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心変わり

 

 「なあ、ジョン。俺さ、一度冥界に帰ってみようと思うのだが……どう思う?」



 はぁ? なんだ、なんだ、今日は色々と可笑しなことが起きているのですが……朝はリリィの機嫌が良くなっていたというのに、今度はお前かグリムロード。



 朝食を終えて、ソファでのんびりと本を読み始めた俺にはその気が全く失せてしまったぞ。



 それにしてもお前のその意思に異論はないけどよ、一昨日渋っていたのはなんだったんだよ。あんなに冥界に未練はないと言っていた筈が、どういう心境の変化だ?



 「いやなに……昨日夜中ひとりで考えてみたのだが、お前がリリィを救って責任を感じ、育てているように、俺も自分が敷いた平和をもう一度立て直す必要があるのではと感じてな」



 ええ……お前一昨日はそんなこと微塵も匂わせてなかったのに……俺は別にいいけどさ……本当にお前グリムロードか? なんか言っていることの統合性がないというか、脈絡無いというか……本当に大丈夫か?



 「失礼だな。俺は真剣に考えて答えを出したのさ。クローエルが言うように、戦争を知らぬ子供を産み出したのは俺の責任でもある。大海を知らない蛙は大海では生きられないからな。それぐらいは救ってやらないとな」



 ふーん……まあいいけど、じゃあお前はもうあっちで暮らすようになるのか。せっかく仲良くなれたのに少し寂しい感じだな。



 「いや、それはいらぬ心配だ」



 どういうこと?



 「今回はあちらの世界に一時的に帰還するだけで、争いの火種を潰したら俺は再びこっちまで戻ってくるつもりさ」



 はあ? なにそれ……



 「謂わば、何日で冥界を平和に出来るかタイムトライアルってことだな」



 か、勝手にゲーム性を付け加えてやがるこいつ……そんな気持ちで冥界を救うつもりかよ、グリム。



 「ふん……何事も楽しまなくては、損だぞジョン」



 年上からの助言であるというように俺へ言うグリムだが、俺は忘れないからな、お前の一昨日の渋り様を。




 結局グリムはその日の夜には再びセシリアさんと連絡を取り、俺の体から霊体として抜けていった。なんでもセシリアさんとは同じ世界にいるならばどこでもテレパシー的な疎通で連絡を取りあえるらしい。……羨ましい。



 俺の体から抜けて行く際、リリィに向けてグリムが「約束は守る」と告げていったのがなんだか意味深であったが、リリィにそれを尋ねても彼女は少しも答えてはくれなかった。ただ笑い、「人間がいれば寂しくないよ」というのみであり、なんだか俺だけ疎外感があって少しだけ悲しくなった。



 グリムの抜けた体はなんだか軽く感じて、その軽さが妙に虚しく思えた。

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