第五話 異世界に送られた理由と揺るぎない事実
遅れてすいません。
僕はなかなか寝付けなかった。
初めて外で寝るからウキウキしているからなのか、それとも、さっき考えていたことが気になっているのか・・・。
(とにかく寝よう)
僕は考えるのをやめて、明日に備えて寝ることにした。
*****
僕は体に妙な違和感を感じて眼を覚ました。
何だか、体がふわふわ浮いている様な・・・
眼をあけてみると、そこには“何もなかった。”
「ここは・・・何処だろう」
そう、何もない・・・真っ暗な空間だ。
(なんでこんな所に居るのだろう・・・)
僕は周りに視線を向けた。しかし、やはり何もない。
「ガルト~居たら返事して~」
僕は大きな声でガルトを呼んでみたが、ガルトから返事は無い。
「ここ森の中・・・だよね」
耳を澄ましてみたが木の葉がこすれる音も動物たちの鳴き声すら聞こえない。
僕は少し考えてある結論に達した。
「そうか!これは“夢”だ」
そう叫ぶと周りに反響した。
「そう、夢に決まってる・・・じゃなきゃ僕がここにいる説明が着かない。」
僕は自分に言い聞かせる様に言うと、歩き始めた。
だが、いけどもいけども何もない。
自分が進んでるのかも分からなくなってきた・・・
その時・・・目の前に白い物が現れた。
「何だろう・・・これ?」
白い物は丸い形をしていて、まるでこの真っ暗な空間に白い絵の具で綺麗な“楕円”を描いたような形をしている。
僕はその白い物を見ていると、変形しているのに気がついた。
白い物の縁の所がグニャグニャとうごめいて、伸びたり縮んだりを繰り返している。
やがて上の方が二カ所、触手のように伸び、触手が人の腕のようになった。
「一体・・・どうなって・・・」
僕がそう言った瞬間、白い物から生えた右腕が僕に向かって伸びてきた。
「うわっ!!!」
僕は、慌ててその場に伏せた。
ヒュンッ!
白い物の手は僕が立っていた位置の空気を切る。
すると、今度は反対の腕が僕に向かって飛んできた。
僕は慌てて体を起こし、足に力を入れ後ろに思いっ切り飛んだ。
ズドォォォオン!!!
白い物の手は、すさまじい音を立てて地面に突き刺さった。
周りの地面に何本もヒビが入っている。
僕はその光景を見て血の気が引いてしまった。
「あ、あんなの当たったらひとたまりもない・・・」
僕が弱々しくそう言うと、飛んできた白い物の腕が、まるでゴムのような勢いで本体に戻ると、白い物の腕がウネウネと動き、腕の形を崩したり戻したりを繰り返している。
どうやら、僕の様子をうかがっている様だ。
最も、白い物には目らしき物が見あたらないので、ただうごめいているだけかもしれないが。
(い、一体どうしたら・・・)
僕はそんなことを考えながら、白い物の様子をうかがった。
『・・・・・・』
すると、何処からか声が聞こえてきた。
だが、なんて言っているかは分からない。
『・・く・・て!』
また聞こえてきた。今度はさっきより良く聞こえる。どうやら、声の主は女の人のようだ。
その声はドンドン聞き取りやすくなり、やっと最後まで聞こえた。
『はやく逃げて!』
僕がその声を聞いた瞬間、白い物からさらに4本の腕が生え、全部で6本になった腕が一斉に飛んできた。
僕は、白い物より一瞬早く反応し、白い物に背を向け、走り出した。
1本目はさっきまで僕が立っていた地面に突き刺さり、2,3本目は僕の左右を通り過ぎ、4本目は僕の右肩の真横をかすりそのまま地面に刺さった。
(拙い、このままじゃ・・・)
そう思った瞬間、5本目の腕が僕の右太ももを貫いた。
「いぎゃあぁ!」
僕はあまりの痛さに悲鳴を上げた。
そのまま地面に膝をつき四つんばいになった、僕は痛みをこらえ後ろを見た。6本目の腕はすぐ近くまで来ていた。
僕は何とかして逃げようとした。しかし、白い物の腕が僕の右太ももを貫き地面に突き刺さっていて、動こうにも動けなかった。
(もう・・・駄目だ~!!)
僕はそう思い、両目をギュッと瞑った。
グシャッ!
イヤな音がした・・・恐らく体を貫かれたのだろう。
(ああ、僕・・・死んじゃうのか。)
僕はそう思ったが、不思議な事に体への痛みは無い。
足から血を流しすぎて、痛みを感じないのか・・・?
僕はとりあえず自分の体の目を向けてみた。
血が・・・・・出てない。
でも確かに「グシャッ」という音は聞いた。
僕は体に向けていた視線を後ろに向けた。
すると、白い物の腕が僕に当たる寸前で何かに阻まれて、空中で平たく伸びている。
「これは・・・いったいどうなって・・・」「大丈夫!カエト君」
僕がそう呟いた瞬間、後ろから声が聞こえた。
僕は声がした方に眼を向けた。
すると、鈍く光る人影がこちらに向かって走ってきた。
その影は、ものすごい速さで近づいてきた。
すると、僕の足に刺さっている腕が勢いよく抜けた。
その瞬間、僕の足から血が吹き出し、激痛が走った。
僕は意識が飛びそうになったが何とか持ちこたえて、腕の行方を追った。
すると、僕の足から抜けた腕が、空中で伸びている腕にくっつき、ウネウネと動きながらさっきの2倍くらいの大きさの腕になった。
腕が僕に向かって飛んでこようとした瞬間、さっきの人影が僕と白い物の間に立ちふさがるり、叫んだ。
《永久炎!》
その瞬間、目の前が真っ赤な光に照らされた。
すると、白い物の腕は炎を上げながら導火線のような役割をしてドンドン遠くに行き、やがて丸い形の炎を上げてゴウゴウと燃えた。
白い物の腕がドンドン燃えて、地面にボトボト落ち、霧のように消えていく。
そして、白い物の腕が無くなり、丸い本体だけになった。
白い物は炎に包まれて居るのに動きもせず、苦しがったりも叫んだりもしない。
まるで、自分が消え去るのを待っているようだった。
そして、白い物は徐々に燃えてゆき、跡形もなく消えてしまった。
すると、真っ暗だった空間が白い物が居た辺りからドンドン明るくなっていき、やがて真っ白な床に青く
澄んだ空が姿を現した。
「なんだ・・・これ」
僕は唖然としながら辺りに見渡した。
この景色をたとえるなら、雲の上にいるようだ。
「カエト君」
僕は突然名前を呼ばれて飛び上がった。
しかし、飛び上がった瞬間足に激痛がはしり、右太ももの傷口からまた血が出始めた。
「っぁ!」
僕はあまりの激痛に声にならない悲鳴を上げた。
すると、さっき助けてくれた人が近づいてきた。
「まだ動いちゃだめ!今すぐ治してあげるから!」
そう言うと、その人は僕の右足のを見て、傷口の上に両手をかざした。
「ちょっと擽ったいかもしれないけど、我慢してね。」
そう言うと何かを呟き初め、そして叫んだ。
《治癒を促す風》
すると、右足の傷口に覆い被さる様に風が吹き初め、みるみるケガが治っていった。
僕は、ただ呆然と足が治って行くのを見ていた。
すると、突然治ってきている右足が熱くなり激痛が走った。
「あちぃたあぁー!」
あまりに突然の痛みだったから、変な叫び声を上げてしまった。
「我慢して、もう少し・・・だから」
その人が、やっと絞り出した感じの声で言ってきた。
どうやら相当辛いらしい。
「あの~、少し休んだ方が・・・」
僕はそう言ってみたが、集中しているのか返事が返ってくることはなかった。
===10分後===
「ふぅ、やっと治ったよ、立てる?カエトくん」
その人は僕にそういって手を差し出してきた。
僕はその手に捕まって立ち上がった。
少しフラついてしまったが、何とか立つことができた。
「大丈夫です。ありがとうございます。」
僕はその人にお礼を言った。
「そう、よかった」
その人はそういうと僕に言った。
「久しぶり、カエト君!って言ってもカエト君にとっては1日ぶりか・・・あはは。」
・・・さっきから思っていた事だが、一体この人は誰だろう?
この人はなぜか教えてもいない僕の名前を知っているし、
それに、前に会ったことがあるような感じの話し方だし・・・。
「あの~、あなた誰ですか?」
失礼かと思ったがとりあえず訪ねてみた。
すると、その人は驚いた声で言った。
「え?!もしかして、まだ私が誰かわかってない・・・昨日ぶりなのに?」
昨日ぶりと言われても思い出せないものは思い出せない。
だけど、よく考えると確かにどこかで聴いたような声だ・・・
しばらく考えていると、なんだか少し下の方からブツブツと声が聞こえてきた。
「・・・私て・・陰薄い?・・・そんなに印象に残らない女なの?・・人の記憶にすら残れないの・・・だからあのとき・・・ブツブツ」
どうやら相当落ち込んでしまったようだ。
負のオーラが見える・・・。
しかもハンパなくどす黒くて、自分まで暗くなってしまうくらい強烈な負のオーラが。
『何か、前にもこんな事があったような・・・。』
僕はそんなことを考えながら、その人が落ち着くまで慰め続けた。
===5分後===
「いや~ごめんごめん。ちょっと昔の事思い出しちゃって・・・つい」
さっきまで黒いオーラ出してた人とは思えない・・・。
まあ、何はともあれ落ち着いてくれたようで一安心だ。
「カエト君、本当に覚えてない?もう一回よ~く思い出してみて」
そう言うとその人は帽子のつばを上げ顔を見せてきた。
そこには何処かで見覚えのある女の人だった。
・・・だめだ、あと少しってところで思い出せない。
とりあえず、この人は女の人で前に会ったことがある事しかわからない。
何か“決定的”な事でもあれば思い出せるけど・・・
僕がそう考えていると、その人が言った。
「思い出せない?、あのとき“キス”までしたのに・・・。」
「ブフォッ、き、ききき、キス?!」
僕は思わず吹き出してしまった。
き、キス?!キスなんてした覚えは・・・・・・ある、一回だけエレーナさんと・・・。
と言うことは、
「もしかして・・・エレーナ・・さん?」
僕がそう言うと、エレーナさんは顔をパァと明るくして笑った。
「やっと思い出してくれた!もう、私のこと忘れてたら落ち込んでたよ。」
僕は、エレーナさんの言葉を聞いて苦笑いした。
『すでに落ち込んでいらしてたよ・・・エレーナさん。』
僕がそんなことを考えているとはつゆ知らず、エレーナさんはニコニコ笑っている。
人の気も知らないで、僕が今日どれだけ大変な目に・・・
・・・そう言えば、何でこんな事になってるんだっけ?
確か僕は、ガルトと出会ってテントの中で寝ているはずじゃ・・・
僕は今日あった出来事を頭の中で思い出したが、
「・・・・・・・・・」
「どうしたの?難しい顔して。」
考え事をしているとエレーナさんがそんなことを言ってきた。
僕はエレーナさんの方を見た。
その時、何かの歯車がかみ合ったように考えがつながった。
「そうだ・・・思い出した。」
僕は手をポンッとならして言った。
「何を?」
エレーナさんは気付いていない、なら教えてあげよう。
「僕がこの世界に来ちゃった事だよ。」
そう、僕がこの世界に来た原因はほかの誰でもない、エレーナさんなのだ。
「エレーナさんのせいでしょ?僕がこの世界に来ちゃったのも、このよく分からない白い空間に来たのも」
これは僕の予想だけど、たぶんこの白い空間に来たのもエレーナさんの仕業で、「帰りたい」と言ったら元居た世界に返してくれるはずだ。
そんなことを考えていると、エレーナさんは説明しづらそうに言った。
「あ~、その事・・・、それは、その、あれはね、ほら・・・・・・まあいいじゃないその話はもう。」
それを聴いた僕はすぐに悟った。
明らかにめんどくさがっている。
・・・よし、少し困らせてみよう。
僕は何で突然そんな事を考えたのか自分でもよく分からないが、とりあえず不機嫌そうに言った。
「何それ(ギロッ)」
ついでに自分ができる1番怖い顔で睨んでみた。
すると、エレーナさんは僕に言った。
「い、いやその、別にいえない事じゃないんだよ。・・・でも、たぶんこの世界に送った理由話すと・・・カエト君怒ると思うんだよね。」
ほう、僕が怒るような理由でこんな世界に送ってくれちゃったのか。
何だかホントにイライラしてきた。
まあ、聞いてみないことには始まらないから、とりあえず理由とやらを聞こう。
「一体どんな理由?」
僕がそういうと、エレーナさんは困った様な感じで言った。
「いや、でも~、やっぱりやめといた方が・・・絶対怒るし。」
「怒ったりしないから、ほら、言ってみてよ」
僕がそういうと、エレーナさんは、恐る恐る僕に聞いてきた。
「ほ、本当に・・・怒ったりしない?」
「しないしない、だからほら、言ってみて」
すると、エレーナさんは頷いて、深呼吸をした。
今度は自分の顔を軽く叩いて、「よしっ!」と意気込んでいる。
何をそんなに張り切っているのだろう?。
まるで、試合前に気合いを入れるレスラーの様だ。
そして、僕の方に向き直ると、言い聞かせるように言った。
「あのね、私がカエト君をこの世界に送った理由はね、“私の話を信じてもらいたかった”って言うのもあるんだけど、本当はね・・・」
エレーナさんはそこまで言うと、言葉を詰まらせた。
そして、少し顔をうつむかせ、目を泳がせている。
相当言いづらいのだろう。
僕は、エレーナさんが何か言うまで黙って見守った。
すると、覚悟を決めたのかエレーナさんは顔を上げ、僕に言った。
「ホントは、“何となくおもしろそうだった”からこの世界に送ったの!!」
エレーナさんは、その言葉を目をつぶりながら大声で言った。
そうか、何となくか・・・この人らしいといえばこの人らしい。
「何だよ~、そんな理由で僕をこの世界に送ったの~?」
正直言ってあきれてしまった。
本来は、怒る場面なんだろうが、理由がくだらなすぎて怒る気にもなれない。
「あれ?・・・怒らないの?」
エレーナさんは恐る恐るといった感じで聞いてきた。
「怒るもなにも、一度しちゃったものは仕方ないでしょ?」
僕がそう言うと、エレーナさんはホッと一つため息をはいた。
「よかった。カエト君が心が広い人で。私はてっきりカエト君から跳び蹴りされるかと思ったよ。」
エレーナさんはそう言うとあははっと笑って頭をかいた。
・・・?
どういう事だろう。
さほど怒る事でもないような気もするけど。
・・・まあいいや。
どうせすぐ帰るんだから。
「じゃあエレーナさん。僕はもうエレーナさんの言ってた事はホントだったって分かったから、僕を元の世界に帰してよ。」
僕がそう言った瞬間、さっきまで頭の後ろをかいて笑っていたエレーナさんがそのままの状態で固まった。
「・・・?、どうしたの?、早く元の世界に返してよ。」
僕がそう言うと、エレーナさんは固まった状態から我に返り、強張った笑顔で言った。
「な、ななな何を言ってるのかな?カエト君?」
「何って、元の世界に帰りたいんだよ。だからほら、早く、儀式でも魔法でも何でもやるからさ」
すると、エレーナさんは汗をダラダラと流しはじめ、視線をあちこちに泳がせている。
・・・今、とんでもなく嫌な予感がしたけど・・・信じたくない。
「え?、エレーナさん?もしかして・・・何かまずい事でもあるの?」
『信じたくない・・・でも、雰囲気てきに・・・コレは。』
するとエレーナさんは、言いづらそうに話し始めた。
「あの~・・・ほんとに言いづらいんだけど・・・実は・・・カエト君を元の世界に返す事は・・・できない・・・事なんだよね~・・・これが」
「当たっちゃった~。」
僕はつい口走ってしまった。
「しかも・・・その―――」
まだ何かあるのか?これ以上の悪いことがあるって言うのか?
「その・・・カエト君をこっちの世界に連れてくる際に・・・向こうの世界に居るカエト君を・・・えっと・・・あの・・・」
そこまで言うとエレーナさんは黙ってしまった。
『一体どうしたの!?、僕をどうしたの!?』
「・・・・・・!、そう!、精神旅行!、カエト君の肉体から幽体と霊体を一時的に離脱させて、こっちの世界につれて来たの!、いわゆる・・・幽体離脱!、いや・・・ぽるたーがいすと?、怪奇現象?、それとも―――」
ほとんどウソだ。
話しをややこしくして事実を有耶無耶にしようとしている。
間違いない、その証拠に、
「――――え~と・・・その~(キョロキョロ)」
ウソをでっち上げるのに必死で目が泳ぎまくっている。
人間、ウソというのは簡単に分かってしまうものだ。
そんなことを考えている間にもエレーナさんは話しを続けている。
そろそろ聞いてるこっちも辛いからホントの事を聞こう。
「そう!、魔法の調子がわ「いいから正直に(キッ)」はい、すいません。」
僕がそう言うとエレーナさんは観念したのか、なんかその場に正座した。
『・・・なんか僕が悪者みたいで嫌だな。』
そんなこと考えながらエレーナさんの話に耳を傾けた。
「え~、正直に申しますと・・・カエトさんをあっちの世界からこっちの世界に送る儀式の時・・・魂だけを運ぶのに失敗して・・・その・・・肉体が消滅してしまって、今、カエトさんは魂だけに・・・」
「・・・それって、つまりどういう事?」
僕がそう言うとエレーナさんはわかりやすく一言でまとめた。
「カエトさんは“死んでます”」
『・・・・・・はい?』
あれ?聞き間違いかな、今“死んでる”って言ったような・・・
「い、今、死んでるって言った?。」
「(コクリッ)」
「ほ、ほんとに?」
「(コクコクッ)」
僕は絶望した。
そんな・・・まさか・・・あり得ない、あり得ない!
そんな馬鹿な!僕がもう死んでいるなんて・・・ウソだ!
「・・・うそだ。」
すると、エレーナさんは立ち上がって言った。
「ウソじゃないよ・・・全部ホントだよ」
僕はそれを聞いて、殴りとばそうかと思ったが、拳を顔の横まで振り上げて踏みとどまった。
エレーナさんにあたっても僕が生き返る訳でもない。
僕は拳を下ろし、そのまま座り込み地面に拳を叩きつけた。
その後、何度も地面を殴った。
何度も、何度も、殴った。
殴るたびに地面は少しずつへこんでいった。
手から血が出てもやめなかった。
右の腕を振りあげた瞬間、振り上げた腕をエレーナさんに捕まれた。
「もうやめてカエト君!それ以上やったらカエト君も地面も大変なことに」
僕は地面を見つめたまま言った。
「・・・離してよ」
「イヤよ」
「離せって言ってるだろ!」
僕は無理矢理エレーナさんの手を振り払った。
「・・・ごめんなさい」
突然、エレーナさんはそうつぶやいた。
僕はエレーナさんの方を向いた。
すると、そこには涙を流しながらうつむいているエレーナさんがいた。
僕はそんなエレーナさんを見て、驚愕した。
なんで・・・なんで泣いているんだ。
すると、エレーナさんは泣きながら言った。
「ホントに・・ヒッ・ごめんな・・さい」
僕はその言葉を聞いて我に帰った。
僕はなんてヒドイ事をしてしまったんだろう。
エレーナさんだってそれなりの理由があったのに、僕の勝手な言い分で自分に当たり。
しかも、止めようとしたエレーナさんを傷つけてしまった。
僕は自分の行動を振り返り、どんなに愚かだったかを知った。
「エレーナさん、もういいんだよ。僕の方がいけなかったんだ・・・だからもう泣かないで」
しかし、エレーナさんは泣きやんでくれなかった。
僕はとりあえず、エレーナさんが落ち着くまでずっと側でこえをかけ続けた。
それが、いま僕ができる唯一の事だった。
どうも、蛇炉です。
今回遅れてしまってホントすいません。
塾に行くことになって、とにかく時間がありません。
しかも、内容もヒドイかもしれません。
もう読んでくれている人はいないかもしれませんが、これからも読んでもらえるとうれしいです。
次話更新は、また2~3ヶ月くらい空いてしまうかもしれませんが、気長に待っていてください。