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僕が聞いた勇者の話  作者: 蛇炉
12/45

第十二話 エレーナさん・・・相手を選んで欲しい

あけましておめでとうございます。


今回は今までで一番長くなってます。


暇なときに読んでいただく事をおすすめします。

パッカ、パッカ、パッカ


安定した蹄の音がする。



「いいぞカエト、なかなかさまになってきた。」



僕はちょっと嬉しくなった。


僕は今、スードの背中に乗って軽く歩かせる訓練をしている。

歩かせると言っても、僕の足にはエレーナさんから伸びている影の様な物が繋がっているので、グルグル同じ所を回ってるだけだが。

ちなみにガルトは、スードの横にぴったりとくっついて歩いている。

いざというとき何とか出来る距離だ。



「よーし、カエト。そろそろ止まってもいいぞ。」



ガルトの指示を聞いて、僕は手綱を軽く引っ張ってスードを止めた。



「よし!、止めるのももう大丈夫だな。合格!!」


「やった!」



ガルトのスパルタ訓練を耐え抜いて、ようやく僕は人並みに馬に乗れるようになった。

ホントに長かった・・・。

僕はスードの首に寄り掛かった。



「おいおい、これからが大変なんだぞ?、そんなんで大丈夫か?。」


「もう、ヘトヘトだよ。」



僕は、疲れ切った声で返事を返すとスードから降りて、その場に座り込んだ。

するとガルトは、スードの手綱を持ちながら僕の隣まで来た。



「よく頑張ったなカエト。スードもお疲れって言ってるぞ」



ガルトがそう言うと、スードは僕の顔を舐めて返事した。



「ははっ、ありがとうスード。それにガルトもありがとう。」



僕はスードの顔を撫でながらお礼を言った。

もちろん、乗り方を教えてくれたガルトにもお礼を言った。

するとガルトは、僕の頭をワシャワシャと撫でて、言った。



「はっはっは!、ありがとよ。だが、まだスタートラインに立っただけだぞ。」



確かにガルトの言う通りだった。

本来の目的は、セガンに行くことで馬に乗れるようになる事ではない。

もちろん、無駄な事をしたわけではないが、一刻も早く街に着く必要がある。



「じゃあガルト。すぐ出発するの?」



するとガルトは、首を横に振った。



「いや、カエトの今の精神状態じゃダメだ。」



そう言ってガルトは鞄を下ろして、中から水筒を出して僕に手渡した。



「しっかり休んでから出発だ。」



そう言ってニコッと笑ったガルトは、そのままスードの手綱を引いて草原に入っていった。

僕も水筒の中身を飲みながら、ゆっくり休憩をした。

そして、そのまま目を閉じて眠りに落ちた。





*****





・・・なんだろう。

この不思議な感覚・・・。

前にも一度、こんな事があったような・・・。



『お・・・エ・・・!』



あれ?、声が聞こえる。

随分遠くから・・・まさか。



「エレーナさん?、エレーナさんでしょ!、この声!!」



すると、徐々に声が聞き取りやすくなっていき、今度ははっきり聞こえた。



「何で起こしてくれなかったの!。私もスーちゃんに乗りたかったのに!!」



なぜかすごい剣幕で怒られた。

え?、何?、何で僕急にすごい怒られてるの?。

僕は、エレーナさんに怒られてる理由がいまいち理解できないでいた。

そもそも、何でエレーナさんはスードの事知ってるの?、寝てたんでしょ?。



「あの~・・・エレーナさん?。」


「何!」



うわっ、すごい怒っていらっしゃる。

・・・とりあえず、聞こう。



「何でエレーナさんはスードの事知ってるの?、エレーナさん、寝てたんでしょ?」



僕は恐る恐る聞いてみるとエレーナさんは、プイッと顔を背けてしまって何も答えてくれない。

拗ねちゃったよ・・・。

何か・・・エレーナさんの機嫌を直す方法を!。

じゃないと話が進まないよ!!。



「エレーナさん、今日も一段とかわいいね。」



とりあえず褒めまくってご機嫌を取ってみよう。

・・・うまくいく気がしないけど。



「エレーナさんはやっぱりかわいいなー。でも、拗ねてちゃせっかくのかわいさが台無しだよー。

いつもみたいに明るくて、優しくて、かわいい笑顔のエレーナさんに戻ってよー。」



結構棒読みになってしまったが、僕がかわいいとか言うたびにエレーナさんの表情がピクッと動いていた。

そして、そのままミルミル顔を赤くさせた。



「い、いやだっ、カエト君ったら!!。ほ、ほ、ほめられても・・・全然嬉しくなんか無いんだから。」



エレーナさんは顔を赤くして、嬉しそうに困っている。

・・・やっぱりわかりやすい人だな~。

僕はエレーナさんを見ながらそう思った。

聞くなら今しかない。



「ねえ、エレーナさん?。二・三質問しても良いかな。」



するとエレーナさんはニコニコしながら言った。



「いいわよ。何でも聞いて♪。」



よかった。

エレーナさんの機嫌はすっかり直ってるみたいだ。

これで何の気兼ねも無く色々聞ける。

さて、何から聞こうか・・・。

よし、あれから聞こう。



「それじゃあ、最初の質問。 エレーナさんは何でスードの事を知ってたの?」



すると、エレーナさんは上機嫌なのか、すぐ答えてくれた。



「私はね、神の力を使って“半神状態デミゴットモード”っていう状態でいたの。

・・・あっ、“半神状態デミゴットモード”って言うのはね・・」



エレーナさんはそう言って帽子のつばをつまんで黙り込んでしまった。

すると、エレーナさんの足下からすごい突風が巻き起こり、そのままエレーナさんの体が光り出した。

そして、その光が徐々に強くなり、パッと光が消えて風が止んだ。

何だったんだ、今のは。



「何をしたの?。」



僕はエレーナさんに声を掛けてみた。

しかし、エレーナさんから返事は無い。

もう一度声を掛けてみたが、エレーナさんはうんともすんとも言わない。

それどころか、さっきから身動き一つしない。

試しに軽く揺すったりしてみたが、全く反応がない。



「あれ?・・・、何で動かなくなっちゃったんだ?。」



僕はそう言って考え込見ながら、左手を腰に当て、右手を思いっきり上に突き挙げた。

・・・・・・えっ!?

僕はなぜか知らぬ間に不思議なポ-ズを取っていた。


(ええっ!?、何で僕こんな格好してるの!?。)


僕は心の中でそう叫び声を上げた。

すると、今度は腰に当ててた左手が右手と同じように挙げられ、そのまま体ごとユラユラと揺れだした。


こ!これは!!。


僕があることに気付いたのと同時に僕は例の言葉を口走っていた。



「わ、わ~か~め~」



そう、あのときエレーナさんがやらされた意味の分からないワカメのマネ!!。


誰も見られてないけど。

すっごい恥ずかしい!!!。


僕は自分の顔がドンドン赤くなるのが分かった。

すると、どこからか笑い声が聞こえてきた。

この声、しかもこのワカメのマネ、間違いない!!



「ちょっとエレーナさん!!、悪ふざけが過ぎるよ!!」



僕は今だに固まっているエレーナさんに向かってそう叫んだ。

しかし、固まっているエレーナさんは返事をしない。



【カエト君、こっちこっち】


「っ!!。後ろか!!!」



僕は振り返るのと同時に、ユラユラ揺れてる右手を斜め下に振り下ろした。

しかし、僕の右手には何も当たらず、エレーナさんの姿も無かった。



【フフフ、残念ハズレよ。】



また後ろから声が!!

僕は素早く振り返った。

・・・いない!。



【無理無理、いくら探しても見つからない。】


「じゃあ何処にいるのさ!!」



僕がそう言うと、突然僕の背中辺りが光り始めた。

そして、そこからエレーナさんが抜け出てきた。



【ふう、やっと出られ「ぅおりゃああああぁぁぁぁ!!!!」】



僕は考えるより早く、体を半回転させて、僕の背中から出てきたエレーナさんを思いっきり殴った。

僕の拳は、出てきたエレーナさんの顔と思われる部分にクリーンヒットして、そのまま数メートル吹っ飛んだ。

僕は地面に倒れているエレーナさんに「どうだ!!」と言わんばかりの顔を向けた。

しかし、エレーナさんの体は突然透けていき、そのまま跡形も無く消えた。



【残念、それはフェイクよ。】



僕が振り返ると、そこにはドヤ顔したエレーナさんが立っていた。


ああ、クソッ!!。

してやられた!!!!


僕が地団駄を踏んで悔しがると、エレーナさんは言った。



【まだまだ甘いわね~。カエト君がすぐ私を殴り飛ばそうとするなんてすぐ分かったわ、っよ!!】



僕は隙だらけのエレーナさんにパンチをお見舞いしようとしたが、あっさりよけられてしまった。



「チッ、」



僕はあからさまに舌打ちしてみせると、エレーナさんはニヤッと笑って言った。



【だから言ったでしょ、まだまだ甘いって。私今“デミゴットモード”なのよ?】



僕はそれを聞いてやっと理解した。

なるほど、これが“デミゴットモード”なのか・・・。

僕は改めて、エレーナさんを見た。

服装は全く替わっていないが、額に三角形の白い布みたいなのが着いてて、三角形の真ん中に“神”って書いてある。

しかも半透明・・・。



「ねえ、エレーナさん。・・・もしかして死んじゃったの?」



僕がそう言うと、エレーナさんは綺麗にずっこけた。

そして、お尻の辺りをさすりながら立ち上がっていった。



【死んでなんか無いわよ!一時的に体から出てるだけよ!!。・・・ブツブツ・・・】



そう言ってエレーナさんはブツブツと文句を言い始めた。

僕は固まってるエレーナさんと今目の前にいるエレーナさんを交互に見た。

なるほど、つまり僕が前に体験したやつにエレーナさんが今なってるのか。

・・・

・・・・・・ん?

ということは・・・。

ハッ、そうか!!

僕はブツブツ文句を言ってるエレーナさんをよそに、動かない方のエレーナさんめがけて全速力で駆け出した。

そして、その勢いのままエレーナさんの腹に拳をめり込ませた。



【グハァっ!?!?!!!!】



その瞬間、ブツブツ文句を言っていたエレーナさんがすごい低音をはき出した。

そして、お腹の辺りを押さえてその場に蹲った。

僕はさらに目の前のエレーナさんの脇をコチョコチョとくすぐってみた。



【ちょっ!、あははははは・・・くすぐったい・・やあっ!やめてって!!あははははははは!!】



やっぱり。

僕の思ったとおりだ。

僕はくすぐるのをやめてみた。

するとエレーナさんがヒイヒイ言いながら僕に言った。



【なっ、なんなのよいきなり・・・】



僕はエレーナさん(動ける方)の方に歩み寄って、今度はそのエレーナさんに向かって拳を突き出してみた。

すると、僕の拳はエレーナさんの体をすり抜けて、エレーナさんは何の反応も見せなかった。



「やっぱり、実態が無いんだね。」



するとエレーナさんは荒い息を整えてから言った。



【もうばれちゃった。まあ、仕方ないわね。】



そう言って、エレーナさんは未だに動かない自分に向かって走り出し、そのまま海に飛び込む様に自分の体に入っていった。

しばらくして、エレーナさんの手が少し動き、顔を上げてニッコリと笑った。



「これが“デミゴットモード”。言い替えればそうね・・・幽体離脱?」



幽体離脱が何なのかよく知らないけど、つまりそう言うことだ。

僕が前に臨死体験の様な状態になった時と同じ原理だ。

僕が一人で納得しているとエレーナさんが言った。



「あっ、でも、ただの幽体離脱じゃないのよ。生身の体じゃないから、反射神経・運動能力・それに洞察力とかの色々な基礎能力が上がって、さらに空が飛べちゃったりするすてきな能力よ。」



なるほど、それで避けられたのか。



「でもさ、エレーナさん。それを使ってるときの弱点が大きいよ。」



僕がそう言うと、エレーナさんは苦笑いしながら言った。



「そうなのよ、この能力って、体から精神を引っ張り出すから、どうしても体の方が抜け殻状態になっちゃうのよね~。しかも、体が受けたダメージは私に直通だし・・・。」



僕はさっきの事を思い出した。

確かに、抜け殻である体を攻められたら、微動だに出来ないエレーナさんの体はボロボロになってしまう。

利点と欠点の差が激しいな。

僕がそう言うと、エレーナさんは僕に向かっていった。



「さあ、出血大サービスで一つ目には答えてあげたわよ。他に何かある??」



僕は一瞬何の事か理解できなかったが、本来の目的を思い出してハッとした。

そうだった。 

僕は、エレーナさんに色々質問してたんだっけ・・・。

すっかり忘れてた。



「他に無いんだったら・・・。」



そう言って、エレーナさんは何か話始めようとしていたので、急いで次の質問をした。



「ま、待ってよ。まだあるって、次の質問ね。何で僕をまたここに呼び出したの?」



そう、何で僕はまた此処に来ているのかと言うこと。

コレが一番引っかかる事だ。

エレーナさんの事だから、何の根拠も無く何となくって事もあるかもしれないが、さっきの言動からそれはあり得ない。

きっと何か困った事があるに違いない。

僕が勝手に考えを巡らせていると、エレーナさんは言った。



「それはこれから話そうと思っているから、他にない?」



なるほど、僕の予想はあながち間違ってはいない様だ。

でも、他に気になる事は特にない。

僕は黙って首を振った。

するとエレーナさんは言った。



「それじゃあ、説明を始めましょうか。カエト君を呼び出した理由と頼み事。」



僕は聞き逃さないようにエレーナさんの話に意識を集中した。



「まず、何で私がカエト君をここに呼び出したかと言うと・・・特に理由はないわ。強いて言えば二人きりで邪魔が入らないから、かしらね。」



ありゃ、やっぱりそう言う理由だったのか・・・。

僕はすっかり気がぬけてしまった。



「次に、頼み事の方なんだけど・・・」



どうせまたどうでも言い事なんだろう。

僕はすっかり投げやりな感じになってしまった。



「今すぐ魔王の城に行って、魔王に宣戦布告してきて欲しいの。」



あ~、はいはい。

魔王に宣戦布告ね。

そんなのおやすいご用・・・・・えっ???



「エレーナさん、今、何て言ったの??。」


「魔王に宣戦布告、簡単に言ったら・・・挑発?・・・ケンカを売る?・・・まあ、とりあえず魔王に会いに行くの。」



え?、何言ってるのこの人。

魔王に会いに行く??、しかも宣戦布告って。



「ああ、とりあえず拒否権は無いから、それじゃ・・・風の精の長、我が呼びかけに答えよ。・・・ブツブツ・・・ブツブツ・・」



僕はまだ話について行けてないにもかかわらず、エレーナさんはもう出発の準備を始めていた。

じ、冗談じゃない!!



「ちょっと待ってよ、えれーなさn「準備よし!!、それじゃ行くねっ。」」



僕の静止の声も聞かずにエレーナさんは魔法名を叫んだ。



風精霊の風フェアリーウィンド



その瞬間、激しい風が吹き荒れ、視界が真っ白になった。

僕は、飛ばされないように体を屈めて顔を腕で守った。

何だ!?、何が起こってるんだ!?。

僕は何とか周りの様子を窺おうとしたが、風が強すぎて目を開けられない。

なんとか腕と腕の隙間から前を見ることが出来た。

そこにはエレーナさんが涼しい顔をして立っていた。



「大丈夫?、まあ、すぐ着くからそのまま飛ばされないように頑張って。」



エレーナさんはそう言うと、僕の隣まで来て、耳元で何かボソッと呟いた。

すると、風が徐々に弱くなった。

目を開けられるし、かがまなくても大丈夫なくらいに。

しかし、ぼくの周りには、さっきと変わらない真っ白な壁に囲まれている。

僕が不思議がっていると、エレーナさんが言った。



「今、貴方の周りの風を調節したの、もう大丈夫でしょ。」


「あ、ありがとう」



調節できるんだったら始めからして欲しかった。

僕は苦笑いしながらそう思った。

・・・って、ちょっと待った!!。

今コレって、魔王の所に向かってるのか!!。



「ちょっ!!、エレーナさん。今すぐ引き返してよ!!お願いだから」



僕はそう言ってエレーナさんに戻ってもらうよう頼み込んだ。

しかしエレーナさんは淡々とした口調で言った。



「ダメよ。そもそもこの魔法は目的地の変更は出来ないもの。」


「そ、そんな!!。何とかならないの!?。」



するとエレーナさんは不思議そうな顔をして言った。





すると、突然何かが僕の右腕を掴み、僕はそのまま引っ張られた。



「カエト君!!」



突然、エレーナさんの切羽詰まった様な声が聞こえて振り返ってみると、僕に向かって手を伸ばしている。

?、何をそんなに焦って・・・




ガシッ!!




「えっ、うわ!!」



突然、右腕を何かに捕まれたと思ったら、そのままグイッと風の壁の外に向かって引っ張られた。

僕はそのままバランスを崩して、倒れ込むように外に引っ張り出された。

一瞬体を引き裂かれんばかりの衝撃が体中に走ったが、すぐに視界が開けた場所に出た。

・・・と言うより。



「えっ!?、何処ここ!?」



僕は外に出て始めに思ったこと、それは、さっきまで真っ暗な空間だったのに僕の目の前に広がるっていたのは、赤黒い色の空と砂漠のの様に荒れ果てているどす黒い大地、それに鼻がおかしくなりそうな位のヒドイ臭いだった。



「・・・ヒドイ。」



僕はそれしか言えなかった。

・・・あれ?、僕何してたんだっけ?。

僕は改めて自分の置かれている状況を再確認した。


(まず、僕はエレーナさんの魔法で移動している途中、何かに右手を引っ張られて・・・。)


僕はそのまま真下に視線を向けた。

そこには、すごい速さで景色が通り過ぎている。

と言うことは・・・空!?

僕は驚いて、手足をバタバタとさせた。

すると、右手に違和感を感じて視線を向けてみた。



《ヴヴヴヴヴ》



そこには、人の形をした真っ黒な影みたいな物体が低くて重いうなり声の様な声を上げながら僕の右腕にひっついている。



「うわっ!?、なんだこいつ」



僕は右腕を思いっきり振り回してみた。

しかし、黒い影は微塵も離れようとしない。

それどころか、さっきから右腕を下にグイグイ引っ張っている。

まさか、僕は落とそうとしてる?。

冗談じゃない!こんな所から落ちたら死んじゃうよ!!。

僕は何とか魔法の中に戻ろうとした。

しかし、右腕が突然鉛の様に重くなった気がした。

腕を見てみると黒い影が片腕以外を僕の右腕から放し、少し勢いをつけながら僕を下に引きずり落とそうとしている。

っ!!、腕がちぎれそうだ。



「カエト君!!」



突然、上から声がして顔を上げてみるとエレーナさんが僕の左手をしっかりと握って引き上げようとしていた。

そうか、エレーナさんが支えてくれてたのか。



「すぐ引き上げるから、頑張ってそいつ引きはがして!。」



エレーナさんはそう言ってあごで右腕を見るよう言われた。

右腕には黒い影が今も低いうなり声を出しながら下に向かって体を揺らしている。

僕はとりあえず黒い影を腕からはがそうと、とにかく腕をブンブン振って振り落とそうとした。

しかし、黒い影はまるで僕の体の一部の様にぴったりとくっついて離れようとしない。



「だめだよエレーナさん、こいつ離れない!!」



僕はそう言って、エレーナさんに助けを求めた。

するとエレーナさんはちょっと苦しそうな顔をしながら言った。



「仕方ないわね。カエト君・・・後でちゃんと直してあげるからねっ!!」



エレーナさんはそう言って、僕の左腕をグイッと引っ張りあげた。

そして、そのまま僕を風の中に放り込んだ。

僕はすごい勢いで安全な壁の中に入って一安心したが、まだ右腕には黒い影が張り付いている。

すると、エレーナさんも壁を越えて中に入って来ると、僕の右腕を掴み、そのまま風の壁の中に手を無理矢理突っ込まれた。

その瞬間、右腕から無数の刃物で切られているような痛みが走った。



《ヴヴヴヴヴヴォォォ、ヴヴヴヴヴヴヴヴヴォォォォォォォォオオオオオオ!!!!》



すると、中からすごい叫び声が聞こえてきた。

おそらく、僕の右腕にくっついている黒い影も同じ痛みを味わっているのだろう。

しばらくして、僕は痛みに耐えきれず右腕を壁から引き抜いた。

すると、僕の腕はあちこちに切り傷があり、肉がえぐれて大量の血が出ていた。

黒い影はもう跡形もなく消えて無くなっていた。

すると、エレーナさんが僕の右腕に手をかざして、すぐに傷を治してくれた。



「ふぅ~、治ったわ。念のためしばらく右腕を動かして、痛みが無いか確認して」



僕は言われた通りに右腕を曲げたり伸ばしたりして、ちゃんと治っているか確かめた。

どうやら問題なく治っている様だ。



「ふ~、一時はどうなるかと思ったけど、何とか無事に終わったわね。」

 


エレーナさんは僕の腕が正常に動いてるのを見ると、そう言って額の汗を拭う仕草をした。

まあ、無事ではなかったけど・・・。

僕は苦笑いしながらそう思った。



「それよりさ、エレーナさん。一体今僕たちはどこにいるのさ。」



僕は右手首をグリグリ動かしながらエレーナさんに言った。

すると、突然フワッとした感覚がしたと思ったら、周りを囲んでいた風の壁が消えた。



「あっ、着いたわ。」



エレーナさんはそう言って僕の真後ろを指差した。

僕は、恐る恐る振り返ってみた。



「うわあっ!!、なんだこれ!!」



そこには、黒い大きな煉瓦で作られた城壁に、僕の背丈の20倍はあるくらい大きな赤い門が鎮座していた。

僕が門の大きさに驚いていると、エレーナさんが僕の横を通り過ぎて、門の右側をガンガン叩き始めた。



「なっ!!、なにやってんのさ!」



すると、エレーナさんは僕の方に振り返って言った。



「何って・・・見たら分からない?」



そう言ってエレーナさんはまた門をガンガン叩き始めた。

すると、エレーナさんのすぐ右横にある門の板が一部横にスライドした。

そこからギラギラした二つの目が僕たち二人を見るといった。



【魔王さまは?】



するとエレーナさんがすぐに言った。



「超すごい」



すると、ギラギラした目が奥に引っ込んで、少し時間が経ってから左側に普通のサイズの隠しトビラが出てきた。



「さあ、行きましょう」



エレーナさんは当然の様にそこから中に入っていった。



「ま、待ってよエレーナさん」



僕もエレーナさんの後に続いてトビラをくぐった。

すると、目の前に禍々しいデザインの大きな像が左右対象に並んでいた。

始めの一対は、大きな鎌を持っていて、鎌の柄の部分に寄り掛かるようにたたずんでいた。

次の一対は、大きな翼を持った人の様な像で、二体とも通路を通る物をニヤニヤした顔で見下ろす形でたたずんでいた。

他にも、三つ叉の槍を持った像や牙をむきだして雄叫びを上げている像もあった。

しばらく歩いていると、薄暗くて長そうな通路が見えてきた。

僕はエレーナさんから離れない様にあとをついて行った。

エレーナさんは、迷うことなく目の前の通路に入っていった。

僕もエレーナさんの後に続こうと通路に足を踏み入れようとした。

すると突然誰かが僕の肩を掴んできた。



「えっ?、何?」



僕は後ろを振り返ってみると、そこにはごつい体をした大男が立っていた。

大男は眼が片方潰れていて、大きな眼帯をつけていた。

すると、大男は僕の首根っこを掴むとそのまま僕を持ち上げた。



「ちょっ、何するんだよ!!。下ろしてよ!!」



僕は大男の手から逃れようとジタバタしてみたが大男の手の力が弱まる事はなかった。

すると、先を歩いていたエレーナさんが通路の奥から引き返してきて言った。



「ゴスさん、その子は私の友達だから大丈夫よ。下ろしてあげて。」



エレーナさんがそう言うと、大男は僕とエレーナさんを交互に見た。

そして、大男は僕を地面に下ろし、手を放してくれた。

僕は首を押さえながら大男を睨みつけた。

しかし、大男は僕の事など眼中に無いのか、ゆっくり来た道を戻っていった。



「早く行きましょ、カエト君」



エレーナさんはそう言って長い廊下を歩き始めていた。

僕もエレーナさんの後を追って中に入っていった。




*****




しばらく歩くと、エレーナさんが突然立ち止まった。

あまりに突然だったので、僕は止まることが出来ず、エレーナさんの背中に顔をぶつけてしまった。



「あら、ごめんなさい。大丈夫だった?」



僕は痛む鼻をさすりながら頷いて見せた。



「一体どうしたのさ、魔物でもいたの?」



鼻を押さえながらだったので鼻声になってしまった。

すると、エレーナさんはヒョイと横に体をずらし、僕にも前が見えるようにしてくれた。



「うわぁ、大きいね・・・。」



僕らの目の前には、大きな石柱がアーチ上になった大きな木の扉がたたずんでいた。

扉の両脇には松明を掲げるように持っている悪魔の様なデザインの像があって、扉の木にはよく分からない赤い模様?(文字かもしれない)がびっしり書かれており、禍々しい雰囲気が全く知識も特殊な能力もない僕にも分かるくらい扉からにじみ出ていた。



「此処が魔王の部屋よ」



僕が扉を観察している時にエレーナさんがそう言った。

やっぱりそうか。

それじゃあ、この扉からあふれんばかりに出てる禍々しい雰囲気は魔王本人が出しているものか。

僕は音を立ててつばを飲み込んだ。

すると、エレーナさんが扉の方に歩み寄っていった。

僕も覚悟を決め、エレーナさんの後に続いて扉に近寄った。

近くで見ると扉が一層大きく、禍々しく見えた。



「カエト君、逃げないでね」


「え?」



よく見ると、僕は無意識のうちに後ずさりをしていた。

僕は逃げようとする自分を追い払うように頭を振って、顔を軽く叩いて気合いを入れ直した。



「大丈夫だよ。」



僕はそう言って、エレーナさんの隣まで戻り、扉に手を掛けた。

すると、エレーナさんも扉に手を掛けて僕の方を向いた。

「準備は良い?」っと聞いている様だ。

僕は静かに頷き扉に視線を向けた。

エレーナさんは大きく息を吸い、声を張り上げていった。



「魔ー王~く~ん。あ~そび~ましょ~っ!!!」



僕は盛大のにずっこけた。



「何言ってんのさ!!、何で近所の友達を遊びに誘うみたいに魔王呼ぶのさ!!」



すると、エレーナさんが当然の様に言った。



「え?、だって、いきなり入ったら失礼じゃない。」


「だからって何でその言葉が出てくるの!!」



僕は盛大にエレーナさんにツッコミを入れまくった。

さっきまでの緊張感は何処へ行ったんだ。



【おーい。入ってもよいぞ~】



僕がエレーナさんにツッコミを入れていると、野太く低い響くような声が扉の向こうから聞こえた。



・・・・・・・・


魔王?


・・・今の声・・・魔王?




僕が謎の声に驚いていると、エレーナさんは言った。



「あっ、ほら、入っても良いって」



エレーナさんは扉の取っ手に手を掛けて、グイッと扉を横にスライドさせた。


ええっ!?、横に開くのっ!?。


僕は中に入っていくエレーナさんを唖然として見ていると、エレーナさんが顔だけこちらに出して言った。



「ほら、早く。」



僕はそれを聞いて我に返り、慌てて部屋の中に入った。




*****




「・・・・・・・・・」



僕たちは今魔王の玉座の前にいる。

魔王は思ってたより普通の人間の様な姿形をしていた。

唯一違う所と言えば、頭に二本の角が左右対称に生えているのと声が変に響く位だ。

部屋に入ると、魔王に【玉座の前まで来い】といわれたから、僕たちは黙って言うことを聞いて玉座の前まで行った。【腰を下ろして待て】と言われたから座って待った!!。

始めこそ僕は(何が始まるんだろう)とびくびくしながら待っていた。

しかし、魔王が奇想天外な行動に走ってから僕は驚き過ぎてずっと黙り込んでいた。

だってそうなっても仕方ないだろう、何で、何でっ!!。




【いや~、久しぶりだな神よ!!、元気にやっておったか?】


「それはもう元気元気!!、元気すぎて新しい勇者スカウトしてきたくらい♪」


【なに?!、もう選んできたのか。・・・フハッハッハッハ!!、急いで部下に伝令を飛ばさんといかんな!!】




・・・・何であんなにエレーナさんと仲良く話をしてるんだ!!。

ええっ!?、何!?、どういう事!?。

何で魔王あんなに明るく接してきてるの!?。




「あらあら、もう歳なんだから無理しない方が良いんじゃない?」


【何を!、我はまだまだ現役バリバリだ。】




魔王に向かって何て挑発的な言動を取ってるのこの人!!

「もう歳なんだから」とかいってるけど、魔王すごいイケメン!!。

何で?、何であんなに年寄りですねみたいな事いってるの?

・・・・・アゴヒゲのせい?、あのかっこよさげのアゴヒゲのせい。

ダンディでかっこいいじゃないか!!




「年寄りはみ~んなそう言うのよね、過去の栄光にすがって全く」


【ハッハッハッハッ!!言ってくれるな神よ!、お前こそ老けておるぞ?】


「なっ!!、失礼な!!。一応女なのよ!もう少しデリカシーって物を学びなさい!!!。」


【ハッ!!、それを学べば今より強大な力が手に入るのなら考えてやらんでも無いぞ?】


「またそれ?、貴方やっぱり怪力バカね」


【ムッ?、それは聞き捨てならんぞ、誰が怪力バカだ!!。この爆乳年増め!!】


「なっ!!、誰が年増よ!!!この老け顔!!!」


【いいおったな・・・・一番言ってわならぬ言葉を!!!!】


「何よ、真実を言われて怒っちゃった?、老け顔くん」




あれ?、なんか・・・雲行きが怪しくなってきたぞ。

さっきまであんなに仲良く話してたのに、何でいきなりけんか腰になってるの?。




【もう一度言ってみろ、今すぐ我の城から追い出すぞ!!!】


「何度でも言ってやるわよ。この老け顔っ、老け顔っ、老け顔っ、老け顔っ、老け顔っ!!」




二人は睨み合って一言もしゃべらなくなった。

えっ?、さっきまで仲良かったのに・・・。

そのまましばらく静寂が魔王の部屋をしていたが、その静寂を破る者が入ってきた。



【魔王さま】



入ってきたのは鎧を着込んだ二足方向のクロヒョウの魔物だった。

誰だか知らないけど、グットタイミング!!。

クロヒョウさんは一礼して、扉から魔王の横まで一瞬で移動して用件を魔王に耳打ちして伝えていた。

すると、魔王が相づちを打ちながら突然「なんだと!」とばかでかい声で突然叫んだ。

どうやら何かあったらしい。

今度は魔王がクロヒョウさんに何かを耳打ちした。

すると、クロヒョウさんは「はっ」と返事をすると、一瞬で姿を消してしまった。



「あの~、何かあったんですか?」



僕は恐る恐る魔王に聞いてみた。

すると、魔王は驚いたのか眼を丸くしながら言った。



【ほう、はなせたのかボウズ。てっきり言葉が通じていないものだと思っていたが・・・。】


「ええ、始めからここに来る予定だったからその方が良いと思ってね」



エレーナさんは素っ気なく言うと、魔王は手をポンッと叩くと言った。



【そう言えばまだ聞いていなかったな。わざわざ何をしにここえ出向いた。一応此処は魔王の城だ。お前の様な者がノコノコ来るべき場所では無かろう?。】



すると、エレーナさんは立ち上がって右手の人差し指をゆっくり立てて、それを魔王に向けた。


何を言うのかと僕は暢気に出されたお茶をすすった。

言い忘れていたが、最初に取った魔王の奇想天外な行動が、玉座の裏からちゃぶ台持ってきて、部下にお茶とお茶菓子を持ってこさせた事だ。



「宣戦布告よ!!」



ブフッ!!!!。


僕は思わずお茶を盛大に吹き出してしまった。

盛大に吹き出したお茶は向かいに座っている魔王に見事に直撃してしまった。

魔王は微動だにせず、僕の方を眼だけ動かして見ると、エレーナさんの顔を見ていった。



【宣戦布告とわ、コレのことか?】



そう言って魔王は僕の事をアゴで指した。

怒ってらっしゃる・・・。

僕はブルッと身震いしてエレーナさんの方を見た。

お願いだから余計なこと言わないで。

僕は無言でエレーナさんに訴えたが、そんなことは気にもせずエレーナさんは言った。



「そう取ってもらってもいいわ。何せこの子が新しい勇者なんだから。」


【何だと!?、こんなボウズがか!!】



魔王は驚いて僕の方を見た。

僕は苦笑いしながら魔王の様子を窺った。

チラッと様子を見ただけだからよく分からなかったが、あの顔は間違いなく怒ってる顔だった。

ははは、ヤバイ、僕生きて帰れるかな・・・。

すると、魔王は体を小刻みに揺らし始めた。

え?、どうしたの?。

揺れはだんだん大きくなり、やがて魔王が何か言っているのに気づいた。

耳をそばだててよーく聞いてみると・・・・・。



【フハハ・・・ハハハ】



笑ってる?



【フッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!!!】



魔王は大口を開けて笑い声を上げた。

僕もエレーナさんも突然笑い出した魔王をみて、心中が理解できず、少し戸惑ってしまった。

魔王はひとしきり笑うと、乱れた息を整えながら言った。



【神よ、お前も、とうとうヤキが回ったか!!。こんなボウズが勇者だと!?、笑わせてくれる、ハッハッハッハッハッハッハ!!】



魔王はそう言うとまた腹を抱えて笑いだした。

すると、エレーナさんは不満そうな顔をしていった。



「この子をあまり舐めない方がいいわよ。」



エレーナさんはそう言うと、僕の方をみて頷いた。


え?、何その頷き。

僕何かするの?。


すると、エレーナさんは魔王も驚くようなことを言った。



「その証拠に、今からカエト君があんたの後ろにある玉座を木っ端微塵・・・・・にしてみせるわ」



エレーナさんがそう言った瞬間、笑い声がピタッと止んで、魔王は笑っていた格好のまま固まった。

僕も自分の耳を疑った。


今この人はなんて言った?。

あのでかくて頑丈そうな玉座を僕が木っ端微塵にするだって?。

冗談がきつすぎるよ。


僕は「冗談でしょ?」と眼で訴えてみるが、エレーナさんは僕の顔を見るなりまた頷いて、さらに言った。



「しかも、デコピン一発・・・・・・で!!」



さらにとんでもない条件を言い出したよこの人!!!。

すると、エレーナさんは僕にウィンクしてきた。


何に対してのウィンク?!。

いやいやいやいや・・・・絶対無理!!。

僕は手を左右にブンブン振って、必死に首も振った。



「あら?、やる気満々ね♪。その調子で玉座もお願い。」



いやいや、「お願い」じゃなくて、絶対無理だって!!!。

僕が首や手を振りまくっていると、魔王が言った。



【おい、神よ。本当にこんなヒョロヒョロしたボウズがそんなこと出来るのか?】



魔王は僕の様子を見て、エレーナさんが見栄を張ってるだけだと思っているようだ。

僕が言うのもどうかと思うが、全くもってそのとうりです!!!。

こんなに大きくて頑丈そうな玉座を壊すなんて、しかもデコピンでなんて・・・・。

僕が魔王の言葉を聞いて頷いていると、エレーナさんが言った。



「そんなの、実際やってみせたほうが良いでしょ?。さあ、カエト君。」



そう言ってエレーナさんは僕を立たせると魔王の後ろに佇む玉座の横まで僕を引っ張った。

そして、エレーナさんは僕から少し後ろに離れた。



・・・ホントに?

僕は改めて玉座を見た。

縦の長さは、僕の身長の3倍くらいだから大体5メートルくらい。

横の長さは、・・・丁度良いくらいの長さ。

背もたれの石の厚さは、拳6個分くらい。

そして、そのいすは床にガッチリ固定されていて、ちょっとやそっとの力じゃビクともしなさそうだ。


これから僕はこれをデコピンで壊すのか・・・。

・・・・できっこないよ。

これ・・・できっこないよ。



「大丈夫、私と自分を信じて(コソコソッ)」



僕の不安を読み取ったかのようなタイミングでエレーナさんがコソコソッと小声で助言してくれた・・・けど。

・・・・・・本当に大丈夫かな。


・・・ええい!!、ダメで元々だ!!


僕は大きく深呼吸して、右手を目の前の玉座にかざし、中指を親指でしっかり押さえ、力を込める。

すると、また後ろからエレーナさんの声が聞こえてきた。



「自分がこの玉座をどうしたいかイメージして(コソッ)」



僕は・・玉座を・・・。






壊したいッ!!!!








僕は眼を瞑って心の中で強く念じて、親指を放し、中指で思いっきり玉座にデコピンした。



バチンッ!!!



すごい小気味のいい音が響き渡った。

しばらくシンと静まりかえった時間が続いた。

ゆっくり眼をあけて見ると・・・。



玉座は・・・




僕の目の前に変わらず佇んでいた。




あれ??、壊れてない。



それを確認すると、突然、右の中指がじんじんと痛み出した。

右手を見ると、中指だけ他の指より太く、そして青紫色をして、爪から血がドバドバ出ていた。



「うわぁ~、ダメだったか。 ちょっと待って、今治すから。」



そう言って、エレーナさんが僕の右手をとり、魔法で治してくれた。


(・・・なんか慣れてきたな、この感じ。)


僕は徐々に治っていく自分の右手を見ながらそう思った。

すると、魔王が嫌みっぽく言った。



【それで、玉座をどうするんだったかな?、神よ。】



エレーナさんは僕の手を治し終えると、言い訳じみた口調で言った。



「今日は調子悪かったのよ。」



【ほ~う、調子がの~。】



すると、エレーナさんは僕の手を引いて、出口へと向かった。



【ぬ?、帰るのか?、そんな醜態を見せつけたまま】



するとエレーナさんは扉の前で立ち止まり、魔王を指差しながら言った。



「今にみてなさい!!。この子を誰にも負けない最強の勇者に成長させて、あんたを瞬殺してやるんだから。覚えてなさいっ!!」



そう言って扉を勢いよく開け放つと、乱暴に扉を閉めた。



「・・・・・・・・・」


【・・・・・・・・・】



そして僕は、そのまま魔王のいる部屋に取り残されてしまった。



「えーっと」

【とっとと失せろ。ボウズ】



僕が何か話そうとしたら、魔王は興味なさそうに僕にそう言った。



「・・・失礼しました。」



僕はとりあえず一礼してから魔王の部屋を出た。





***





【・・・・・・・・行ったか。】



我はそう言ってちゃぶ台から立ち上がった。

そして、軽く伸びをして、玉座に座った。



【はぁ、いきなり神が来るとは・・・やはりあいつは頭が狂ってるな。】



そう言って、背もたれに寄り掛かろうと後ろに体重を掛けた。


その瞬間。



                     ピシッ!

            ピシピシッ

ピシピシピシピシッ



まさかっ!!


気づいたときにはもう遅く、玉座は見る間に崩れ、我はそのまま玉座の瓦礫に埋もれてしまった。



「はははははっ!!、何やってるんだよ。“マギス”!。」


【なっ!、要らしたんですか?!。魔王様!!】



我は瓦礫から這い出て、声のした方を見た。

そこには魔王様の姿があった。



「まったく、始めから居たのに、神以外誰も気づかないんだからな~。情けない。」


【も、申し訳ございません】


「いいよ、別に気にしてないし」



魔王様はそうおっしゃると、玉座の所まで来て、そのまま魔法で玉座を元に戻し、ゆっくり腰を下ろした。



【相変わらずすごいですね。】


「それよりマギス、僕に聞いておかないといけない事があるんじゃない?」



・・・?

言っておかなければならないこと?。

・・・・・・ああ。



【夕食は何になさいます?】


「う~ん、そうだね。こんな些細な事にも気付かない、無能で哀れなマギスの丸焼きにするかな。」



そう言って魔王様は、指先に炎の玉を作り上げてドンドンそれを大きく・・・って。



【ま、待ってください!、さすがにそれを食らってしまったら死んでしまいます】          


「あ~、聞こえな~い、聞こえな~い。」


【ちょっ、まっ、分かりました!。あれですね!!、勇者についてどう対処するかですよね。】



すると、魔王様は立てていた指を下ろし、頬杖をついて我を見た。

ふぅ、死ぬかと思った。



【それで、どうなさるつもりなんですか?】



すると、魔王様はニヤッと笑みを浮かべて言った。



「あいつらの所に、“奴”を送る」


【“奴”・・・ですか。】


「そう、“奴”だ。今すぐここへ呼び出せ」


【御意】



“奴”だな、よし。

我は心の中で“奴”の部屋を思い出しながら、魔王様の部屋を出ようと扉に手を掛けた。       



《その必要はございません。魔王様。・・・ついでにマギス》



その瞬間、部屋に“奴”の声が響き渡った。



【おい、ヤース。失礼であろう。出てこい。】


《さっきからあんたの隣に居るんだけど。》

     

【うわぁっ!】



我の右隣にはヤースの姿があった。

相変わらず神出鬼没だな、こいつは。



《あら、褒めてくれてありがとうマギス。》



しかも読心術まで使いおって!。



《仕方ないでしょ、聞こえてくるんだから》


【クッ】


「おいおい、ケンカするなよ。今から勇者を片付けて来てもらおうと思ってるのに。」



するとヤースは魔王様の前まで行き、跪いた。



《お話は全て聞かせていただきました。必ずや勇者を始末してきます。》


「いや、頼もうと思ってたのお前じゃ無いから良いよ。」


《えっ?》【はっ?】



我もヤ-スも予想外の返事に驚きの声が漏れた。



【な、魔王様の言っていた“奴”ってヤースの事ではないんですか?!】


「まあ、始め確かにそう思ってたんだけど。ケンカしてる間に違う奴にもう伝言伝えたし、別にいいかなって。」



《・・・・・・・・・》


【・・・・・・・・・】


「何黙ってるんだよ。もう用事無いから、二人とも部屋に帰って良いよ。」


(全く、この人は・・・。)


おそらく、ヤースも我と同じ事を考えているだろう。

だが、一応魔王様なんだから礼節だけ守っておくか。



【それでは、失礼します】


《それでは私も》



そう言って、我とヤースは魔王様の部屋を後にした。

部屋を出るとき、魔王様は



「・・・・・・それでは皆さん、勇者視点に戻ります」



よく分からないことを言っていた。





***





「もう!、何で壊せなかったのよ。カエト君!!」


「いや、だって無理だよあんなの・・・」



僕らは、魔王の城の長い長い廊下を歩いている。

エレーナさんが先頭で僕がその後に続いている。

そして今僕は、廊下を歩きながらエレーナさんにプンスカ怒られていた。

何で?、無茶な事言われて被害にあった僕がこんなに攻められてるの?。



「大体、何であの程度の物が壊せないのよ。しかもあんな大けがして・・・。」



エレーナさんは、まるで僕が当然の様に出来る事の様に言った。

何を言ってるんだこの人は!!。

僕みたいな一般人が、あんなムチャな事をやり遂げられる訳がないのに。



「エレーナさん。一つ聞いても言い?」


「何よ。」



とても不機嫌そうだが、話くらいなら聞いてくれるらしい。



「何でエレーナさんは、そんなに僕を過大評価するの?」



僕がそう言うと、エレーナさんは突然立ち止まって僕の顔をのぞき込んできた。

僕は一瞬ドキッとしたが、そんな気持ちはエレーナさんの言葉で吹っ飛んでしまった。



「貴方には・・・まだ理解出来ないわよ。それより、早く帰りましょう。ガルト君もきっと待ちくたびれてるわ。」



そう言って、エレーナさんはニコッといつもの笑みを浮かべると、また前を向いて歩き始めた。

僕にはまだ理解できない?。

・・・なんで?

僕は自分の手のひらをジッと見つめた。


(僕に・・・どんな力が・・・。)


本当にエレーナさんの言っていたような力って言うのがあるのだろうか。

・・・試してみよう。

僕は決心すると、一旦立ち止まって壁の方を見た。

そして、右手を強く握り、低い姿勢で構えた。

昔よくテレビで見てたアニメのパクリだけど・・・。

しばらくそのままの格好で心の準備をし、そして、両目をカッと見開いて、技名を叫んだ。



《ジャン拳・グー!!》



そして、思いっきり壁を殴りつけた。


ドスッ


鈍い音がしたが、壁に変化はない。

そして、全身に響くような痛みが走り、右手は赤く腫れてしまった。



「いっつぅぅぅ・・・」



僕は右手を庇いながら壁から離れて地面にしゃがみこんった。

まあ、分かってた結果だけど・・・。

僕は改めて自分ただの人だと再確認した。

やっぱり、エレーナさんの勘違いだ。

僕は右手を軽くさすりながら大分前を歩いてるエレーナさんの所に駆けていった。






ピシピシピシッ






*****






「待ってよ、エレーナさん。」


「なんで?」



やっとの事でエレーナさんに追いつくことが出来た。

後ろをぴったりついて行ってた時は気付かなかったけど。



「歩くの・・・速すぎる・・よ」



僕は息を切らしながら言った。



「なんで?、来るときは全然平気でついて来てたのに・・・」



そう言えばそうだな・・・何でだろう?。

もし、エレーナさんの歩く速さが全く変わってなかったら、何でこんなに僕は疲れてるんだ?

僕はうんうん唸りながら考えて見たが、全く分からない。



「何唸ってるのよ。早く帰りましょう。」



そう言ってエレーナさんはまた歩き始めた。



「ま、待ってよエレーナさん」



僕がエレーナさんを呼び止めようと後を追いかけようとしたら、すでにエレーナさんは廊下の奥の方まで歩いていた。



「なっ!、速すぎるよ!!」



僕は慌ててエレーナさんの後を追った。






*****






「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」



僕は息を切らせながらやっとの思いで追いつくと、エレーナさんは不気味な像の一つに寄り掛かっていた。



「随分遅かったねカエト君。何やってたの?」



僕は呼吸を整えながら理由を話した。

すると、エレーナさんは首を傾げて言った。



「それはおかしいわね・・・・」



エレーナさんはしばらく考え込むと、フッと顔を上げてニコリと笑って言った。



「まあいいわ。それより早く帰りましょう。」



エレーナさんはそう言って何かブツブツつぶやき始めた。


ああ、またあの風か・・・。

僕は此処に来るときにあったことを思い出して、身震いした。



「エレーナさん。一瞬で帰れる魔法はないの?」



するとエレーナさんは、ブツブツ言うのをやめて僕の顔を見て、不安そうに言った。



「あるにはあるけど・・・カエト君の体が持つかどうか・・・。」



珍しく、僕の体を心配してくれている様だ。

でも、もう移動中に襲われるなんて嫌だ。



「もう、今すぐ帰りたいんだよ。」


「でも・・・」



エレーナさんはまだ迷ってるみたいだが、後一押しだ。



「そこを何とか、お願い!!」



そう言って僕は頭を深く下げて頼んだ。



「・・・分かったわ。それじゃあ準備するからちょっと待っててね。」



そう言って、エレーナさんは地面に何か書き始めた。

たぶん“五芒星”とかいう奴だろう。

僕はしばらく掛かるだろうと思って、その場に座って書き終わるのを待つことにした。

さて、今回はどのくらい時間が掛かるのかな~。



「出来た。こっち来てカエト君。」


「早っ!!」



僕は思わずそうつっこんでしまった。

僕は立ち上がって、エレーナさんの所まで行った。

そこには、確かにあのときと同じ模様が地面に描かれていた。

僕は前と同じように“五芒星”の真ん中に立った。

すると、エレーナさんは僕の隣に来て、僕の肩を掴んだ。

なるほど、今回はエレーナさんも中に居るのか。



「それじゃあ始めるけど・・・絶対動かないでね。」


「消滅するからでしょ。分かってるよ」



すると、エレーナさんは「そうだよ」とも「違うかな」ともとれるような複雑な表情をしていた。


ちょっと、何その顔・・・。

僕、合ってるの?間違ってるの?。

煮え切らないな~。

すると、僕の肩を掴んでいる手に力が入った。



「行くわよ。神様の特権!!」



空間飛行ジャンプ



突然、体がフワッと浮いたような感覚がしたと思ったら、目の前の景色がすごい勢いで下に飛んで行き、真っ黒な所を通ったと思ったら、そのまま暗い所で景色が止まった。



「・・・着いたの、エレーナさん」



僕はエレーナさんの方を見てみたが、そこにはエレーナさんの姿は無かった。



「あれ?・・・エレーナさん?」



僕は辺りをキョロキョロしてみたが、何処にも居ない。



「え?・・・またこのパターン?」



勘弁してよ~。

またあの白い化け物とか出てくるのかな。

早くここから出ようにも出口が分からないし・・・。

かといって一人で出口を探し始めたら絶対迷うしな~。



「あっ、いたいた。大丈夫だった?カエト君」



あっ、エレーナさんだ。

よかった。



「何で居なくなったのさ。エレーナさん」



するとエレーナさんはちょっと言いずらそうに顔を背けながら言った。



「ちょ、ちょっと用事があってね。うふふ」



エレーナさんは右手で口元を隠してそう笑った。

僕は体がゾワッとした。

うわっ、気味が悪いな・・・。

何その笑い方と仕草。



「あら?、どうしたのかしらカエト君。何かご用?」



エレーナさんはきょとんとした顔で不思議そうに言った。

僕はさらにゾワッとした。

どうしたんだろう・・・・頭でも打ったのかな?。

僕は何だかエレーナさんが本気で心配になってきた。



「大丈夫?、エレーナさん。あり得ないくらい変だよ?。」


「失礼ね、あり得な位変って何よ。」



どうやら頭がどうかしてしまった訳では無いらしい。

僕はひとまずホッとした。



「よかった。・・・でも、何でエレーナさんはそんな態度で僕に話しかけてきたの?」



するとエレーナさんは、ギクッと効果音が鳴りそうな位はっきり体が震えた。

あれ?、どうしたんだろう。



「えっと・・・それは・・ね。・・・・・・そう、イメチェンよ!イメチェン!!。最近私の神様としての威厳が無くなってきてるな~と思って・・・・あはは。」



エレーナさんは眼をあちこちに泳がせながらそう言った。

確かに、威厳が無いのは始めからだけど・・・。

・・・あれ?、何だろうこのとてつもない不安感。

僕は、念のため自分の体が無事か確かめてみた。

見た所特に変わったところは・・・無いよね。



「あ、あ、あまり動いちゃダメ。カエト君」



エレーナさんは、震えた声で僕にそう言った。

何で?。

僕は知らない間に何かとんでもない事でもやらかしてしまったのか?

・・・・・・直接聞こう。



「エレーナさん、一体何を隠してるの?教えてよ。」



するとエレーナさんは、突然汗をダラダラかき始めた。

ヤバイ、これは本当に不味いパターンの焦り方だ。



「だ、大丈夫。生きていく上では全く支障が無い事だから・・・たぶん。」


「え?!、そんな深刻な事なの?!。」


「だだだ、だから大丈夫だって。私が何とかするから。」



何だか怖くなってきたな・・・

一体、僕の体に何があったんだ。



「お願いだよ。僕の体に何が起こったのか教えてよ!!。」



するとエレーナさんは顔を背けながら、ゆっくり自分の下半身を指差した。


え?、何?・・・僕の下半身?。

僕は自分の下半身を見た。

別に変なところは・・・。

僕はズボンをパタパタ揺らしながら、改めてエレーナさんを見てみた。

すると、エレーナさんは心臓の辺りをパン、パン、と叩くジェスチャーをした。

何のジェスチャー?。

僕はズボンをパタパタさせてるうちに、ある違和感に気がついた。


あれ?、そう言えば・・・股の間がスースーしてるような。

・・・・・・あれ?


僕はズボンから手を放し、その場で屈伸してみた。

なんか・・・胸の辺りが重いような。

僕は自分の胸の辺りを見た。

・・・あれ?、なんか出てない?

僕はそれをさわってみた。

・・・柔らかい。


だんだん僕は自分の体の違和感に気付き始めた。


・・・・・もしかして。


僕は恐る恐る自分の股の間さわってみた。


・・・ない?


ズボンを前に伸ばし、直接見てみた。


・・・・・ない!!。


僕はズボンから手を放して、エレーナさんの顔を見た。

エレーナさんは黙って頷いた。



「も、も、も、もしかして・・・僕って・・・“女の子”?」



するとエレーナさんはまた黙って頷いた。





「・・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・・。」












「えええええええ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~?!」




僕は思わず叫んだ。

そして自分の身に起きている事が理解できずパニックに陥ってしまった。



「なんで?!、どうして?!、何が原因で?!、一体どういう事?!、元に戻れるの?!、それともこのままなの?!、ていうか何で女の子に?!、僕どうすればいいの?!、何をすればいいの?!、ねえ教えてよエレーナさん!?。このままじゃ僕は※#☆▽〆@!!!!!!!」



まるで泉の様に言葉が出てくる。

最後の方は自分でも何を言ってるのか分からないほどだ。



「ちょっ!、おち、落ち着いて。」


「これが落ち着いて居られる事態じゃないのくらいエレーナさんも分かってるでしょ!!、それともエレーナさんにとってはどうでも良いことだから「このままでも良いんじゃない?」とかいって僕を元に戻さないつもりなの?、それは無いよ!!どうにかしてよ!!元に戻してよ!!!!!!!」



自分でもひどく身勝手な事を言ってるのは分かっているが、どうしても自分の気持ちがコントロール出来ない。



「わ、分かったから。何とかするからとにかく落ち着いて。カエトくn・・・ちゃん」


「何でわざわざ言い直したの!!、そのまま“くん”って何で言ってくれないのさ!!、確かに今は女のこだけど中身変わってないから!!、もしかしたら時間が経ったら中身まで変わるのかもしれないけど大丈夫だから、そんなことさせないから。」



「ご、ごめんなさい。私が何とかするから、とにかく落ち着いて」



エレーナさんは必死で僕を落ち着かせようとしてくれた。

だが、僕が落ち着いて、まともに話せるようになったのはずっと後の話でした。




どうも、蛇炉です。



・・・・なんかすみません。



本当に、本筋になかなか入らずにこんなどうでもいい話ばかり・・・


本当にすみません。


次は、次こそは絶対に街に行かせます。


どんなに長くなっても!!


と言うことで、この話を読んでくださってる皆さん。


僕に感想・意見・要望などがありましたら


ドッシドシ!!ください!!


それだけが受験間近の僕の励みになります。


これからもよろしくお願いします。


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