雨宿り
「ハーヴスまでどのくらいで行けるんだ?」
「そうだな。ソーミャさんがくれた地図によると馬でも3日はかかんな。」
馬に乗りながら地図を開いたトヴォが頭をひねった。
「なんせ俺たちはあの小せえ村からほとんど出たことねーからな。なんとも言えねーよ。」
「まあ・・・そうだな。」
馬に付いたポーチに腕を伸ばし、リンゴを一つ取り出したノルが、自身の服でリンゴを拭い一齧りする。
しゃく、といい音を鳴らした。
「おい、レーカ。」
「なによ。」
「そのハーヴスに行ったら、ほかの精霊がいんだろ。どんな力持ってんだ。」
ノルの胸から飛び出た小さな光が、トヴォの周りを浮遊する。
「ちゃんと説明しろよ。」
「・・・まあ、アンタと気が合うんじゃない?」
「はあ?なんだよそれ。真面目に答えろよ。」
「い、や、よ!頼み方ってものがあるでしょ!」
いーっと歯をむき出し、トヴォに威嚇をする小さな精霊。
レーカがいうのも無理はない。
トヴォの口の悪さは、スコーグにとどまらず、ステーンにまで広まっている。
過去に一度、ノルとトヴォが授業をこっそり抜け出し、ステーンに遊びに行ったとき、その口の悪さが災いし、ステーンの悪ガキ連中に絡まれた。
「ごめんな、レーカ。トヴォ、悪気があるわけじゃないんだよ。トヴォの口の悪さをレーカの癒しで直してやってよ。」
「無理ね。お母さんのお腹からやり直しても無理だと思うわ!」
「俺には母親なんていねーからそれも無理だな。」
馬が進むにつれ、空が暗くなっていく。
スン、と鼻を鳴らしたノル。
「トヴォ!湿気が増えた!雨が降るぞ!」
「よし、デカい木を探せ。雨が止むまで野宿だ。」
大きい木の下にテントを張り、雨避けを作る。
木を拾い集め、火を起こした。
「雨、すぐに止むかな。」
空を見上げながら、鍋をかき回す。
鍋の中にはソーミャが作ったであろう、スープ。
「おいノル、食材は節約しろよ。どんくらいでハーヴスに着けるかわかったもんじゃねーからな。」
「うん、わかってる。」
二人分の食材を出し、ふと胸に手を当てたノル。
「レーカは?食べなくて平気なの?」
その呼びかけに応じるように、ノルの胸から飛び出したレーカ。
「私たち精霊は食事をしなくても平気よ。でも、精霊の中には人間の食べるものを、好んで食べる子もいるわ。」
「へえ、じゃあレーカも食べようよ。」
「いいわ。食事が限られているんでしょ?二人で食べなさいよ。」
「そうだノル。そんな小せえ精霊、食ったところで変わんねーだろ。」
馬を木の下に誘導させたトヴォが横目でレーカを見た。
「ほんっとむかつく!そんな言い方しなくてもいいじゃん!」
「そうだよトヴォ。レーカは村の人を救ってくれたんだから、そんな言い方しなくてもいいだろ。」
眉を下げ、レーカをたてるノルに対して、更に眉を顰めたトヴォ。
「大体、お前んところの精霊が村を守ってりゃ先生だって、村の人だって悪魔族にやられずに済んだんだ!テメーらばっかり先に隠れるようなことしたから、あの悪魔族が村を滅茶苦茶にしたんだ!元凶はテメーらだろが!」
ずっとため込んでいた感情が爆発したかのような叫びだった。
それを聞いたノルも、目を伏せてしまう。
心のどこかで思っていたからー。




