怖すぎる。
朝起きると隣にリリィの姿はなく、一足先に起きて朝食を作っている様だった。
憂鬱だ。結局、昨日はリリィとは朝以降一言も喋れていないのだ。どうにかして仲を修繕しなくてはならないのだが……
まずは彼女の朝のご機嫌を窺う為に、寝室のドアを少しだけ開けて俺は隙間から彼女が見えないか努めてみる。するとどうだろうか、恐らくキッチンの方からであろうが、フンフンと鼻歌が聞こえてくるではないか。え、どうして? 凄く機嫌がいい気がするぞ!
いや……機嫌が良くなるような覚えが無い為、油断は出来ない。俺はできるだけ申し訳なさそうな表情を作りながら、リビングへと出て、ダイニングへと向かった。
「おはよう人間」
ダイニングへ入るやいなや、開口一番にリリィが俺へ挨拶をとばす。彼女の声も顔もご機嫌である!
思わず呆気にとられてしまう俺、いったいどういう事だ……
しかもダイニングテーブルを見てみれば、朝食とは思えないほどの種類の料理の数々がテーブルのスペースをすし詰め状態で並んでいるじゃないか!! いったいどういう事だ!?
「今日はなんだか張り切り過ぎちゃった〜」
語尾を伸ばしながらそう言う彼女だが、これは作り過ぎたなんて量じゃあない。クリームのスープに鶏肉のハーブ焼き、ボウルに盛られた7色サラダ。大皿のエビチリによく似た料理。小さなイチゴが乗ったババロア。いつもの固いパンではなく、数種類のふんわりとしたお高いパン。いやいや、どうした!? と突っ込みたくなるのも当然であった。
呆気にとられながらも席に着く俺、いや、料理に怯んでどうする! 俺は今日こそリリィに許してもらうのだ! もう機嫌はいいみたいだけど、それは逆に怒り過ぎてそう振る舞っているという可能性にもなる! しっかり謝るのだ!
「あ、あのさ……リリィ……」
「ん? どーしたの」
「昨日はゴメン……俺の無神経さでお前を傷付けた……」
「うん、大丈夫。さあご飯食べよ?」
……やっぱり許してはくれないか…って、ええ!?許すのかい! あっさり!?
てか普通に会話してるしよ! なんのこっちゃ……
リリィは俺に御構い無しで椅子に着くと、豪勢な朝食へとありつき始める。俺はほっとかれているのだがな……
いったいどーゆーことなの……なんで彼女はこんなご機嫌なの……誰か教えて下さい。
俺は朝から混乱と立ち向かいながら、豪勢な食事をちまちまと食べ始めた。味の方はクッソ美味しかったです。




