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街だよ

 

 エルフ達の里にはまだ調査隊は来ていないようだった。俺がグリムロードのブレスの件はしらばっくれて欲しいと頼み込むとエルフ達は快く了承してくれ、思いのほか用事の一件目は無事に終了した。



 エルフ達にそれだけの力があるなら、誇示すれば良いだろうと言われたが、あいにく命を狙われたり、警戒されるのは嫌なのだ。それにブレスの件は俺ではなく、完全にグリムロードの力であるのでそれを誇示するのは、流石に虎の威を借る狐が過ぎるだろう。



 そしてリリィを里に置いていく悪巧みについてだが、里中のやつらから会う度会う度に、重々お願いされたので、置いてくるタイミングも見つからず、結局俺と一緒に街に行くことになった。



 あいつら絶対リリィが混血だから、俺に押し付けたいだけだよな……バステアは違うみたいだがな……完全に都合のいいように使われている気がした。



 「すっごーーーい!! 人間!! いっぱい人がいるぞ!!」



 街を守るように囲む大壁の入り口となる門を抜け、馬小屋にビンタを預ける。そして街の入り口となるもう一つの内門をくぐると、そこに広がる光景にリリィは大声を上げて興奮していた。



 往来する人々。活気づいた露店の店主ら。村にはない強固にして華やかな造りの家々。そして通りの最奥、はるか遠方に見える一つの白壁の城。



 此処こそ、俺達の住むロリエント領の、最大の街『グランマ』である。高い防壁に囲まれたこの街は人口だけでも2万を超える巨大な街であり、遠方に見える白璧の城こそ、領主であるローレンス・ロリエント様の住む城である。



 豊かな自然からなる酒造で作られる酒が名産であり、高い物から安いものまで、此処の酒は全世界に送られるほどの人気がある。



 それ以外にも織物や石鹸、香水、ファッションの発展が著しく、流行の発祥にも一役買っているとか……俺も服には興味はあまりないが、石鹸に対しては敏感なので、この街にはよく訪れている。



 とにかくデカイこの街。目的もなくブラブラするだけならまだしも、買いたいものがあっても店の場所が分からなくては一日中探しても見つからないなんてこともある。誰か人と一緒に来るなら、はぐれないようにしなくてはならない。



 「おいリリィ、興奮するのはいいが、俺達は遊びに来たわけじゃない。しっかり後をついて来いよ?」

 「心配し過ぎだよ人間。小さいからって馬鹿にしないで」



 大丈夫かな……



 この人混みの中、リリィ程小さいとどこかにすぐに消えてしまいそうだ。別にこいつが何処かに行くのは構わんが、バステア達に頼まれている以上、その身に何かあっては、俺の沽券こけんにかかわる。ここは最善の方法を取っておこう。



 「心配だからおぶってやる。来い」



 手を繋いで引っ張ってやるのもいいが、それだと手が離れ離れになることもある。そうなると面倒だ。リリィの体の小ささならおぶったほうが確実だろうな。



 俺はしゃがみこみ、背をリリィに向けた。



 「え」

 「早く来い」

 「…………」

 「どうした? 前もおぶってやったろうに」



 俺が何を言っているか分からないわけはないと思うが、リリィは躊躇っている様子だった。なんだよ怪我をした時はおぶれおぶれと騒いでいたくせに。



 「リリィ?」



 俺は顔も向けず、声をかけてやる。早くしろ、これでは俺が背負いたくて堪らないみたいじゃないか!



 道行く人の視線が気になりだした時、ようやく背中に柔らかい子供の感触を感じた。リリィの両足に手を回し立ち上がる。俺の低ステータスでも持ち上がる軽さに少しだけ笑いたくなった。



 「……変なとこ触らないでね」



 ませた発言にイラッときた。いったいどのツラ下げてそんな台詞を言っているんだか。



 いらぬ警戒を向ける彼女を、俺は今すぐ落としたくなりつつ、歩みを始めた。






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