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実技試験 頑張ります!

この度は お読み下さり ありがとうございます。

楽しいと感じて下さりましたら 評価 ブックマーク よろしくお願い致します。

謁見の間を出て しばらく歩く。

「自己紹介が遅れました。私は『ミニスター カシェット』と申します。この国の宰相をしており ご存知かと思いますが 宰相公爵家の当主をしております。以後よろしくお願いします」


「『シレン ターコイズ』です。ターコイズ子爵家の長女でございます。こちらこそ よろしくお願い致します」

歩きながら 互いに自己紹介を兼ねて 挨拶を交わす。しかし 会話はこれだけだった。

『何か言えよ。こっちの身にもなれよ。こちらからは話掛けられないんだぞ』


私は 仕方なく 静かに陛下と宰相の後を付いて歩く。すると1つの扉の前で止まる。


「シレン嬢。こちらで 運動用の服装に着替えて頂きます」『えっー。折角ドレスアップしたのにー』

私は 宰相に促されるまま 入室する。数名の侍女がいた。

「お願いします」宰相がそう言って扉を閉めた瞬間。

侍女達が一斉に 私に襲い掛かる。私はされるがまま ドレスを脱がされ コルセットを外され 運動向きの服装に着替えさせられる。『へーんしーん』が終わって見てみると 長袖 長ズボン。確かに運動向きの服装だった。着替えが終わり 部屋を出る。


更に陛下と宰相に付いて歩いて行くと 何やら 日差しが強くなってきた。外に出て来た様である。


「まずは 走力。次に 乗馬。でしょうか」

「えっーと。まずは走る。次に馬に乗る。という事で合っていますでしょうか?」

『うら若き乙女令嬢に 何をさせる気よー』


「そうですね。弓 剣などは 嗜んでおられますか?」

「そうですね。嗜んでおります。馬上から狩をしておりました。母には よくお叱りを受けました。剣も似た様な物です」


「それは素晴らしい」

「貴族令嬢には あるまじき事だがな」陛下がニヤニヤしながら 私の方を見て言う。

「・・・」『言われずとも わかってますよー』


外に出てから 少し歩き進めていると 騎士団の訓練場らしき場所に着いた。近衛騎士達だろうか?多人数で 剣の訓練をしている。

どうやら 騎士団長らしき騎士が こちらに気付いた。


「国王陛下に敬礼」

訓練を直ぐに終了し 騎士達が一斉に剣を抜き横列に並ぶ。剣を右手に持ち 左の胸部に立てて構える。


「ご苦労。崩せ」

「はっ」騎士達が 剣を鞘に納める。


「こちらの ご令嬢の能力を確認したいので 剣 弓 馬をお借りしたい」

『私の名前を出さないって事は 名乗ってはダメって事かな』


「かしこまりました。しかし 模擬戦剣はございますが、、弓 馬は ご令嬢には難しいかと」


「構わん。模擬戦剣と弓の準備を。馬はひとまず1番大人しい馬を用意してくれ」

『おいおい。それを決めるのって 私! 陛下なのか?』


「かしこまりました。おい誰か 模擬戦剣と弓 馬は『さくら』を連れて来い」

『まぁ でも 剣も弓も馬も やったるでー』


「では 準備が整う迄に 走力を見せて頂きましょうか」『やっぱり 走るのかー』

私は 陛下と宰相 騎士団達に見守られる中 予定通り まずは走る事になった。


1人の騎士が 剣先で地面に線を引く。向こう側にいるもう1人の騎士が 同じ様に地面に線を引く。

「では ここから向こうまで走って頂きます。ただ 単に走っても面白く無いでしょう。騎士団で 走力に自信のある者と 競走して頂きます」


「勝つと ご褒美とかありますでしょうか?」キラキラした目で陛下を見る。


「では 負けたら 罰則を出すぞ」

『何? コイツ 大人気無い。子供はご褒美で 頑張りが効くんだぞ』


「すいません。失言でした。ご褒美は必要ありませんので 罰則も無い方向で よろしくお願い致します」

止む無く 前言を撤回しておく。


「わかった」


仕方なく 渋々私は 線の前で準備運動をする。しばらくすると 横に1人の屈強そうな騎士が並ぶ。

「私は ジェードと申す者。よろしくな。お嬢さん」

ジェード騎士が丁寧に挨拶をして来た。


「私は おそらく名乗ってはいけないのかと。すいません。失礼は承知しているのですが。。」


「そうか。事情があるのだな? 構わない。お互いに頑張ろう」

「こちらこそ よろしくお願い致します」

私は申し訳無いが 名乗る事は出来ない。ジェード騎士は とても優しい方だ。


2人が 線上に並ぶ。

宰相が それを見届けると 手に持っていた石を上に投げる。石が落ちた瞬間が合図となる。この国のルールである。「ボテ」石が地面に落ちた。2人が 同時に走り出す。


確かに ジェード騎士も速いが 私程では無い。圧倒的では無かったが 私の方が明らかに先にゴールした。


「はぁー。勝ったー!! はぁはぁ」私は走り勝った。

『あの人に 恥をかかせたかなぁ。賭けしとけば良かったなー』少し後悔する。


陛下 宰相 騎士団達は 驚愕の表情でこちらを見ている。


「おい。まだ子供だし 女の子だろ。あのジェードが負けるだなんて。ジェード 手を抜いたりは?」

「陛下がいらっしゃる。そんな事するはず無いだろ。彼女は とても速い!! 大人気無い上 全力を出したのに負けてしまったよ。驚きだな」


陛下と宰相が 何やらヒソヒソと話合う。

「素晴らしいですね。あの走力は やはり?」

「おそらく。間違い無いだろう」


「では次は 乗馬ですね。こちらの馬に乗って頂きます」


目の前に 立派な茶毛の馬『さくら』が騎士によって連れて来られる。さくらは綺麗な毛並み 素晴らしい馬。なんとなくわかる。私は さくらに優しく触れながら話しかける。

「私は シレン。あなたの背に乗っても?」


さくらが優しく嘶く。私はさくらの側に置かれた台の上に乗り 鞍に跨る。接触した部分から 馬の鼓動が伝わって来る。

『この子は とても優しくて良い馬。わかる』


そこへ宰相が近づいてきて 弓と矢を手渡してきた。

「馬上で狩。でしたよね?」『こいつーー。私が嘘付いてるとでも。見とけよ!!』

私は 少し乱雑に宰相から弓と矢を奪い取る。


「ありがとう さくら。お願い 私を乗せて走って」私はさくらに言う。

さくらは 今度は大きく嘶くと ゆっくりと駆け出し 訓練場をぐるぐる回って走る。

「おおーー」何故か?大きな歓声があがった。

「あの子 さくら乗りこなしている様に見えるなー」「さくらが嫌がってないなー」

とか聞こえてくる。


「お上手ですねーー。あちらに的が見えますかーー?」遠くの方で 大きな仕草と大きな声で問い掛けられる。

私は的を確認すると 宰相に頷く。

「さくら お願い。あなたの全力を私に見せて」さくらに伝える。


すると さくらが勢いよく走り出す。風が周囲に起こる。気持ちがいい。やっぱり この子は凄い馬だ。

私は的に向けて 弓を引く。

『領地でも いつも大人用だった。見てろよ。私の勇姿を目に焼き付けろ。バカ宰相』


見事に的を射抜く。更に大きな歓声が!!「すげー」「的に当たったぞ」とか聞こえてくる。

『ざまあみろー』


「乗馬の技術も素晴らしい。やはり イブキファイル通りですね」

「ますます 確信に至る」


「では最後に剣ですね。こちらの模擬戦剣をどうぞ」

宰相から 模擬戦剣を手渡される。私は騎士団の1人と模擬戦をする事になった。


「ヒデナイト。お前が相手をしてやれ」呼ばれたヒデナイト騎士が 駆け寄って来る。

「今年 騎士団に合格した新兵だ。平民の出身ですが そこそこやります。おい。ご挨拶しろ」

「ヒデナイトにございます。よろしくお願い致します」


「私は 名乗ってはいけないと思います。申し訳ございませんが。。」

「構わない。よろしく頼む」

「こちらこそよろしくお願いします。」私はヒデナイト騎士に頭を下げる。


私とヒデナイト騎士は 正面から向き合う。

私は 模擬戦剣を右手に持ち 左の腰あたりに据えて構える。いわゆる『居合』である。

『誰から教わった訳では無い。我流だ。だけど これで獲物を仕留めて来た。大きな熊だって。猪だって。自分より大きな相手でも 一撃必殺! 怖くなんて無い』


またもや 宰相が 手に持っていた石を上に投げる。


私は 石が落ちた合図と同時に 一歩で間合いを詰めて低姿勢で一気に逆袈裟に斬り込む。身長差があるので ヒデナイト騎士の腹部の防具に模擬戦剣を思いっきり打ち込む。ヒデナイト騎士は ほぼ反応する事無く攻撃され 驚愕と苦痛の表情をして 後方に倒れ込む。


誰も 反応が無い。私は 周囲をゆっくりと見渡してみる。陛下と宰相 団長も含めて 皆一様に驚愕の表情をしている。驚きで声が出ない様である。

「私の勝ちと存じますが。それとも 他に勝敗のルールがございますでしょうか?」

私は 模擬戦剣を上に掲げて 団長に問う。


団長は 一瞬何が起こったのか。わからないと言った表情だったが 私の言葉に我に帰った様だった。

「いやっ。すまない。君の勝ちだ」


「そうですね。あなたの勝ちですね。予想外の結末に驚き過ぎて 声が出なかっただけです。失礼致しました」


騎士団達が騒ぎ出す。「一撃なんて」「おい 今の見えたか?」「速過ぎて わからなかった」「つえー」などと聞こえてくる。

『えっへん。やれば出来る子。シレン さすが』


すると 騎士団長が 陛下の前へ出て 片膝を付き臣下の礼をとる。


「陛下 宰相閣下 私が相手をしても よろしいでしょうか?」

「構わん。騎士団としても負け続けては 名誉に関わる。団長よ 申し出た以上 負けは許さぬ。世の前で勝って見せよ」

「はっ」

「しかし 団長が相手では 彼女の実力を測れなくなります」

「彼女の実力は もう測れた。それに騎士団も名誉がある」

「わかりました」


もう一戦 騎士団長と模擬戦をする事になった。

だが 先程のヒデナイト騎士と違い 相対しただけでわかる 騎士団長は凄まじい。

『わかる。この人は強い!』


だが やる事は変わらない!


私は 模擬戦剣右手に持ち 左の腰あたりに据えて構える。


宰相が 手に持っていた石を上に投げる。


私は 石が地面に落ちるや否や ヒデナイト騎士の時同様 騎士団長に斬り込む。しかし 団長の模擬戦剣に受け止められる。『重い。硬い』

反動だけで 手がしびれる。何度も何度も 斬り込むが 剣で受け止められ 流される。


最終的には 体力が続かなかった。私はその場に座り込む。


「はぁはぁはぁ。負けたく無かったですがー 負けましたー」


「はは。潔いな。しかし 私は卑怯をした。そなたの剣を見た後だ。そなたの剣はおそらく初見殺し。1度も見る事無く相対していれば 防げなかったかもしれん。陛下の御前 騎士団達の名誉もある。すまなかったな」騎士団長はそう言いながら 私の頭を撫でてくれた。


「団長 さすがだ! 見事」

「はっ。有難きお言葉」

「彼女は どうですか?」

「正直 かなり強いです。初見で彼女に勝つ者は少ないと思います。手練れの騎士より 実力は上だと思います。ただ 欠点はそこにあります。1度見られてしまうと 防御出来る者が増えるでしょう。2の手 3の手が必要となります」


騎士団長の言葉に 騎士達から驚かれ 大きな歓声が挙がった。

「あの騎士団長が認めるなんて」「あの子は一体何者?」


「騎士団長様 ご指導ありがとうございました」私は頭を下げて お礼を伝える。

『そっか。私の剣 1回見ると バレちゃって防げるのか』


しかし 私は負けてしまったが 陛下と宰相は 満足気だった。


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