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ある日。
おっきな手が、よろよろしている感じがした。
どうしたんだろう?疲れているように見える。
だいだいとくれないも案じているが、大丈夫だと言って相手にしていない。
おっきな手、おっきな手。
無理しているのか?辛いのか?
近付いて二人のように、心配していると伝えたいのに。
それすら出来ない自分が情けなかった。
「大丈夫だ」
おっきな手が二人をなだめる。
全然大丈夫そうに見えない。
そして。
ぱたん、と、おっきな手が倒れた。
くれないは慌てて他の手を呼びに行った。だいだいもそれについていった。
でも俺は動けなかった。
おっきな手、おっきな手。
怖い、怖い、怖い……でも。
ぺろ、ぺろ、ぺろ。
必死に恐怖と戦って、おっきな手の顔を舐める。
ぺち、ぺち、ぺち。
ゆさ、ゆさ、ゆさ。
尻尾で叩いて、前足で揺さぶる。
起きて、起きて、起きてよ、おっきな手。
俺、たとえ拒絶されてもいい。
貴方が、だいだいやくれないと笑っているのを見ているだけで十分過ぎる程幸せだから。
だから。起きてっ……!!
ほかの手が集まってきて、おっきな手が運ばれていく。
だいだいとくれないが、一緒に行こうと呼んでくれたけれど。
俺はここにいる、と言った。
皆がいなくなって。
俺は、こっそりそこを出た。
おっきな手、おっきな手。
きっとあれがあれば、おっきな手も起きてくれる。
また、だいだいとくれないをなでている姿を見られる。
雪の中、必死に駆けた。
寒い、雪が、痛い、冷たい
でも、でも、おっきな手が。
おっきな手が起きるのに、あれがいる。
ちょっと遠くまで来た。お腹が空いた。
でも、まだ見つけてない。きっとずっと土の奥にある。
雪を掘った。ひたすら掘った。
前足どころか尻尾の感覚もなくなって。
あちこち全部かちこちになったけど、みつけた。
みつけたものをくわえて、必死に駆けた。
おっきな手がいるお部屋の前に、ようやくついた。
あいていた隙間から覗くと、だいだいとくれないが、おっきな手のお布団にもぐりこんで寝ていた。
ふたりとも泣き疲れたみたいだった。
だいじょうぶ、だいじょうぶ。
おっきな手、きっと起きてくれるから。
とってきたものを部屋の前に置く。
きっとほかの手が気付いてくれる。
こんな泥まみれの体で、お部屋の中になんて入れない。
『きったねーの、もう死んでんじゃねぇ?』
汚い俺は、あっちに行っちゃいけない。
『さわるなよ、汚れるぜ?』
おっきな手が汚れるから、だから、行っちゃいけない。
「にぁ……」
おっきな手。
また、笑ってくれるといい。