3
あちこちかちこちで、とてもねむい。
つかれた。 ねむ、い。
えんのしたのおくにもぐった。
ここはだれもこないから、ゆっくりねむれる。
おっきな手。だいだい。くれない。
おきたら、また……わらってる、と、いいな……
ねたら、ゆめを、みた。
おっきな手が、おれをぎゅってしてなでてくれているゆめだった。
だいだいも、くれないも、おれをみてみゃあみゃあとないていた。
にぁ。
はじめて、ないて。
めのまえにあった手を、ぺろ、と、なめた。
おっきな手、おっきな手。
うれしい。
ゆめでもいい。うれしい。
あなたがぎゅってしてくれて…なでてくれた。
ありがとう、おっきな手。
もういいよ。
ないてる、くれないと、だいだいを。なでて。ぎゅってして。…ね?
そこでゆめがとぎれた。
めがさめたら。
ぬくぬくしたお部屋の中にいた。
泥だらけだった汚い身体も綺麗になっていて、普段なら絶対近付かないようなふかふかの上に寝かされていた。
だいだいとくれないが傍でみゃあみゃあ泣いていて。
慌てておっきな手を呼ぼうとした。ふたりをなでてあげて欲しくて。
そうしたら。
「雪」
おっきな手が、俺の名を呼んで。ぎゅってしてくれて、なでなでしてくれた。
違うよ、俺じゃないよ、だいだいとくれないが泣いてるんだ。
あっちの二人をなでてあげて。
そう言ってるのに、おっきな手は。
俺をぎゅってしたまま動かなかった。
おっきな手……? どうして泣いてるの……?
頬にこぼれる雫を、ぺろぺろ舐めた。
舐めても舐めてもとまらない雫を、ぺろぺろ舐めた。
泣かないで?ねぇ、泣かないで?
いつものように、笑ってよ…おっきな手。
その日から、俺はぬくぬくのお部屋で暮らす事になった。
こんな上等なお部屋にいるのが悪くて、何度も逃げ出そうとしたけど。
その度にだいだいとくれないに怒られた。
おっきな手が、その度に苦笑しつつ俺を抱き締めて部屋に連れ戻す。
どうやらまだ外に出てはいけないのだ、と理解するまでしばらく時間がかかった。
そして、今。
「雪」
まだちょっと、怖い時もある。
呼ばれないと傍には近づけないけれど。
「にぁ」
呼ばれた声に、返事をする事が出来るようになった。
おっきな手、だいだい、くれない。
そして、最近ようやく慣れてきた他の手達。
みんなが笑ってる傍に、俺も居させて貰える。
それが、とても、幸せ。