国王陛下との謁見 頑張ります!
ながーい廊下を歩く。どうやら 謁見の間に向かっている様子。
左右の壁には 絵画や彫刻が 沢山並んでいる。どれも 高そうだ。羨ましい!
『騎士に見つからない様に ドレスの中には。。ちょっと無理か。』諦める。
しばらくすると 大きな 大きな扉の前に着いた。
『扉 でけーー』
「ターコイズご令嬢様 お連れ致しました」
すると 中から扉が開いた。
「ターコイズご令嬢様 お入り下さい」
「ターコイズ子爵家が長女『シレン ターコイズ様 ご入場」
近衛騎士が 大きな声で 私の入場を告げる。
私は 大きな声と大きな扉に少し圧倒されつつ 先程 マリーと練習した通りに しずしずと音を立てない様に歩いて中に入る。
床には 直線的に真っ赤な絨毯が敷かれている。左右には大きな白い窓 床から天井まで届く大きくて太い白い柱 そして柱と柱の間に近衛騎士が多数居る。
正面奥 階段上 壇上の豪華な椅子に座っている人 黒い髪に黒い目をしている。あれが国王陛下。その右隣に立っている人 おそらく宰相閣下。
『マリーから 聞いていた通りだ。だが私はやれば 出来る子! 左右キョロキョロする事無く ゆっくりと。ゆっくりと。そしてシレン史上最高に優雅に歩くのよ』
『でも マリー 平民なのに よく知ってたわね?』
私は ゆっくり ゆっくり 自分の中では最高に優雅に進んで 階段の下やや後方で止まる。
『あれ? お父様 居ないなー』
「国王陛下におかれましては ご機嫌麗しく。ターコイズ子爵家が長女『シレン ターコイズ』にございます」
そう言って スカートの端を摘んで カーテシーを披露する。しばらくして 頭をうつむき加減にして 片膝を付いて臣下の礼をとる。
しかし 直ぐにあると思っていた 国王陛下からのお言葉が無い。全く無い。ずっーと無い。。いつまでも無い。。とことん無い。。
しかし 私は待つ。ずっーと待つ。。いつまでも待つ。。とことん待つ。。「・・・」悠久の時が流れる。
「よく 1人で参った。顔を上げよ」
私は やや顔を上げる。『おそっ!』
「シレン嬢 臣下の礼はもうよい。立ち上がり 世の顔を よく見るが良い。世が『シブキ バースストーン』である」陛下が力強くおっしゃる。
『そうは言っても 礼儀だし 言われてすぐ崩すのもなぁ』
私は 悩んだ挙句 しばらく臣下の礼を続けていた。
「シレン嬢。立ち上がって頂いて構いません。陛下のお顔を よーく拝謁して下さい」
『流石に 2回促されたら。。仕方がない!』
私は お言葉に甘えて 立ち上がり 更に顔を上げて 陛下の顔をよーく見る。
『わぁー!噂通り 本当に黒い髪に 黒い瞳。綺麗だなぁ』『ってか 威厳が凄い! オーラ半端無いなぁ!!』
私はそう感じつつ ふと気が付く!! 陛下が私の目をじっーと見つめてくる。私も陛下の目をじっーと見つめ返す。
『失礼などと言っていられないわ。シレン 負けてなるものか! 陛下からお言葉があるまで 瞬きもせず 見つめ返すのよ。頑張れ!シレン』
ずっーと見つめ合う。いつまでも見つめ合う。。とことん見つめ合う。。「・・・」悠久の時が流れる。
互いに見つめ合う2人。だが 火花か電撃が飛んでいる様にも見える。
「はははは。そなた なかなか良い度胸をしておる。所作も悪く無い。世が声をかけるまで きちんと待つあたり 作法も問題無さそうだな。何より 目が綺麗だ」
「そうですね。所作・作法とも 申し分無いですね。目が綺麗なのは良い事です」
『何のこっちゃ? でも褒められちゃた!』
「今から 世が幾つか質問をする。素直に答えよ。遠慮は要らん。よいな?」
「はい。正直にお答えしても よろしいのでしょうか? 不敬罪に問われたりしませんでしょうか?」
「ははは 問わん。正直に申せ」
「承知致しました」私は 再度カーテシーを披露する。
「そなた 走るのは得意か?」
「はい。速いかどうかはわかりませんが 得意です」『逃げるのが!』
「馬に乗れるか?」
「はい。上手かどうかはわかりませんが 乗れます」『ま!普通は乗れんけどね』
「身体は 丈夫か?」
「はい。おそらく健康かと思います。病気をした記憶がございません」『なぜ?健康チェック?』
「勉強は好きか?」
「はい。成績優秀とは言えないかもしれませんが 知識を得る事は大好きです」『勉強。まぁ嫌いじゃ無いもんね』
「世の事を どう思う?」
「お聞きしておりました通り 黒い髪 黒い瞳で お綺麗だと思いました。また 威厳も凄すぎて 気遅れ致しました」『まぁ 実際カッコイイし 威圧感凄いもんね』
「なるほど。なるほど。では世の事は 好きか?」ニヤニヤしている。
「・・」『うん?』
「先程も申し上げました通り 威厳がございます。国王陛下の治世です。好きかと聞かれましても 本日初めてお会いした次第でございます。ただ好きか嫌いかで判断致しますと 嫌いではございませんので 好きだと思います」『うーん? 質問の意図が よくわからん。それに『好き』っていっても種類がねー』
「そうか。そうか。世の事は好きかぁ」『陛下 嬉しそうだなぁ。うら若き乙女たる私の『好き』!!効果絶大ねー』
「では そなたの申した世の治世であるこの国は 好きか?」
「はい。平和であり 父 母 兄 マリーのいるこの国が とても大好きです」『はい!即答!!』
陛下が急に 表情を引き締めて 私に問う。
「では この国の役に立つ為なら その身を投げ出す事は出来るか? 重要な任務を引き受ける事は出来るか?」
「・・・」『むつかしーー!!えっ!? 何。死ねって事かなぁ??うら若き乙女に さすがにそれは無いかなぁ? うーん。。どう答えようかなぁ。。』
私は 質問の意図を解釈しようと考えるが どうしても解釈出来ず 答えに戸惑う。
「10億ジュエル出す」
「お引き受け致します!!」
「はははははは そなた 先程は返答に困っておったのに 大金を提示すると 即決とは!! ははははは」
『何!? なんなの。私は貧乏なのよ。お金は欲しいのよ。。シレン。だって 10億ジュエルよ!!』
シレンの瞳にお金のマークが映る。筋骨隆々な悪魔が 満足そうに大きく頷いている。
「陛下。確かにイブキファイルにもございましたが 早々にお決めになられて 良かったのでしょうか?」宰相が陛下の方を向いて 問いただす。
「うむ。だが気に入った」決め顔で言う。
「では。決定という事で 良いのですね?」再度問う。
「そうだな。だが 今のやり取りだけでは 真の確認が出来ん。更にこの任務 頭脳も要る。真偽を確認しておきたい」
「わかりました。では シレン嬢。場所を移動致しますので 陛下と私の後に付いて来て下さい」
そう言うと 陛下と宰相閣下は 階段を降りて 私の前に止まった。
「返答は貴族令嬢たる毅然とした物であったが 近くに寄って側で見ると やはりまだ幼さが残る子供ではないか」
そして陛下は 私の前を通り過ぎる際 更に大きな声で 笑った。
「それが 金の話となると あははははは」
私は 笑い続ける陛下と 宰相閣下の後に付いて謁見の間を後にした。
『何がおかしいの? お金って大切なのよ。乙女を笑った大罪。いつか天罰よーー』