をもたらしてはくれなかった。

触れずにいたストレスを具現化しただけでしかなかった。ぐっちゃぐちゃで醜く汚い。


あの日のあの火の様に水に流してしまいたかったが、しばらく自らが犯した罪を確認するかのように自身の胃から出た朝食をぼーっと眺めていた。


「仕方ない。子供がしたいたずらを回避できない大人が馬鹿なだけ」


そんな事を言いながら、ボタンを押して水に流したのはどれだけの時間を有したのだろうか。


大丈夫。私は悪くない。

トイレのドアの向こうに私を心配して追いかけてきた仲間がいる。仲間?


顔を整えて何食わぬ顔でドアを開ける。




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