125.第3回イベント 奇策
テイトクは敗北した日から、ずっと考えていた。あの時はステータス、スキル構成、自らのPSには自信があった。
しかし、アルベルトには真正面から打ち破られ、最後に情けで1発を受けて貰うという屈辱を味わってしまう。
今日の為に色々とスキル構成を変えてきた! それを見せてやる!
「『トリックルーム』!」
「……四方と上に薄い壁を張ったか」
部屋みたいな空間にアルベルトとテイトクが閉じ込められる形に見えるが、人は壁を通り抜けることが出来る。しかし、コロシアムには場外があり、3カウントを過ぎたら負けになるルールがあり、『トリックルーム』が張っている場所は四方、場外ギリギリなのだ。
…………その壁はただの壁ではない。一定以上の威力は通り抜けるという特性がある。なら、一定以下の威力を持つ攻撃はどうなるか? それはーーーー
「『三連弾』、『三連弾』!」
テイトクはアルベルトへ直接に撃たず、張ったばかりの壁へ向かって撃ち出した。そして、その弾は壁を通り抜けることはなく…………反射した。
「むっ」
壁から壁へ。最終的にアルベルトがいる場所へ合計の6発が全て違う方向から反射していく。
しかし、アルベルトは弾くだけでは全てを避けられないと判断し、ここでスキルを発動した。
「『バック・シールド』」
光る盾が背後に現れ、背後を狙った弾は盾で防ぎ、横からの弾は前へ走り避け……正面からは長剣で弾くことで回避した。
「それぐらいなら避けるとわかっていたわ。だから、枷を付ける!『毒沼』!」
『おっと! 地面の所々に毒の沼を設置したぞー!? あのスキルは第1フィールドにいる中ボスが使うスキルですね!』
そう、司会のクイナが話した通り、そのスキルは中ボス、サテヘドロが使ってくるモノだ。単独でボスを討伐すれば、ヨミが使う『魚群アロー』と同じように中ボスが使うスキルをスキルオーブで手に入ることが出来る。
足場を減らせば、当たる確率が上がる。アルベルトといえ、延々と銃弾を撃たれていて生き残るのは無理だろう!
テイトクが考えたアルベルトへの対策はハメ殺しであるが、それしか倒せる作戦が思い付かなかったのだ。それほどにアルベルトの身体能力、動体視力、反射神経が桁外れである。
しかし、当のアルベルトはまだつまらなそうな眼でテイトクを見る。
「……それだけか?」
「ふん、耐えてから言うんだな。『三連弾』、『バースト』、『三連弾』、『パラアシスショット』! 『ツイン・バーストブレイク』!!」
テイトクは高等技術であるアーツチェーンをあっさりと使い、最後に正面へ現在の最高威力である『ツイン・バーストブレイク』を撃ち出した。初心者の長剣で防げる威力ではないスキルも混ぜられた銃弾の嵐がアルベルトを襲う。
「ーーーーやっぱり、たいしたことはなかったな」
全ての銃弾はアルベルトへ着弾して、砂煙が漂う。観客はアルベルトが防ぐことも出来ず、やられそうになっているのでは? と思った先にーーーー
「がは、ッ!?」
テイトクがいる場所から声が聞こえ、観客の視線がテイトクに向かうと驚きの姿があった。
テイトクの身体には銃弾の傷が刻まれていたからだ。
「な、何が……道連れ? それか、傷を移した? いや! そんなスキルはあり得ない……!」
「そうだな。そんなスキルは聞いたこともないからな」
「ッ! な、なんだと……!?」
砂煙が晴れ、アルベルトの姿が見えるようになったのだがーーーー
アルベルトは無傷だった。
何かトリックが? 何故、テイトクがダメージを受けて、アルベルトは無傷なのか?
その答えは次話にて!