124.第3回イベント 因縁
《テイトク視点》
ーーついに、この時が来た。
テイトクは個人の待機室にいた。現在行われている試合を観戦することも出来たが、それをせずに自分の出番が来るまでは待機室で武器の点検、ステータスやスキルの確認をしていた。
まさか、1回戦から戦えるとは我は運がいい。
普通なら第1位であるアルベルトと1回戦から当たる等は運が良いとは言えないだろう。だが、テイトクにとっては因縁がある相手なので別である。
あの時のことはいつまで経っても忘れることはない。つまらなそうな眼で我を見たことを!
『お、おおっ……『仮面ちゃん』の勝利です!! 準決勝への進出が決まりましたぁぁぁ!!』
司会のアナウンスで1回戦が終わったことを知るテイトク。
「仮面ちゃん? あぁ、レッドで有名な奴か……いや、今はアルベルトの奴を倒すことだけ考えればいい」
今のテイトクはとても集中出来ていて、調子も悪くはない。因縁の相手と戦えることに拍車が掛かっていた。
『次は『アルベルト』と『テイトク』の戦いになります! 両者、10分以内に会場までお越し下さい!』
始まったか。
突如に画面が開き、現場への転移が出来るボタンが浮かんでいた。準備は既に終わらせているテイトクはすぐボタンを押した。
会場の中心に転移したテイトクは戦場になるコロシアムみたいな会場を見渡す。
……これなら、範囲の設定はしなくても良さそうだなーーーー来たか。
テイトクが転移して、数秒後にアルベルトが転移してきた。しかし、アルベルトは対戦相手であるテイトクを見ているようで見てはいなかった。まるで、テイトクが背景の一部であるように俯瞰した眼で見ている。
チッ、すぐその眼を変えてやる!
『さぁ! 第2回戦が始まりますーーーー』
司会が何か喋っているが、テイトクは聞いていなかった。始まりの合図が出るまではただアルベルトを睨んでいるだけ。その視線を受けているアルベルトはただ得物を抜くだけ。
その得物である武器を視界に入れると、思わず叫んでしまう。
「貴様、何のつもりだ! ここで初心者の長剣を抜く!?」
「……はぁ、これで充分だと判断したからだ。それに、早く終わってしまったらつまらないじゃないか」
「貴様……」
すぐ額に銃弾をぶちこみたいテイトクだったが、まだ合図は出てない。怒りに耐え、ギリッと二丁の銃を握る。しばらく待ち、そしてーーーー
『ーーーースタート!』
バンバン!!
先手を取ったのはテイトク。2発の銃弾がアルベルトへ向かうが、軌道を読んだアルベルトは長剣を軌道を遮るように置くだけで弾いた。
「『バースト』、『パラアシスショット』!」
方向、距離を変えながら次の弾を放つ。『バースト』は爆発する弾、『パラアシスショット』は麻痺の状態異常を付加する効果がある。
弾を弾くなどの芸当はもはや超人の域に入るが、アルベルトと戦ったことがあるテイトクはそれぐらいは簡単にやってのけることを知っている。だから、時間差に違う方向から撃たれる、弾いては駄目な弾とかするだけでも麻痺する弾を撃った。
しかしーーーー
爆発する弾は避けられ、麻痺の弾だけを弾いていた。
糞が、弾くだけじゃなく、見極めることも出来んのかよ!
アルベルトがやったことは、速く飛ぶ弾を長剣で弾ける弾と弾けない弾を見極めて、実践させて見せたのだ。
単に眼が良いだけと言って良いことではない。弾の小さな違いから『バースト』と『パラアシスショット』の見極めが出来ても、次の動きに移行するのが遅れたら意味がない。なのに、アルベルトはそれを難なくやってのけたのだ。
「それで終わりなのか?」
「んな訳があるか!」
少し早いが、もう決着を付けてやる!
「『トリックルーム』!」
テイトクは切り札を切った。2人を閉じ込める結界が発動され、薄いピンク色の壁が四方、上方に現れるーーーー
アルベルトとテイトクの戦いはまだ続きます。
テイトクの切り札、アルベルトに通じるのか?
続きをお楽しみに!