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1-1

 細い長剣を背負った少女は、柔らかく揺らぐ草原を突っ切る様にして進んでいた。そこに人が通った跡はあるものの、あまり頻繁に使われている道では無いらしく、雑草が生え始めている。

 前後左右に人気は無く、人工物の気配も無い。上を向くと抜けるような青空があり、一羽の鳥が気持ちよさそうに飛んでいる。

 彼女はゆっくりと辺りを見渡しながら歩いた。

 そういえば、しばらく人と会っていない。

 そんなことを考えていると、頬に当たる暖かな風の中に、何かを感じて立ち止まる。

「水気が多い……近いうちに雨になるのかな」

 短く切りそろえた白い髪を揺らし、彼女は再び歩き出す。細くともしなやかな両脚は確実に地面を捉え、確実に先へと進んでいく。

(――そろそろ、仕事をしないとな)

 それは、彼女にとってここ数日の頭痛の種だった。食料や水の量が減っていく一方だったのだ。

 彼女は俯き、自らの右手に目をやった。

(――それに、このままだとまた進行してしまう)

「……次の街で探すか」

 小さくため息をついて、彼女は視線を前に戻した。

「――おや?」

 彼女の視線の遥か先に、黒っぽい物が蠢くのが見えた。

「へぇ……いるんだ」

 それを視界に留めたまま、彼女は再び歩き出した。


 小さなその村の井戸の前には、数人の村人が集まっていた。その中でも一番の年長者である老人が、曲がった腰に手をあてながら口を開いた。

「その話は……本当なのか?」

 それを聞いた一人の若者が、大きく頷いた。彼の顔からは血の気が引いていて、微かに身体が震えている。

「ま、間違いありません……火種の草を取りに行く途中で、確かに見たのです……ど、どうしましょう?」

 老人は禿頭を自らの手で撫でた。

「発見が遅れたのは仕方がない……今からでも『ガーデン』に行って、討伐隊を要請するしか……」

 その言葉を聞いて、集まった人々の表情は曇った。

「間に合うでしょうか……」

「しかし、このまま何もしないよりはましだ。もし『ビーター』が村を見つければ終わりだ」

「くそ……討伐隊の見回りの直後に出るとは間が悪い……」

 血の気が引いた若者がそう言うと、老人は首を左右に振った。

「仕方がない。こんな小さな村の方まで巡回してくれているのが、むしろありがたいくらいなのだから」

「……ガーデンへの伝達は誰に行かせましょう?」

「いま村に残っていて、一番足の速いものは……」

 その言葉で、一人の女性に皆の視線が集まる。

「そ、そんな……うちの子供が道中でビーターに見つかりでもしたら……」

「しかし、それはこのまま待っていても同じこと。いずれこの村は奴らに見つかり、みんな食われてしまうぞ」

「で、でも……」

 女性は顔を覆って崩れ落ち、声を震わせた。

「うちの子が……そんな危ない目に……」

 場には女性の嗚咽だけが響き、他に口を開く者はいなかった。

 しかし、最初の若者が口調を荒げて女性に発言した。

「村人全員が奴らの餌食になよりはマシだろう! それに、あんたの子供がビーターに食われると決まったわけじゃない。みんなのことも考えてくれ!」

「ぐっ……うう……」

 若者の言葉を聞いて、女性は更に嗚咽の声を上げた。

 その時、場に快活な声が響いた。

「もしかして、ビーターの話をしているのかい?」

 一同が声を方を向くと、細い長剣を背負った白髪の少女。彼女は腕を組み、一同の方をじっと見つめている。

「ど、どちら様ですかな?」

 誰も口を開く様子が無かったので、仕方ないという様子で老人が尋ねた。

「私はリリー。見た通り、食い詰めた旅人だ」

 一同はリリーの様子を繁々と観察し、その言葉を簡単に信じた。ボロボロになった衣服に、決して肉付きが良いとは言えない身体つき。旅人であることも、食い詰めていることも明白だったのだ。

「生憎ですが旅のお嬢さん、この村には宿屋の類はありません。もっと大きな街へ行かれたほうが……」

「あぁ、別に宿を探してきたわけじゃない」

「と……申しますと?」

 リリーは背中の長剣をすらりと抜いた。それは白濁した刀身がやや歪曲している、美しい代物だった。

「私の生業は化け物退治。この辺で見かけたっていうビーター、私に任せてみないか?」

「しかし……」

 老人は狼狽えた。改めてリリーと名乗る少女を観察してみたが、とても化け物退治ができるとは思えない。枝のように痩せている手足に、頼りない背丈。確かに武器は持っているようだが、どれほどの使い手なのかもわからない。

「悪いことは言わない。お嬢さん、そんな物騒な商売はすぐに廃業にしたほうがいい」

 老人は曲がった腰が痛むのか、二度ほど叩いた。

「心配することは無いよ。それに、あんた達にとっても悪い話じゃないはずだ。もし仮に私が死んでも、部外者が死んだだけ。あんたちには大して関係ないだろう?」

 その問いかけに、場の空気は乱れた。それぞれが顔を見合わせて、決して口にしないまでも、リリーの意見に肯定を示しているようだった。

「だが、危ないことには変わりないでしょう」

 老人はしばし考え込んでいたが、やがてそう口にした。

「それに、こちらでも考えがあります。これから使いをやって、討伐隊を呼んできてもらうのです」

「へぇ……それ、間に合うのかい?」

「わかりません……しかし、討伐隊さえ来ていただけたら怖いものはありません」

(ずいぶん信用されてるんだな、討伐隊ってのは)

 リリーは顎に手をやってしばらく考え込み、地面に崩れ落ちている一人の女性に視線を向けた。彼女はとても落ち込んだ様子で、顔を上げようとしない。

「使いってのは、あんたの家族かい?」

 女性はゆっくりと顔を上げ、赤くなった目でリリーを見て、頷いた。

「私の……子供です」

「よし、じゃあこうしよう」

 リリーは歩を進め、場の中心で立ち止まった。

「私がビーターの気を引くから、その隙に使いをやってくれ。そうすればこの人の子供も安全だし、もし私がやられても、時間を稼げるから村が助かる可能性が高い」

「し、しかし……どうしてそんなことを」

「言っただろ、私はこれを生業にして旅の資金を稼いでいるんだ」


 使いの少年はリリーよりも小さく、しかし気の強い目をしていた。自分の脚に自信があるのか、「ねーちゃんが汗をかく前にガーデンについてやる」と軽口を叩いた。

「すみません。本当に、なんてお礼をしていいやら……」

 母親は頭を下げた。しかし少年は納得がいかない様子で唇を尖らせている。

「別に、僕だけも大丈夫なんだけどな。ビーターに見つかっても、すぐに逃げ切ってやるのに」

 そんなことを言って、母親に頭を叩かれたりしている。

 その様子を、リリーは微かに口角を上げながら眺めていた。

(懐かしいな、こういうの)

 老人が来て、少年とリリーに準備はいいかと告げた。

「いつでもいいよ!」

「問題ない」

 老人が先頭に立ち、二人を村の入り口まで送った。他の村人はそれぞれの家の中に隠れているのか、全く人の気配はない。ただその家の窓から、リリーは自らに刺さる視線だけは感じていた。

(まるで生贄の気分だな)

 自分で言い出した案ではあるが、リリーは少し複雑な思いを感じていた。それは自分が犠牲になるかもしれないという不安からではなく、記憶の奥底に封じ込めた光景が浮かんできそうだったからだ。

「思い出すなぁ」

 そう呟くと、隣を歩く少年が耳ざとく聞きつけた。

「何が?」

 リリーは少し笑って、手袋をしていない手で少年の頭を撫でた。

「なんでもないよ」

 捨てたはずの景色が自分の中にまだ残っているのが意外だった。たぶん、人は記憶を捨てることなんてできないのだろう。忘れたと思っていても、自分では捨てたと思っていても、何かのきっかけでそれは意識の明かりの元に顔を出す。その度にこんな気持ちになるのかと、リリーは少々うんざりした。

「おねーちゃんの右手、怪我してるの?」

 少年は子ども扱いされるのが気に入らないのか、頭に乗った手から逃げるようにして身をよじって聞いた。

「まあ……そうだね。怪我したんだ。とても醜い姿になってしまったから、こうして隠してるんだよ」

「へえ……でもこっちの手はとってもきれいだよ」

「その年で、もう女を口説くの?」

 からかうと、少年は顔を赤くした。

「ち、違うよ! えっと……僕のためにあいつらと戦ってくれるんだから、褒めてあげようって思っただけ!」

 リリーはくくっと笑い、再び少年の頭を撫でた。

「ありがとう。次に誰かを口説く時には、もっと上手くやんな」

「違うって!」

 村の出口から出て、少し歩いた。そして、道が左右に分かれているところで二人は立ち止まった。

(いる……確かに、近くまで来ているな)

 リリーはそう確信した。そして、少年を早くここから遠ざけるべきだと判断した。

「さ、その自慢の脚で、早くガーデンに行ってきてくれ」

 言われた少年は得意気に屈伸運動をし、鼻の頭をかいた。

「まかせてよ。おねぇちゃんこそ、ぼくが戻るまでちゃんと逃げきってね」

 少年はそう言い残し、リリーに背を向けて走り出した。どんどん小さくなる背中を見つめながら、リリーが呟く。

「さて……雨が降るとやっかいだ。さっさとやっちまおう」

 目を閉じて、視覚を遮断する。そのかわり、嗅覚に神経を集中し、独特のにおいを嗅ぎあてようと試みた。

(まだ遠い……森の方か?)

(っ!)

 風向きが変わり、リリーの元にうっすらと甘い匂いが届いた。それは腐臭を思わせる、生き物が発するにおいだ。

「移動してる」

 背中の長剣を抜いて、リリーは駆け出した。分かれ道の真ん中、道になっていない草むらへと足を踏み入れる。その先にある森を目指して走った。

「どっちだ……どっちにむかっている?」

 頼りになるのは、甘いにおいだけだった。必死にそれを求め続け、においの方へと身体を向けた。

 やがて森へたどり着き、中に入る前に空を見上げた。

「ちっ、降ってくるな……」


 森の中は薄暗く、背の高い草が生い茂っていた。立派な木が密集しているので、進みにくい。しかし、甘いにおいは強くなっていた。植物が発する冷たい空気のおかげで、異質なものが浮かび上がってるようだった。

「こっちか……村には向かっていないようだ」

 方向に見当をつけ、リリーは再び走り出した。この森は人が入らないらしく、道らしきものは無い。何度も邪魔な草を叩き切り、木が進路を塞いでいるときには俊敏にかわす。そうしているうちに、とある確信が彼女の胸の中に出来上がって来た。

「この方向は、あの少年が向かった方向か」

 リリーは口元を歪め、笑みのようなものをつくった。

「弱いものを狙うなんて、あいつらも人間と同じだな」

 しばらく走ると、遠くのほうから不吉な咆哮が聞こえた。

「くそっ! 間に合ってくれ!」

 森から抜けて道へ出ると、想像していた通りの光景が広がっていた。

「お、おねぇちゃん!」

 少年は今にも泣きそうな声でリリーに叫んだ。自慢の脚がすっかりすくんでしまったのか、別れたときの軽快さは失われている。

「怪我は無いか!」

 リリーは長剣を構えたまま叫んだ。辺りを見渡すが、変わった様子は無い。しかし、濃厚な甘いにおいが漂っている。

(確実にいる……どこだ?)

 少年の横にしゃがみこみ、彼に怪我が無いか確認する。

「だ、大丈夫……なんか怖い声が聞こえて、びっくりして転んじゃったんだ」

「そうか……ガーデンまではまだかかるのか?」

「もうすぐだよ。ね、あの声がビーターの声なの?」

「なんだ、見たこと無いのか?」

 少年は頷き、言い訳じみた口調になった。

「だって、いつもは討伐隊の人が退治してくれてるから……」

 その時だった。

「ッ!」

 リリーが長剣をかざした。すると、そこには太い植物の蔦のようなものが伸びていた。蔦の先端は少年の頭部に向いている。

 リリーの長剣は蔦の横っ腹を貫き、なんとか先端が少年の脳味噌を貫くことを防いでいる。

「な……なにあれ……」

 少年は口を開け、青ざめた顔で森の中を指差した。

 リリーはそちらに目を向けずに答える。

「あれが、ビーターだ」

 次の瞬間、太い蔦は素早く引き戻され、その先である森の中から咆哮が聞こえた。

 それは唸るようであり、叫ぶようであり、また、

 何かを恨むようでもあるな、とリリーは思った。

 リリーは少年と森の間に入る様にして、剣を構える。薄暗い森の中を睨んでいると、中から巨大なものが飛び出してきた。

「う……うわぁあぁああぁああ!」

 少年が腰を抜かしたのか、ぺたんと座り込んだ。リリーの脚にすがりつき、必死になって手に力を込める。

リリーは目の前に出てきたそれに、逸らすことなく視線を向ける。

 それは黒っぽい緑色の蔦で全身を包み、濃厚な甘い腐臭を放っている。四足歩行で、顔だと思われる部位はこちらを向いている。そして、本来であれば目があるべき位置には、真っ赤な実がふたつ実っていた。全身から茶褐色の汁を滴らせて、地面には無数の黒点ができていた。

 ヴゥウウ……。

 化け物はリリーと対峙し、低く唸った。微かに動くだけで全身の蔦が擦れ、ぎしぎしと軋むような音を立て、更に腐臭を強く放っていた。

(少年が背中にいては戦いにくいな……)

 リリーがそう考えていると、化け物の方が動いた。巨体を軽々と動かして前進したと思ったら、真っ赤な実の下がばっくりと開いた。

 それはまさしく、口だった。

「ええいっ!」

 リリーが左手で長剣を横に払う。それは化け物の横っ面を確かに捉えたが、浅く食い込み、表面に傷をつけただけだった。

「少年! ここは私がなんとかする! はやくガーデンへ行ってくれ!」

 リリーの目の前には、化け物の顔が迫っていた。二つの赤い実は感情を排した眼となって彼女の前で揺れているし、新たに露出した口の中には粘度の高い茶褐色の液体が湿った音を立てて流れていた。

 化け物の顔に剣を食いこませたまま、リリーと化け物の力比べが始まった。

(このまま私が横に逃げれば、背中の少年が殺される!)

 しかし少年は恐怖からか、立ち上がることもできずにいた。がたがたと全身を振るわせて化け物を見上げている。

「少年!はやくしてくれ!」

 しかしリリーの叫びにも、少年は反応できずにいる。

「おい!」

 その時、化け物が焦れたように後退した。

 急に退かれたので、リリーは体勢を崩して倒れ込んだ。そこに、化け物は横から蔦を振るった。

「くそっ!」

 リリーは咄嗟に少年をかばい、左手で蔦を受けた。しかしあっさりと吹き飛ばされてしまい、少年と一緒に地面を舐めた。

(やっぱり……左手だとこんなもんか)

 横で倒れている少年に目をやると、恐怖ですっかり萎縮してしまっている。リリーの胸にしがみつき、顔を埋めて身体を震わせていた。

「なんだ……怖いのか? それじゃあ女の子は口説き切れないぞ」

 あえて、リリーはからかうような口調で言った。

 化け物は既に身体の向きを変えて、二人の方を向いている。

「べ……別に怖くなんて……」

 歯の根が合わない様子でそう言う少年の頭を、リリーは荒っぽく撫でた。

「そりゃ頼もしい。じゃ、いつまでも私の胸に埋まってないで脚を使ってくれないかな。それに、これは口説き落とした後にするもんだ」

 はっとした様子で、少年は顔を上げた。自分の行為が恥ずかしかったのか、少し唇を尖らせている。

「うん、良い顔だ。戻ってきたら、たくさん撫でてやるからな」

 そう言ってリリーは少年を立ち上がらせ、全身をぱんぱんと払ってやった。少年は涙をぐいっと拭い、自らの頬に強く張り手をした。

「おねぇちゃん、待ってて!」

 走り去っていく少年を横目に、リリーは長剣を右手に持ち替えた。

「さて……観客も、お守の必要も無くなった」

 ぐぐ、と右手に力を込める。手袋の下で、何かが微かに隆起した。

「行こう、商売だ」

 リリーが駆け出すと、化け物も真っ直ぐに突っ込んできた。すぐに蔦が飛んできたが、リリーが右手の剣でそれを軽々払った。

 続いて降り注ぐ左右からの蔦も、横への一薙ぎで切断。

 短い白髪を揺らして、彼女は笑った。

「化け物には化け物、だよな」

 蔦を切断されて動きが止まった化け物に、リリーは真っ直ぐ走り出した。そして相手の懐に飛び込み、四足歩行の前足部分に刃を当てた。

「てやあっ!」

 柔らかな土に棒を立てたように、手応え無く剣は振るわれた。一瞬の間の後、化け物はバランスを崩してぐらついた。

 ヴォォオオ!!

 前のめりに倒れる化け物からすぐに距離をとり、自分が切った個所を眺めるリリー。そこは切れ味の良い刃物を使ったとき特有の、継ぎ目がほとんど見えない切り口となっていた。

 しかし、そこからずるずると化け物の体液が溢れ出した。そして切断部から上が滑り落ち、今度は化け物が土を舐める番になった。

「さて、あとは切り刻むだけっと」

 肩に剣をのせ、リリーは一息ついた。

「あの子がいなけりゃ、もっとすんなりいったんだけどな……。やっぱり、慣れないことはしない方がいいな」

 そう言って、彼女は化け物に近寄っていく。化け物の口は今だにばっくりと開かれていて、その上にある真っ赤な実も、景気よく揺れていた。

「私を食いたいの? ま、相手が悪かったね」

 肩にのせた長剣を掲げ、化け物の前で立ち止まるリリー。

「――大人しく眠ってくれ」

 その時だった。

 上空に集まっていた灰色の塊から、無数の雨粒が落ちてきた。

「……まずいっ」

 リリーは剣を振り下ろさず、即座に後方へ跳躍した。

 その瞬間、リリーがいた場所に巨大な蔦が突き刺さり、地面を大きくえぐった。

「くそ、降ってきやがった……」 

 苛立たしげに空を見上げ、それから視線を化け物に移した。

「あーあ……」

 前足の切断部には小さな水泡のようなものが無数に出現し、それは蔦となって新たな前足を形成した。

 そして、化け物は大きな咆哮を放ち、巨大に変化した。

 ヴォォオオオ!

 ヴォォオオオオオオオオッ!

 蔦は太く、腐臭は更に濃く、甘く。二つの赤い実は爛れ、腐り落ちるようにして地面に落ちた。

「……少年、早く来てくれ」

 リリーは右手に力を込め、そう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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