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「帰られてしまった」
「あの救世主様の職業は?」
「役者だったらしいぞ」
「面倒なことにならなければいいが」
追いかけて来た男性たちは膝に手をついて呼吸をしながら、会話をしている。
彼らは首から社員証のようなネックストラップを下げており、なんとなくどこかの職員の人らしく見える。
「あの」
花梨が声をかけると、男性たちは一斉に振り向いた。
「は、もしかして救世主様では!?」
「手続きがまた増えた」
「とりあえず連れていくぞ」
「あ、こちらです、どうぞ」
「え、ちょっと」
あれよあれよと花梨は馬車に押し込められ、その場をあとにした。
—
馬車を降りると、そこには知らない街が広がっていた。
「うっわ、でっか」
石造の立派な建物はゲームの中のギルドのような風貌、そして周りの景色はヨーロッパの街並みのようである。
RPGに出てきそうな景色ね、花梨は建物の壁を触りながら思う。
「こっちです」
花梨は言われた方向に進む。至る所に矢印と看板が出ており、さながら役所のようだった。
「こちらで座って待っててください」
「あ、はい」
どうやら目当ての場所についたようだ。花梨は窓口の前の椅子に座る。
頭上の看板には「救世主対応課」と書かれている。
救世主対応課……?そういえばさっきの人たちも私のこと救世主って言ってたな。