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下着で生活して風邪こじらせて死ね。

 

 「なかなかの品揃えではないか人間」



 脅されて結局要求を呑むしかなかった俺は、村に一つしかないブティックへとリリィを連れて来ていた。



 村に一つしかないからか、それとも店主の熱量がハンパではないのか、この店は異様に規模がでかい。村で比較的大きな村長の自宅の1.5倍はある建物の店内には、主婦層の姿が多く見受けられた。



 「お、今日は一段とベッピンさんを連れているじゃないかジョン。ついにそういう嗜好に走ったか」



 幼馴染兼、この店の二代目店主である『カナリー・イケメンツ』が声を掛けてきた。この店の先代であるこの男の父親が、王国で毎年行われている年末の宝くじで一等の八千メーテル(約八億円)を当てた事によりこの店は建てられたのだが、元々数々の商売に手を掛けていた彼らの一族にとっては、この店は金持ちの道楽程度でしかない事を俺は知っている。



 そんな店の二代目とは……俺からすれば喉から手が出るほどに羨ましいご身分であった。



 「俺のストーカーだ」

 「ハハハ、また冗談を。どうしたらストーカーと服を買いに来るってんだよ」

 「色々と人質にとられてんだよ。俺の安寧の日々が脅かされる危機なのだ」



 俺の言葉を微塵も本気とは思っていないのか、カナリーはリリィの側に寄り、どんな服が良いかなど聞いていた。



 「お嬢さん、今日はどんな服をお探しで?」

 「お? おお……悪いなお兄さん、気を遣わせてしまって……まあ、目的は無いのだが……イケてる貴方であれば私に合う服を見繕ってくれるのでは?」

 「ええ?僕ですか?別に良いのですが……本当に僕でよろしいのですか?」

 「かまわんかまわん。そこの底辺顔に見てもらうよりも何倍も意味がある」



 聞こえとるわ。誰が底辺顔だ。この野郎……相手が俺じゃなければカマトトぶりやがって。



 「カナリー!! 水着でも着せて外に放っぽり出しとけ!! 」

 「ハハッ、まーた冗談言って……こんな可愛い子にそんな悪い事言っちゃ可哀想だよ。ジョン」

 「そーだ!私可愛い子!外に放っぽり出されるのは馬鹿人間が相応しいぞ〜」



 この腐れエルフめ、カナリーが味方についたと思って調子に乗りやがって。



 まあしかし、これ以上騒がしくして店に迷惑を掛けるのは申し訳ないので、ここは俺が折れておこう。



 リリィとカナリーはそれから30分近く物色し、結局5セット程服を見繕った。



 ……5セット?



 「っておおおおおいい!! 何で5セットも見繕ってんだ!!総額いくら払わせるつもりだ!!おいカナリー!!」

 「いや、僕はただリリィちゃんが求めるままに選んだだけで……」

 「リリカス、どういう事だ」

 「どういうも何も、私は女性だぞ。普段から着る服だって多く必要だ。5セットなんて最低限の服に決まっとるだろ」



 ふざけるな。たしかに生活するには元々着ていたボロボロの肌着みてぇな物じゃ、体にも良くはないだろう。



 しかしだ! 何も5セットも買う必要はないんじゃないでしょうか!せめて2セット、多くても3セットだろが!もう少し遠慮しろよ!オシャレを楽しもうとしているんじゃない!



 「お前あんまり調子に乗ってんじゃ────」

 「お前のスキルの事をバラしてもいいのか……?」



 な、なんだと、コイツ俺をまだ脅すつもりか……安寧スキルは誰にもバラしてはならない……それは神様から告げられた約束事……きっと他の人間にバラされたら世にも恐ろしい事が起きるに違いない。



 何故コイツがその事を脅し文句として利用しているのかはなんとなく察しがつく。コイツらエルフは人よりも神とのシンパシー、感覚が明らかに近しい存在だ。俺がスキルを持っている事を看破した時点で、何となく他者にバラしてはいけないという制約がある事を見抜いたのだろう。



 リリィにバレていてまだ何も起きていないのは、俺自身がバラしたわけではない為だろう。しかしリリィがもし他者に言った場合はどうなるのだろうか……俺自身が言ったわけではないから、同じく何事も起きないと言える気もするが……何も起きないという確信もない……



 であれば、危ない橋を渡ることは避けていた方がいいだろう……たとえ金を消費したとしても。



 「……ご…」

 「ん?」

 「……5セットまでだ…それ以上は買わん……」



 ニタリニタリと勝ち誇ったように、嫌な笑い方をするリリィに俺は寒気を覚える。



 このままでは俺の貯蓄はコイツに搾取されていく一方だ! なんとかしなくては……



 しかし、今どうにか出来るような策はないから、とりあえずは明日からの仕事を少し増やし、収入を増やすしかないだろうな。



 好機は寝て待つ。


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