123.第3回イベント 新技
ドルマが本来の姿を見せるとメイドは驚くが、すぐ元の表情に戻る。
「武器はモンスターでしたか」
「頼りになる相棒でもあるわ……行けッ!」
「ギゲゲゲェェ!!」
自慢の刃先でメイドを切り裂こうと伸びていくが、単調だったからか剣の腹と言える刃が無い部分を掌底で弾かれていた。
「ギゲ!? ギゲッ!」
「今度は撹乱しに来たようですが……」
メイドにはドルマの動きが見えており、突っ込んでくる以外は動かず、見に撤して……突っ込んできた時だけ動いて弾いていた。
「あら、本当に動きが見えているのね。ドルマ、戻りなさい!」
「ギゲッ……」
「ただ突っ込むだけじゃ、当たらないわよ。まだ経験が足りないから仕方がないけどね」
伸ばしていたドルマは元の形へ戻り、攻撃が当たらないことに落ち込むドルマを慰める。
先に言っておくが、ドルマの動きはAGI通りの速さになっているから常人では捉えるのは難しい程だ。
ドルマの動きを捉えられるのは本人の動体視力が凄いか、スキルのお陰かわからないけど……私が上手く使えばいいだけよ。
ドルマの強さは単体でプレイヤーと渡り合えるステータスだけじゃない。それをこれから見せるつもりだ。
「実体がある物は受け流せるけど……音は無理でしょ? 『呪怨咆哮』!」
「ギゲゲゲゲゲェェェェェ!!」
「ッ!」
メイドは咄嗟に地面へ伏せ、耳を塞いだ。衝撃波は完全に防げておらず少しだけダメージを受けていたが、何故か恐怖の状態異常は受けていない。
状態異常を防ぐ装備があるんでしょうね。本当に、手本になる人だよね……
初めて見せた技なのに、メイドは咄嗟に最適解を導き出して見せた。ほぼ効果を与えられず、隙も全く見せてくれない。
「うひひひ! 本当に凄いよね! だから、潰したくなるわぁ!!」
「来なさい」
メイドはどう見てもカウンター型の格闘家で、攻撃を誘っていた。迂闊に飛び出せば痛い目に合うだろうが…………仮面ちゃんはあえて乗る。
「うひっ!」
「正面から来ますか!?」
仮面ちゃんはシンプルに上段斬りで頭から斬り裂こうとする。当然ながら、メイドにはその単調な攻撃には当たらない。剣の腹を弾き、カウンターを打ち込もうとするが…………キッカが拳を受け止めていた。
「なっ!?」
「『夜天月斬』!」
ドルマを避けられたのは予定通りで、地面へ当たる瞬間に『夜天月斬』を発動した。そしたら、どうなるか?
地面が斬られる結果にならず、『夜天月斬』が衝撃になって破壊を生み出す。周りに石の礫と衝撃波が散ることになり、近くにいたメイドはそれをまともに受けてしまう。
「うぐ!?」
「怯んだな!」
「まだッ!」
メイドは受けたダメージが大きく、少し怯んだが、横薙ぎに動かされたドルマを受けずに地面を転がることで避ける。銀のナイフを投げて、距離を取らせようとしたが…………
「うひ、私は運が良いわ」
「がふっ!」
ドルマを避けた筈のメイドが吹き飛ばされていた。何かに脇腹へぶつかって吹き飛ばされたのは理解したが、どうやったまではわかっていない。
その攻撃でHPがレッドゾーンまで減らされてしまったメイド。
「何が……いや、『手当て』!」
メイドのスキル、『手当て』でHPを回復しようとするが、仮面ちゃんは見逃すつもりはなかった。
「させないわ! 『黒月牙突』!」
この前、『武技之型』がレベル2になっていたので、新しい武技を作り出していた。それが、『黒月牙突』。その技は…………
メイドが腹に大きく穴を空けられていた。
「が、み、見えなかった……?」
「そりゃ、MPを半分も喰う技だもの。それだけの威力と速さを持っているわ」
簡単に言えば、突きで穴を空けるだけの技だ。シンプルなだけに威力と速さは結構高い。その代わりに消費が馬鹿みたいに多いが。回復したHPごと削られ、メイドは光の粒になったのだった。
『お、おおっ……『仮面ちゃん』の勝利です!! 準決勝への進出が決まりましたぁぁぁ!!』
メイドを降し、準決勝へ進出となりました!
次はアルベルトとテイトクの戦いになります。お楽しみに!