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戦国に咲く百合は夢幻の如く  作者: 十鳥ミミ
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どうして?

疲れた…、でも、物わかりの悪い私に何度も繰り返し説明をしてくれたアヤメさんはもっと疲れたと思う

あ、アヤメさんってのは『朽木アヤメ』さん、姫様である明日香さんに仕える侍女兼護衛役みたいな立場らしい

私への説明が終わってからも、私の向かいに正座したまま、難しい顔して考え中


とりあえず私なりに聞いたことをまとめると、たぶんこういう事

この世界の伊織明日香さんは明日、隣国と国の命運をかけた重要な会談を控えていた、でもその交渉は命がけ、結果次第ではその場で斬り捨て、皆殺しの可能性があった

それで念のため保険を掛けた、今私達がいるココ、魔力が充満した祭壇で儀式を行った

儀式の名前は、『反魂の輪廻』

なんでも術者が命を落とした場合、儀式を行った時間、つまりさっきの時間に戻ってくるというもの、それなら万が一があっても戻ってきて、その失敗を元に対策を立て直せると考えたらしい

でも儀式が終わり、倒れこんだ私(明日香)が目を覚ますと中身は私(明日菜)だった、えーいややこしい!


その原因なんだが、術式の条件を元にアヤメさんが考えられるのは一つだけ

明日の会談で、明日香さんが失敗し殺害される、と同時刻、偶然にも別の場所で明日香さんと同質の魂を持った私、明日菜が死亡 

その結果、元の肉体に帰るべき魂が入れ替わった、ってのがアヤメさんの推測で、私たちの名前が似てるとか関係ないらしい

私が別の世界の住人と断言するのは、魂の質ってのは世界に一つだけのオンリーワン、同質の魂ってのは別世界にしか存在しない、のがこの世界のルールらしい


ふむふむ——

ってそれよりも、魔力?祭壇?術、魔法、魂?マテマテマテ!私死んだのかよ? 

よくある事なのかどうかは知らないが、剣と魔法の世界?に転生したっぽい、それで死因は授業中の居眠りに依る転落死?嫌だ、ちょ待てよ!

ツッコミどころは限りなくあるが、今問題なのはカタカナ、漢字交じりの言葉が異世界なのに通じるってことだろ?そんなご都合主義でいいのか?いやそれも違う


「明日菜様——今考えるべき問題が分かってますか?」

考え込んでた思考がまとまったのか、私の心を読んだのか、アヤメさんが問いかける


「え、え~と、そのつまり、アレがこうだから、このままだとそうなって、そうするとあーなるから、今は…、あ~分かりません!」


ハナから期待してなかったのか、平然と会話を進めるアヤメさん


「いいですか?問題は多数ありますが今できる事は限られています、やるべき優先順位は姫様と明日菜様の魂を元に戻す事ですが、今は不可能です」

「この術には貴重な媒体が必要です、しかし手元には残ってません、一回につき媒体が一つ消費されます、また先ほど言ったように、この術を事前に行った上で姫様と明日菜様が同時刻に死ななければいけません」

「ですが、異世界、明日菜さんの世界にいるであろう姫様と連絡を取りあう(すべ)がありません、この術を用いる以外の方法があるのかもしれませんが私は知りません、よって今は後回しです」


——お、おう もちろん私も同じこと考えてたよ、——ゴメン嘘です、とりあえずカクカクとうなずく


「次に、優先すべきは姫様の安否ですが、これに関しては明日菜様が居た世界の話を聞く限り問題ありません、明日、万が一にも姫様に限って、寝起きにひっくり返って、頭ぶつけて死ぬなんてありえませんからね」


アッハッハ、誰だよそんな間抜けな死に方するやつ、私だよ…、


それより私の体に乗り移ったであろう明日香さんが私の世界に適応できるのか?って問題はあるんだけど

まぁ時間がリンクしてるとしたら、夜の10時頃?確か風呂あがってベッドの上でソシャゲしてた頃だったかな、それなら命を落とす心配はないか、でも日常生活とか、学校とか、SNSの使いこなしとか

はたまた女子コミュニティの輪に入れなくてイジメとか、政治体制への不満とか、ガチャ運の無さとか、交通ルールを守りましょうとか、私の世界にも危険はあるぞ?

何より、事情を知って手助けしてくれるアヤメさんみたいな人、説明キャラが居ないんじゃどうやって?と、あれこれ不安はある

そんな私の顔色から不安を悟ったのか


「——大丈夫です、姫様ならきっと…」


私にではなく、自身に言い聞かすよう呟くアヤメさん


「それよりも、今考慮すべきは明日菜さん、あなたです、あなたの身の上が一番危険なのです、分かってますか?」

「本来であれば、最悪反魂の術で戻った姫様の記憶を元に、明日の対策ができたはずでした、しかしそれも不可能になりました、もちろん明日菜さんが明日どこにも行かない、何もしないなら明日は死ぬ事は無いでしょう」

「しかしその場合、私たちの国が、姫様の戻るべき場所が、多くの民の命が失われることになるでしょう、明日の会談は、我が国にとっての命運を左右しかねない重要な会議なのです」


「——わたす?私がやらなきゃいけないの?誰か代役は居ないの、私が姫さんなら王様が居るんでしょ?王子様は?その人イケメン?なんでよ!?」


「そうですね、これもお話しておきましょう、我が国の重要機密ですが仕方ありません、その上で明日をどう乗り切るか、それに絞って対策を立てましょう」


またまた説明が始まった…もう無理、頭がパンクしそうです

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