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悪役令嬢の特訓 頑張ります!

私が意識を失い 高熱を出した事を 好機と判断した陛下と宰相により。母と兄には『シレン ターコイズ令嬢は病死』と伝えられた。伝染病の疑いがある為 世間に混乱を招く恐れが有るとの理由から伏せておく事 直ぐに火葬された事になった。この件は他言無用とされ 話をした場合は 断頭台だと 加えて伝えられたらしい。

『何! 勝手に殺しとんねん。。誰が伝染病やねん。結局 母にも兄にも会えずだったなぁー』


父『プルームアゲート ターコイズ』子爵は 伝染病に感染。命は取り留めたが しばらくは隔離の必要があるとの事。病気による後遺症が酷いとの事から 塔での隔離が決められた。その間 兄がターコイズ子爵当主代理となった。

陛下と宰相から ご提案頂いたお話通りで 嘘が無かった事は良かった。陛下と宰相は一応 信頼出来ると感じた。『でも。。あれ? 引き受けるって言った?』


母と兄は 泣き悲しんでくれたそうで。。とても胸が痛む。。


だが 私のお通夜もお葬式も 寝込んでいる間に終わっていた。

今の話は全て マリーから聞いた。


結局 私には選択権など 最初から無く。退路も絶たれ。目覚め時には『ヴィラン カシェット令嬢』しか残されていなかった。


そうして 私は 決心も曖昧なまま カシェット宰相公爵家長女『ヴィラン カシェット』と言う 王族に次ぐ地位の令嬢になったのである。『もう 泣いても仕方が無い。ならば 全力で頑張ろう。兄をターコイズ子爵家当主にしてやるさ』

吹っ切れた訳では無かったが それからの私には『やるべき訓練』が多過ぎた。


騎士団では 戦闘訓練を学ぶ。

他の騎士では無く 騎士団長直々のスパルタ指導。

「ヴィラン様 剣を打ち払われた後 次の動作が遅い」

「ヴィラン様は 馬の心をよく捉えておいでです。その調子です」


カシェット夫人。つまり『お母様』には 貴族としての作法・所作を学ぶ。驚くべき事に

体術・暗殺術も お母様から学ぶ。

ちなみに カシェット家には 2歳下の男の子が居た! 弟である。


「いいですか?足音を立てない。気配を消す。つまり在るのに存在しない。です」

「存在を消すのですか?」

「そうではありません。いいですか? 人はそこに居るだけで 主張しているのです。ですが道端の石はそこに居るのに人は気にしません。在るのに存在しないのです。それこそが 暗殺術の奥義です。暗殺術に力は必要ではありません。如何に気付かれず懐に入るか。ですよ」


マリーから 引き続き 一般教養を学ぶ。学園で『ローズストーン』を取得しないといけない。

「お嬢様は 良くやっておいでです」

マリーは他の先生と違って 少し甘やかしてくれる。

私は 辛くて マリーにはよく泣きついた。


カシェット家当主。つまり『お父様』には 医術。怪我をした時の対処・治療方法・人体の急所。要は 自分の対処と 相手を殺さずに制御する方法を学ぶ。

「人と相対した時 人の身体は関節で動かします。つまり関節の位置を知り 人体の構造を知る事。医術は 戦いにも非常に有利です。呼吸は鼻と口。手で物を掴む。足で立つ。当たり前の事ですが 手首を壊せば 物を掴めても動かせません。膝を壊せば立つのは難しい。目が見えなくなったとしても 耳 鼻で気配を捉える事は出来ますが 鼻口を塞がれれば 息は出来ません」

「そして 人体の構造を熟知すれば 自身の怪我の対処。相手への攻撃部位がわかってきますよ」


お父様からは もう1つ。家屋への侵入方法も学ぶ。

「まずは 侵入先の下調べが大事です。建物の構造。警備の位置。見回り時間など。扉の前に到着するまでの調査がとても重要です。鍵開けなどは 訓練すれば誰でも可能です」


何故か? 毒物に関して 王妃様から学ぶ。

「あらー。ヴィランちゃん。わかっていたけど 会えて嬉しい」

毎回 抱き締められる。王妃様は温かい。母と会えない私にとって 母の存在を感じさせてくれる人。

「毒物はね。匂いでわかる様にならないと。盛られる前に気付く。後聞いてると思うけど 少し飲んだりして大抵の毒物では死なない様にしないと。ねっ!そうすると 自然と身体が強化されて 身体能力が向上するのよ」


私の毎日は 朝早くから 夜遅くまで 先生方からの 直接の指導・訓練。そして自分で行う反復復習。

とても 大変で辛い訓練ではあるが 出来た時の喜びも大きく またどの先生方も厳しくも優しくて一緒に喜んでくれた。


その間は 王太子殿下とも 何度か出会う事もあったが その時は ひたすらに溺弱で貧弱な令嬢を装った。万が一にも 気付かれ無い様 配慮した。


後 気になっている事があったので この機会にと思い 王妃様に聞いてみた事がある。

「王妃様は 初代 2代目の ヴィラン カシェット様をご存知でしょうか」


「存じてますよ。特に2代目はね。よーく知っているわ」王妃様が ニヤニヤしながら言う。

「皆様。この様な訓練を成さり 頑張られたのですか?」

「そうですね。でも 初代様 2代目様は あなたの礎よ。全てはあなたの時なの。あなたが1番大変だと思います。前にも伝えた様に 私はいつだって あなたの味方よ。困った事があったら いつでも頼ってね。ヴィランちゃん」また抱き締めてくれる。


「ありがとうございます。ちなみに 私の礎とはどう言った意味でしょうか?」


「今は言えません。ですが いずれ分かる時が来ますよ。あなたなら!だから焦ってはいけません。まず 横柄な悪態で 皆から畏怖されなさい。『ローズストーン』を必ず取得して『デュアローズ』となりなさい。ただし運動音痴も強くアピールよ。陰口叩かれたって 挫けないの。孤高よ。孤高! 取り巻きが沢山居たって 心底あなたに付き従がっている者なんて 1人も居ないわ。孤独よ。孤独。それでも頑張るのよ!それが 悪役令嬢なの。ですが 最終的にはきっと良い事がありますからね」王妃様が いつも以上に熱を帯びて 熱弁して下さった。


「じゃあ 逆に私から 質問ね?」王妃様が優しく 慈しむ様な表情で言った。

「なんでしょうか?」

「ヴィランちゃん。本当のお名前を教えて頂けるかしら?」


「うぐっ。えーと。その。あの」私は返答に困る。『言って良いものか?』

それに 思い出して 涙が出そうになる。唇を噛み締めて堪える。


王妃様は 私の固い表情を見て「私とヴィランちゃんだけの秘密よ。それに陛下と宰相は とっくに知っているのでしょう。私だけ知らないのはね?」

どこまでも優しく言って下さる。


我慢していたが ちょっとだけ涙が出て来た。

「えーっと。。『シレン』『シレン ターコイズ』です。あっ! あれ? でした?」

私は 慌てて過去形に言い直す「『シレン ターコイズ』でした」

大粒の涙が出て来た。本当の家族との絆。母と兄とは会っていなかった事。様々な思いが溢れて来る。涙が止まらない。嗚咽が出る。

「うぐっ。うぐっ」


王妃様が 更に温かく抱き締めて下さる。

「そうなのね。『シレン』シレンちゃんなのね。頑張ったわね。辛かったわね。私の息子の為 この国の為とは言え 家族を捨て名前を捨てさせたのよね。本当にごめんなさい。あなただけにこの様な事を押し付けて!本当にごめんなさいね」

王妃様は 始めはゆっくりと でも最後の方は涙を流しながらおっしゃた。

更に 私に頭を下げてくれた。

私は しばらく王妃様に抱き付いたまま 涙が止まら無かった。

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