社会福祉を主な産業とした資本主義社会は成立可能か
命題「社会福祉を主な産業とした資本主義社会は成立可能か」に対する結論は、「社会福祉を産業化できた場合においてのみ、社会保障費の経済循環が起こり資本主義社会の成立要件を満たすため成立可能」ということである。
産業革命とともに新たな産業がおこり経済が発展することで社会保障費が確保できるようになった。同時に働き生活していくうえで生じた社会問題を解決するために新しい社会保障制度が設定されている。第5次産業革命が社会福祉に起因するものであるならば、新しく設定される社会保障制度にベーシックインカム制度が挙げられるのではなかろうか。
社会保障費の経済波及効果を考える場合、関わる国民は働いていないことを前提とする。「働いていないことを前提」ということは労働生産性がないという意味である。労働生産性がない社会保障費の支給によりGDPが増えるかどうか、経済波及効果があるかどうかが焦点であるが、莫大な初期投資が用意でき成熟した経済を持つ国家なら経済波及効果をうむと推定できるのだ。
社会福祉を産業化することが可能かどうかをマクロ経済学とミクロ経済学の両面から考察できるよう社会保障費の循環を検証する。マクロ経済学の分析対象は社会保障政策である。国の支出である社会保障費を「三面等価の原則」に当てはめ分析する。三面等価の法則の生産・分配・支出のうち分配と支出が拡大するためGDPは増大する。ミクロ経済学の分析対象は病院・施設を企業とみなし病院・施設職員の賃金等を主に分析対象とする。社会保障費は国民の個人消費となる。すべて生活費になると仮定できるためベーシックインカム制度の導入に言及できる可能性がある。
社会福祉を産業化する場合、関わる国民は働いていることを前提とする。社会福祉を産業化することに物価の上昇・下降は直接関係ない。なぜなら食物や製品など物を生産しないため、生産品がなく付加価値がつけられないからだ。また、福祉分野は利益を追求することができないとされてきた、その理由は前述と同じく付加価値がつけられないことにあるが、近年の状況ではそのようなことはないと考えられる。
社会福祉を産業化するための妨げになる最も大きな出来事が戦争である。インフラが破壊され、労働力が奪われることでゼロからの立て直しが必要になるからだ。戦費に国富が使われ社会保障は後に回されるだろう。また、最初に産業革命が起こり資本主義経済を発展させた先進国は、景気変動の波を感知できず不況下において海外へ労働力と資源を求めた。これが植民地のはじまりである。もし、この時に植民地の国民の生活と教育の向上をはかったならば、購買力のある貿易相手国となったのではないだろうか。植民地の奪い合いが大戦にまで発展していったのだが、結論からいうと以下のようになる。
戦争は国が福祉国家になるための最大の妨げになる。そして、社会保障が充実した国家において、不況下でも国内経済が循環するため戦争を起こす必要がなくなる。
病院・施設の経営について、利益を得るためには収入面である診療報酬・介護報酬と補助金、支出面では病院・施設職員の賃金や設備投資などが挙げられる。
事例1:世代で所有するサービス付き高齢者向け住宅の検証。
事例2:要介護度1から3に移行するまでの間、つまり施設入所が決まるまでの数か月から1年間要介護者と家族が仮住まいできるバリアフリーの賃貸住宅を整備する需要の検証。
事例3:要介護者の家族を介護者として報酬を払う制度の検証。
介護は突然はじまるため、準備が不十分になりがちである。とくに資金面で不足が生じるだろう。解決策としては、要介護者の死亡保険を前倒しして受け取り要介護者死亡のおりに保険金を受け取らないとする。近年の状況では「要介護度3」で施設への入所が促される。この時点で生命保険の保険金を受け取るとしたらいったいいくらなのうだろうか。高齢になればなるほど死亡保険の金額は少なくなっていくからだ。
事例4:中古住宅を購入しバリアフリーに改築し近所の認知症または寝たきりの要介護者の入浴や食事の場所を提供する場合のマーケティングの検証。
ディサービスと異なる点は、近くに顔見知りの人たちが利用できる一軒家があるということだ。車いすで移動可能、車庫があれば介護者の自家用車で送迎が可能になる。要介護者の家族を介護者として雇用する制度と併用すれば孤立を免れる。