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結論から言おう、今回の華ミュも最高だった。
リリッシュが泣きながら笑顔を見せ「仲間がいてくれたからだ」と言う場面はゲームのストーリー中でも大号泣した花梨だが、今回も例に漏れず泣いた。
リリッシュが幸せなら、それでいい。推しが笑顔でいればそれでよし。
花梨と奏はお互いに頷き合い、熱い握手を交わした。
「これからも一生懸命推しのために働こうな」
「もちろんだ、次の華ミュも一緒に行こうな」
帰路につきながら、花梨は今日の感想を奏に投げかける。
「しかしさ、今回の華ミュのリリッシュ様、圧倒的受けだったわ」
「わからなくもないが、やっぱりリリッシュは攻め」
「えー、そこの解釈やっぱりかわらない?」
奏は高校生の頃からリリッシュ左で固定派だ。
高校生の頃は何度も奏とカップリング戦争をした花梨だが、2人とも社会に出て少し丸くなったのだ。
さて、その日、その時、花梨はかなり浮かれていた。
ミュージカルの公開と合わせて、ゲームの方でもイベントが開催されるし、実はもう1枚チケットを取ってるため遠征してもう一度今回の公演を見れるし、引いたトレカもシークレットのリリッシュが出たし、端的に言って、幸せを感じていたのだ。
「あー、本当、今最高に幸せすぎて死にそう」
なんて帰り道に呟くほど。
だからちょっと周りの状況が見えていなかった。
具体的に言うと、そこに階段があることが見えていなかったのだ。
「花梨!危ない!」
そう言われたときにはすでに遅くて。
花梨は足を踏み外した。