Vol.11(ハム勇)
東暦20××年
人間たちは魔王率いる魔物と敵対していた。
長年に続く戦いは多くの血を流した。
人間でこの戦いが始まった理由覚えているものは居なくなった。
それほど長い時間が経過した。
不意にこの戦いに終止符を打とうとする人間が現れた。
その者は寡黙の勇者と呼ばれた。
そう呼ばれた理由は人前では一切言葉を発しなかったからだ。
国の民たちが魔王城に向け出発する勇者たちを見送る。
皆が手を振り、歓声を上げる。
「頑張れよ‼︎」
「絶対魔王を倒すんだぞ‼︎」
勇者の仲間はそれに返事を返す。
「行ってくる‼︎」
「この戦いに終止符を打つんだ‼︎」
しかし、勇者は喋らない。
ただ手を振りかえすだけだ。
女子供はそれを見て顔を赤らめる。
「やっぱり寡黙の勇者様はかっこいいね。」
「そうね。でも、なんで話さないんだろう?」
「さぁ?でも、喋らないからこそかっこいいなって思うよ。」
「まぁ、そうだね。」
国の民たちは知らない。
勇者がなぜ喋らないのかを。
いや、国の民たちの前で喋らないのかを。
大きな門をくぐり、人気がなくなる一本道。
勇者一行は、魔王城に向かって進んでいく。
「はぁぁ。疲れたぁぅ。」
勇者である。
「やっぱぁ、おおぜぇいに見られるぅのはぁ、緊張するぅねぇ。」
勇者である。
これが勇者が国の民の前で喋らない理由である。
この勇者はハムボなのだ。