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「初めまして」
考え事をしていると目の前に女性が現れた。花梨の前に腰掛ける。
「救世主サポーター担当のホウヤ・ミカです。ミカでいいわ」
「あ、っと、初めまして、鈴木花梨です」
とりあえず聞きたいことしかないが、社会人として挨拶は大事である。
花梨はお辞儀を返した。
「花梨ね、よろしく。じゃあ早速、この国について説明するけど」
待ってました、花梨は椅子に座り直す。
ようやく自分の置かれている状況がわかる。
「まず、ここは『ソンジュ』という国。そしてこの国では定期的に他の世界に住む人、つまりこの世界を救う救世主を呼び寄せているの。つまりあなたは選ばれた救世主なのよ」
ミカはなんてことないように説明する。
定期的に他の世界に住む人を呼び寄せているーー。花梨は頭の中で言葉を繰り返す。
そして、おもむろに手をあげる。一旦ストップだ。
「ま、待ってください、ここは本当に異世界なんですか?」
「そうね、ここはあなたが元いた世界じゃないわ」
「そんな、どうにかして帰れないですか?」
このあと華ミュの遠征も予定しているし、華咲伝説のゲームイベントも楽しみにしていたのに。
「帰る方法は、あるにはあるわ」
「そうなんですか!?じゃあ早速……」
「『真実の愛』」
ミカはそこで言葉を切り上げる。
『真実の愛』どこかで聞いた言葉である。どこで聞いたんだっけ……。
「あ!あの森にいた人!」
ーー元の世界に戻るためには真実の愛を見つけることよ。
先ほど、森の中で会った女性が言っていた。あの人はもしかして元の世界に戻ったのだろうか。