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3話 庭園の中で

「この間は災難だったわね、ピティ。」

「お守りすることができず、すみません。」


僕は目を伏せて、謝ることしかできないでいた。

お嬢様は「あなたも騎士隊も無事だったからいいのよ。」と言いながら花に水をくれている。


あの襲撃事件から一週間。

お嬢様は、あの日の翌日から政務を行い、僕も隊長に直談判して訓練の時間を増やしてもらっていた。

(結局、神殿には行けていない。)


そんなわけでお互い忙しかったが、今日は久しぶりに一緒に作業していた。

お嬢様の庭園は珍しい花から、風や病気に効く薬草まで様々なものが並んでいる。


「それにしても、庭園の管理なんて使用人とか、専門の人に頼めばいいじゃないですか。」


本当は一緒に作業できることが嬉しいくせに、つい思ってもいないことを言ってしまう。


「任せてもいいのだけれど、なかなか育てるのが難しいものばかりだし、息抜きにもなるし、自分でやったほうがいいと思って。」


さっき、適当に肥料を撒いていたら「それはこっちの花に。この肥料だと枯れてしまう」と注意を受けた。

確かに、ただ水をあげて、肥料を撒けばいいというものでもないらしい。

その後も、いくつかの植物を剪定し、必要であれば土を変えた。


作業が終わり、休憩する。

今日は僕がお嬢様にお茶を淹れていた。

まあ、これが普通のことだけれど。


「あなた、あの件以来、訓練の時間を増やしているそうじゃない。」

「当たり前のことです。お嬢様をお守りするどころか・・。」


休憩の時間でも僕とお嬢様の話題は襲撃事件のことが中心だった。

お嬢様を守るどころか、自分が隊長に守られているのでは護衛の意味がない。


「犯人たちにあなたが勝てないのも無理はなかったのよ。だって彼らは」


お嬢様が僕を励まそうとしてくれた時、僕の頭は急にズキンと痛んだ。

危うく、持っていたティーポットを落としそうになる。


「うっ・・・。」


こんな高級なものを割ったら、僕が何人いても払い切れるものではないのでとりあえず机に置いた。


頭はまだ痛い。


「ピティ?もしかして」


お嬢様も僕の異変に気づいたのか、立ち上がって僕の方へこようとしていた。

「心配ない」と言いたいのに、頭はどんどんと痛くなる。

何か、何かが急に僕の頭を支配してくる。

森?そこに暮らす人・・・たちなのか?

そもそもこれは記憶?誰の?まさか自分の?

でも、そんな霧深そうな場所なんて行ったことがない。

知らない、見たことも聞いたこともない・・・はずなんだ。


誰かの足音がした。

僕はお嬢様を庇って持っていた短剣を抜く。

あの襲撃事件依頼、何かあっても自分の身くらい守れるようにと隊長が持たせてくれたのだ。

今はお嬢様もいる。もし、危険人物だったら。


「お嬢様、お忙しいところ申し訳ありません。お客さまがいらしているのですが。」


現れたのは、モノクルをかけた執事長だった。

僕は安心したのか、その場にしゃがみ込んでしまった。


「わかったわ。支度をするから、お客さまには先にお茶をお出しして。」

「承知いたしました。」


お嬢様は僕のそばから去ろうとしていた。

それが少し寂しい、とは少し違う感情が僕の中にあるような気がする。


「それと、ピティは体調が悪いようだからもう休ませてあげて」

「・・・承知いたしました。」


今度の執事長は歯切れが悪かった。

そりゃあそうだ。ちょっと体調が悪いくらいで休むなんて、一番若い僕が許されるわけがない。


「ピティ、しっかり休むのよ。」


お嬢様は微笑んで庭園を後にした。

執事長も「部屋で休むように。他のものには言っておく。」と、お嬢様の後をついていった。



その後、僕はフラフラと自分の部屋まで歩き休んでいた。

ベッドに寝転がっているに、体が鉛のように重い。

寝よう、と思っても襲撃事件で戦った少年が頭をよぎる。

それに、先ほどの記憶?も気になって寝付けない。


休んでいるのに、眠れもしないまま夜になっていた。

水を飲みに行こうか迷っているとノックの音がする。


返事をするとまさかの人物だった。



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