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盗賊にならない様 頑張ります!

「では ターコイズご令嬢様 マリー殿は こちらでお待ち下さい」


私とマリーは 王宮に到着後 騎士によって応接室であろう部屋に案内された。

正面に大きな机とソファーがあり 周囲には豪華な調度品が置いてある。


しかし 父は 何故か 両脇から近衛騎士に挟まれて 別の場所に連れて行かれるのか?この部屋では無いらしい事は間違い無い。連れて行かれる父の姿が弱々しく 項垂れている様に見える。

「あの。お父様?」心配になり 一応声を掛ける。

「はは。心配無い。私はどうやら 別の場所らしい。はは」

乾いた笑いを浮かべて 父が力無く答える。


『正直 ちょっと心配。うーん?男性だから 相部屋ダメなのかなぁ?』

父を見送って マリーと共に部屋に入る。


「お嬢様。広いお部屋ですね」

マリーは 念の為か? 部屋周囲を散策する。危険物が無いか?の調査だろうか。しばらくして 安全を確認したのか。私の横に来た。


「マリー 突っ立っても仕方がないから 座りましょう」

そう言って 私は 目の前の大きなソファーに座る。

「食べ物も 飲み物も なーんにも無いわね」


「お嬢様。ほんと 物怖じなさらないと言うか。緊張なさらないと言うか。王城内だというのに いつも通りで ほんと!羨ましいです」


「ありがとう。褒めてる?」私はドヤ顔。

「はぁー。そう見えたのであれば 尚更 お嬢様が羨ましいです」


2人きりの時は 割とくだけている。


「でも 指導して下さった先生のおかげかな?」

「私は その様な指導は 一切しておりませんが!」マリーが 呆れた顔で 私を睨む。


マリーの怒りは恐ろしい。。

『話題を変えねば』私は冷や汗をかきつつ 焦る。マリーの顔が更に怖い。。


「マリー。初めて来たけど やはり王宮って 広いし 凄いね。この部屋の物どれも高そう」

『話題変更に成功!!』


「お嬢様。まさかと思いますが 持って帰ろうなどと お考えでは無いですよね?」マリーが驚いた表情で 私を見つめて来る。

『えっ! また?怒った?』

「・・・」私は 伏し目がちに 目線を逸らす。

「お嬢様。本気だったのですか?」マリーが 右手で首を切る仕草をする。


ターコイズ子爵家は 決して裕福では無い。どちらかと言えば 貧乏である。私は小さい時から ターコイズ領の農地や畑を耕したり 馬で狩に出掛けたり 木に登って果物を取ったり と自分の力で 食べ物を獲得していたものだ。

『よく お母様に お転婆だとか 貴族の娘にあるまじき行為。。とか怒られたなぁ』


当然 貴族令嬢としての振る舞い・礼儀・作法も勉強しましたよ。この国の歴史だってねー。だって 先生チョー厳しいし。。


だーが! しかし ここにある様な調度品は 一切見た事が無い!! それに お小遣い制である私個人は もっと貧乏なのだ。


『ここにある調度品があれば。。』筋骨隆々な悪魔が 脳内で囁く。

ジュル おおーっと! ヨダレが!! 

『シレン駄目よ!! 気品が。。あなたは 仮にもターコイズ子爵家のお嬢様。貴族の端くれよ。プライドって物が無いの?』貧弱な天使?の様な存在が 脳内に出現する。


『でもよー。調度品 1個くらいなら バレやしない!って。こんなに沢山あるだろうが。。1個ぐらい 大丈夫だって!』筋骨隆々な悪魔が 再度脳内で囁く。

『プライドなんて持ってても ご飯が食べれるのか?』更に付け加える。


天使?と悪魔が 脳内で交互に囁く。


だが 貧弱な天使らしき存在と 筋骨隆々な悪魔。勝敗は明らかだった。


盗賊よろしく。になりそうな時 マリーが声をかけて来た。


「さぁ 冗談はさて置き。お嬢様。もう1度 練習しておきましょう」

『はっ! 私は何を? 冗談などでは無いのだ。本気なのだよ。マリーくん。危なかったーー。ふぅ』調度品に伸びた右手を 左手で叩く。


「何を?」可愛く聞き直す。


「はぁ。国王陛下との謁見の練習です。いいですか!ここに『何』をしに来たのか。もうお忘れですか?」

「覚えてますよーー。私だって 貴族令嬢なんですよ」ドヤ顔。

「怪しい事 この上無い」


「マリー。ちょっと失礼でしょ。私だってやる時には やるんだから」

「・・・」マリーが軽蔑の眼差しを 私に向ける。


「いいですか お嬢様。謁見の間に入ったら 左右に近衛騎士。正面階段上 椅子にお座りの方が 国王陛下。そのお隣に立っておられる方が 宰相閣下。と思われます。決して キョロキョロする事の無き様!いいですか。うつむき加減で歩いていき 階段下やや後方で 立ち止まる。ご挨拶を申し上げて カーテシーを披露する。そして頭を下げて 片膝を付き臣下の礼をとる。また ご挨拶後は 陛下からお声がかかるまでは 顔を上げてもいけません。声を発してもいけません。当然動いてもいけません。後は 陛下からのご要望に応じるのです。決して失礼の無い様に」


「わかってますよーー」


私とマリーは 立ち上がって 陛下謁見模擬練習を始める。

マリーが陛下役をする。私はしずしずと 音を立てない様に歩き マリーの前まで進む。スカートの端を摘んで カーテシーを披露する。

「国王陛下におかれましては ご機嫌麗しく。ターコイズ子爵家が長女『シレン ターコイズ』にございます」

片膝を付いて 臣下の礼をとる。


「よく来た。シレン ターコイズ。顔を上げよ」マリーが声をわざと太くして言う。

私は顔をお淑やかに上げる。視線はやや下。


「この度は ターコイズ領地からの長旅 ご苦労であった。シレン嬢・・・」


「でもさぁ マリー 初めて王都に来たというのに 観光も買い物も無く 直線的に王城に来てさぁ 練習とかじゃ無くて 他に何かする事 無いのー?」


「はぁー。もう少しで 陛下との謁見だというのに。他にする事って。お嬢様は出来るのでしょうか? もしかしたら 大変重要な任務を授かるかもしれないのに」


「私はやれば 出来る子!!」ドヤ顔をして マリーを見る。


「その自信は 一体どこから?」

呆れた顔のマリーが またもや私を睨む。


まぁ 大丈夫だろう。私は やれば出来る子。

早く謁見なんて 終わらせて 折角なのだから 王都観光 買い物に行こう。


そう思うと やっぱり あの調度品を換金すれば。。

ジュル おおーっと! ヨダレが!!


その時 タイミング良く 近衛騎士が呼びに来た。


「ターコイズご令嬢様 国王陛下がお呼びです」


「マリー。行ってきまーす」

私は マリーを部屋に残して ちょっと楽しみだったのか。ルンルン気分で言った。


そして 気になっていたので 近衛騎士の前に行き 聞いてみる。

「ところで お父様はどちらに行かれたのでしょうか?」

「申し訳ございません。私の方では 分かりかねます」

「そっか。先に謁見の間に行ったかなぁ?」


仕方がないので 近衛騎士の後ろに 付いて歩いて行く。


マリーが とても心配そうな顔で見送っていた事には 全く気付く事が無かった。

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