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アンデ  作者: 木村
3/7

ステーン

3.ステーン



「ちょっと街中、見ながら行こうよ。」


馬から降りて手綱を馬留に括る。

街に向かう足取りが軽いノルに対して、面倒くさそうに後を歩くトヴォ。


スコーグよりも、人々の賑わいを見せる街、ステーン。


港に面しているステーンとは違い、森に囲まれたスコーグは完全に自給自足なのだ。

二カ月に一度、隣町から食料を買っているラーダの学校。


海で捕れた魚や加工菓子は、全てステーンから購入している。


レンガ造りの街並みを先行して歩くノルは、数多にある屋台に目移りしているようだ。


「トヴォ!串焼き!」

「…。」


串焼きを両手に持って目の前に現れるノル。

勢いよく串焼きを食べつくした。


「トヴォ!見て見て!…じゃーん!」

「…。」


熊のような顔に鹿の角が生えた面をつけたノルが飛ぼの目の前に現れた。


「ノル。」

「ん?トヴォも食べる?」

「ノル、俺たちは遊びに来たワケじゃねーだろ。」

「トヴォ、知らないのか?」

「ああ?」


面を外して、トヴォに見せるように目の前に面を出した。


見れば見るほど気味が悪い。

というか、面というものは子供用ではないのか。

こんな君が悪い面、誰が買うのだろうか。


否、ノルは買っている。

こんなものを欲しがるなんて、ノルはやはりガキなんだと改めて思ったトヴォ。


「これは森の精霊だよ。」

「森の精霊?」

「うん、学校の本で見たことあるんだ。」

「相変わらず精霊のことになると勉強熱心だな。」


勉強熱心。

トヴォからノルに送る最高の皮肉だ。


難しいことを嫌うノルは、昔からトヴォとの学力勝負で勝った例がないのだ。

しかしその明るい性格から友人をつくることは誰よりも得意とした。


「ソーミャおばさん!」


ノルの無駄遣いに付き合っているといつの間にかソーミャの店の前にたどり着いてしまった。

外で売り子をしていたソーミャが二人に気づいて手を振った。


「いらっしゃい。ごめんね。来てもらうことになっちゃって。」

「気にしないで、ステーンに来られたし。」

「トヴォもありがとうね。」


ソーミャが二人の頭を撫でると、ノルは笑い、トヴォはその手を振り払った。


「いいよ、暇だったし。」


ぶっきらぼうに応えるトヴォに対して、微笑むソーミャが、思い出したかのように拳で掌を叩いた。


「そうだ。二人が来るってラーダ先生から聞いていたから、アップルパイを焼いたんだ。食べていくだろう?」


トヴォが断ろうと口を開くと、遮るように目を輝かせたノルが目の前に割って入る。


「アップルパイ!食べる食べる!」

「ノル、さっき散々食ったろ。」

「ソーミャおばさんのアップルパイは絶品だから、食べなきゃ損だよ。」

「…はあ。」


ノルに押され、店の中に入る。

焼きたてのアップルパイを目の前に出し、当分に切り分け、皿に盛り付けていく。


ノルはフォークを持ち、待ちきれないといった様子だ。


「はい、たくさん召し上がれ。」

「いただきます!」

「いただきます。」


じゅるりと涎を服の袖で拭ったノルが、アップルパイにがっついた。

その様子を横目で見ながら紅茶を啜るトヴォ。


「おばさん、荷物はどこ?」

「店の裏さ。いつでも出られるように準備してあるよ。」

「じゃあ早く行こう。ノル。」

「ちょっとまっふぇ、たへおわっふぇない。」


口にたくさんアップルパイを詰めたノルが、トヴォを制止する。

はあ、と短くため息を漏らしたトヴォは、再び紅茶を啜った。


「荷物と馬を繋いでくっから、お前はここにいろ。」

「んー!ありふぁとう!」


ノルをソーミャの店に残して一人馬留に向かう。

この街は陽が落ちてきているというのに賑わいが色褪せない。


街の子供たちが、先ほどノルの付けていた面を付け、走り騒いでいる。


(あんな気味が悪い面を買う子供もいんだな。)


ふと、ノルの言葉が頭を過った。


「村の皆も学校の皆も、女神様への感謝を忘れちゃってるだろ?」


忘れているわけではない。

例え、女神様への祈りがなくとも。

人々はこうして、女神様の偉業を語り継いでいくのだ。


何か、別の形でも。

形を残して。


手綱を引こうと、馬留から外した瞬間、白い光のようなものがトヴォの目の前を横切った。


「雪…。」


にしては大きいか。

普段なら気にもかけないだろう。


森の方へ消えていく光を追いかけるべく、自然と足が動いた―。




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