探偵は寝言で推理する
「第6回小説家になろうラジオ大賞」に応募するために1000文字以下で書いたなんちゃってミステリです。
放課後の部室。
部長の東先輩が静かに本の頁を捲る。
その物憂げな横顔をうっとりと盗み見していると、扉が控えめにノックされた。
おずおずと顔を覗かせたのは一人の女生徒。一ヵ月ぶりの依頼人だ!
「ようこそ探偵部へ! 失せ物人探し殺人事件まで何でもござれ! ささ、こちらへどうぞ〜!」
女生徒を先輩の正面に座らせ、私は手帳を開きペンを構える。先輩がコホンと一つ咳払い。
「部長で探偵の東です。こちらは副部長で助手の西君」
ちなみに他に部員はいない。
「それでご依頼内容は」
「実は大切な手紙を失くしてしまい……」
ある人に宛てた手紙。今朝、登校直後は確かに鞄の中にあったのだそうだ。取り出して見たので間違いない。ところがいつの間にか失くなっていた。心当たりを探したが見付からない。
人目に触れる前に手紙を探し出して欲しい、それが彼女の依頼だった。
「消えた手紙、か」
話を聞き終えた次の瞬間。
ゴン!と派手な音を立てて東先輩が机に突っ伏した。
「きたーッ! あ、寝てるだけなのでご心配なく。ウチの探偵は寝言で推理するのです!」
唖然とする女生徒。私は大興奮で東先輩の寝顔を見つめる。寝顔まで格好良いなぁなんて私が考えていることに、鈍い先輩は気付いていない。
そんな先輩の口からむにゃむにゃと寝言が紡がれる。
「……手紙…宛名…靴箱に……」
ハッと閃きが走った。
私はペンを置き、女生徒に向き直る。
「謎は解けました。手紙はズバリ、宛名の人物が持っています」
「え?」
「登校直後、あなたは昇降口で手紙を取り出した。お相手の靴箱に入れるために。でも勇気がなくて入れなかった。その時に手紙を落としたのです。それを偶然拾った人が入れたんですよ、宛名を見て、お相手の靴箱に。うまくいくといいですね、恋文での告白」
女生徒は頬を染めて頷いた。
東先輩が目覚めたのは女生徒が去って間もなくのこと。
「今回もお見事な推理でしたね!」
盛大な拍手を送るが先輩は浮かない顔だ。
「僕は推理なんてしてない。したのは君だ……」
「私もしてませんよ。先輩の寝言を聞いて思い出しただけです。今朝、昇降口で拾った手紙を宛名の人の靴箱に入れたことを」
「……あれは君の手紙じゃなかったのか。僕はてっきり……」
「あれ? 見てたんですか?」
先輩がはぁと溜息をつく。
「僕は君が思ってるよりも、君のことを見てる」
先輩の目元がほんのり染まる。つられて私も赤くなる。
どうやら鈍いのは先輩だけではなかったみたい、です。
お読み頂きありがとうございました!




