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プロローグ

 ある時は、雨に煙る六月の窓辺。ある時は、落ち葉舞う鮮やかな秋の色。俺は、その曖昧な記憶を思い出していた。


「ちょっと!いい加減決めなさいよ!」

「そう、貴方は今ここで決める義務があるのよ」

「今度は私もエントリーしますから、その時教えて下さい!」

「ゆうひくん!頑張って!」

 あぁ……幸福だ。こんな幸せな時間、この選択の瞬間が永遠と続けばいいのに。

 屋上で膝を抱えて泣いている子。

 体育館で巨大な影に首を絞められている子。

 放送室で硬く、決意を固めている子。

 そして夏、人混みの中、縁日の屋台を駆け抜ける俺達は、きっと何でもできたんだ。

「先輩」と君が言う。「約束だから」と頬に口付けをしてくれる。照れ隠しで夜空を見上げる。花火で照らされた君の横顔は美しく、俺の心を温めてくれる。君が愛してくれたから、俺はあの時立つことができた。


 白いモヤが、すべてを覆い隠すようにかかる。きっと消えてしまう。だが、それで良かったんだ。皆を守れた。俺の帰るべき場所を守れた。

「ありがとう、愛してくれて」

「ありがとう、愛させてくれて」

出来るならもう一度と、祈るように言葉を紡いだ


 朝、聞き慣れた動物たちの鳴き声で、じんわりと意識が戻る。眩しい。カーテンを閉め忘れた。

「あ……ぐ…うぅ……」

嗚咽が漏れてしまうほど涙が溢れる。それは、どうしようもなく会いたくて。どうしようもなく愛おしいからだ。

「君は……君達は誰だ……」

夢ので見たあの場所は、無数に並ぶ部屋があり、どこか心が落ち着くような懐かしさを覚える……。


 涙が、止まらないんだ。

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