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アンデ  作者: 木村
4/7

出会い

4.出会い



「はあ…はあ…。」


走っても走っても追いつけない。

空を飛ぶ小さな光は、まるでトヴォを導くかのように道なき道を進む。


どれくらい走っただろうか。

上がる心拍数に耐えながら後を追った。


草木をかき分け、森を抜けた。

よく知っている村がやけに明るい。


木造の建物が燃え、倒壊する音。

村の人間の悲鳴。


「何だ…これ…。」


一歩、一歩と村に近づく。


「トヴォ!」


名前を呼ばれたトヴォが振り返ると、身体中に火傷を負ったミリアが、身体を引きずりながら駆け寄った。


「何が、あったんだ。ミリア…。」

「わからない。けど、先生が…村の外に逃げてって…。」


ミリアの身体を支えながら、今起きている状況を整理しようと必死に思考を巡らせる。


「ミリア。俺が先生を、皆を探してくっから。ここにいろ。」

「危ないよ、トヴォ!」

「歩けるなら、ステーンのソーミャさんのところまで行け!ノルがそこに居る!」

「トヴォ!」


トヴォを呼ぶミリアを置いて、学校まで走った―。






「トヴォ?」


ソーミャの店でアップルパイをご馳走になったノルは、馬留へ。

トヴォの芦毛、ヴィクトの手綱が外れたままだ。


「ヴィクト、トヴォ知らない?」


芦毛に語り掛けても鼻を鳴らすだけ。

ソーミャから渡された荷物を二頭の馬に括り付け、栗毛に跨る。


(荷物を学校に運んでからトヴォを探せばいっか。)


芦毛の手綱を持ち、栗毛の腹を鐙で打ってスコーグの村まで進む―。




スコーグに近づくにつれ、空気が煙たく感じた。

何かが燃えるような、そんな空気。


栗毛の腹を鐙で蹴って速度を出す。


「何で…。」


村の入り口に差し掛かると、村が崩壊していた。

民家は燃え尽き、既に灰になっている。


灰の傍には人だった物のような、焼け焦げた何かが転がっている。


「うぅ…。」


腹の底から上がってくる、先ほど食べたアップルパイ。


(とにかく今は、学校の皆だ。)


口元を袖で拭って学校のある北を目指す。


身寄りのないノルにとって、ラーダは親そのものだった。

倒壊した民家を避けながら馬を走らせた―。



「先生…、皆…!」


幸い、学校はそれほど倒壊していない。

しかし、今も尚消えぬ炎が学校を苦しめ続けていた。


馬から飛び降り、扉を開けると、一人の子供が近づいてきた。


「よかった…、まだ生きて…。」


膝をつき、抱きしめた瞬間、肩に鈍い痛みが走る。


「痛っ…え?」


反射的に子供を突き放し、肩に手を当てる。

自身の手に滲む血を視界に入れた瞬間、じとっと冷や汗を額に感じた。



恐る恐る顔を上げ、子供の顔を見る。

全身に火傷を負い、絶対に生きていないであろう姿で、ノルの前に立っている。


「あれー?生き残り?」


低い声が耳に入り、振り返った。


灰色に近い肌の色が夕日に照らされ、金色の瞳を妖しく光らせたその人物。


「ノ…ル…。」


弱弱しくノルの名前を呼んだのは、その人物に頭を掴まれたトヴォだった。


「トヴォ!」

「ノル…逃げ…ろ…。」


無意識に落ちていた包丁を掴んで、その人物に向ける。


「んー?刃物?そんなんじゃ私は殺せないよ?」

「トヴォを、放せ…!」

「面倒だから片付けといて」


誰かに、そう語り掛けるようにした奴が、トヴォを地面に放り投げた。

背後に気配を感じ、振り返ったノルの周りには、全身に火傷を負ったかつての家族たち。


「皆に、何をしたんだ!」

「何をしたって、私のおもちゃにしたんだよ。私の虫を身体にいれれば、死体でも操れるからね。」

「死体っ…!」


皆はもう死んでいるんだ、と現実を突きつけられた感覚。


「ここの精霊はもう隠れっちゃってるみたいだ。じゃあね、少年。」


壊れた窓から飛び出すように姿を消した奴を追うことも出来ず、その場に立ち尽くしてしまった。

それでも止まることのない子供たちの歩み。


「…ごめん、ごめんね。皆。ごめん…。」


手に持った包丁を、更に握りしめ、歩み寄る子供たちの頭部に突き刺していく。


「アル、シェル、ライリ、ノクト…。」


一人ひとり、名前を呼びながら横に並べていく。


「ノル…。」

「!」


瓦礫の下から聞き覚えのある声がした。

すぐさま瓦礫に近づくと、隙間からラーダの姿が見えた。


「先生!今これ…退かすからっ…!」

「ノル、手を…握ってくれませんか…。」

「先生!まだ諦めちゃダメだ!先生!」


瓦礫の隙間から出た手を握り、必死に呼びかける。


「ノル、ああ…。優しい私の子。私の…可愛い、宝。」

「先生?」


握られていた手の力が、ゆっくりと抜けていく。


「先生…、先生…?」


手を握り返しても、反応がない。


「ノル…。」

「トヴォ!」


ラーダの手をゆっくり床に置いて、トヴォに駆け寄ったノル。


「トヴォ、大丈夫!?」

「ゴホッ、ああ。何とか…。」

「どうしよう、とりあえずステーンに!」

「そんな、悠長なことっ…言ってらんねーかも、な…。」


トヴォの身体を起こすと、操られた村人がゆっくり近づいてくる。


「ノル、行けよ。」

「え、嫌だ!」

「このままじゃ共倒れだ…!」

「嫌だ!トヴォまで、失いたくない…!」

「自分の命まで失ってどうする!ガキかテメーは!」

「ガキだ!ガキだから!…死ぬならこのまま、一緒に死なせてくれ…。」


トヴォの服を掴んで震えたノルに対し、ため息を吐いた。


襲い来る村人の攻撃を避けることも出来ず、ぎゅっと目を瞑った―。






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