初代 カシェット宰相家当主『グレイデン カシェット』の戦い 頑張ります!
◇初代 カシェット宰相家当主 グレイデン カシェットのお話
「何者?」
私達は サファイア柱に到着した直後 サファイア柱に何かをしていた『腹が異常に出て長い爪を持ち 大きな牙が左右に2本生えている人間の様な生物』が2体居る事に気が付いた。当然返事は無い。
『カシェット』10人全員と 宰相である私も抜剣する。
生物自体の動きは遅い。ゆらゆらと揺れながら こちらに向かって来る。カシェット達は一斉に切り掛かる。だが 身体が硬く 剣が全く通らない。傷一つ付けられ無い。何度も何度も切り込むが 全くの無傷である。
今度は 切るのでは無く 剣で殴打してみたが こちらも全く意に介していない。
逆に 長い爪を振り下ろして来る。全体的な動きは遅いが 爪の振り下ろしは何故か速い。剣で受け止めたり 受け流したりするが 片手に5本 左右で10本ある爪で攻撃して来る為 全てを避けきれず 多少爪で引っ掻かれる。すると 爪には毒がある様で 爪で傷付いたカシェット達が 苦しんで 苦痛に耐えて戦っている。
突然 口から紫の霧を吐き出した。
「うぐっ、、こ、これも ど、毒か、、」
加えて 口からも毒を吐き出してくる。カシェット数名が 毒を吸い込んでしまい 口から泡を出してその場に倒れる。意識は無いが 生きてる様子。私はほっとする。だが生物達は 後でカシェット達を食べるつもりなのだろうか。口から糸の様な物を吐き出して 意識の無いカシェット達をぐるぐると包んでいく。
結果 有効な攻撃手段が無く闇雲に戦っていた為 前衛であるカシェット達8人が ぐるぐる巻きにされてしまった。
なんとかしたくて 剣撃を加えたり 体当たりをしてみるが 気にする様子も無く 全く微動だにしない。
『このままでは 全滅してしまう』
『何か? 策を考えないと』
『!!!そうだ!』
私は 剣先を地面に何度も何度も擦り付ける。同様の動作を行う様 2人のカシェット達に伝える。
『果たして 効果が有るのか 正直不明だが 思い付く方法がこれしか無い』
私とカシェット達全員の剣の 剣先がやや赤くなる。
赤くなった剣で 一斉に3人全員で 1体に突き込んだ。全員の剣が生物の身体に突き刺さる。周囲に焦げた臭いが広がり 血が流れ出てくる。
「ぎゃあーー ぎゃあーー」生物が 大きな声を出して 苦しんで倒れる。
『いける』
私は カシェット達に伝える。
「よいか。熱だ! 熱を帯びさせた剣なら 奴を貫ける。もう一体も」
そう言って カシェット達全員と攻勢に出ようとした瞬間だった。倒れていた1体が 爆散したのである。
周囲に 紫の霧が立ち込める。
「うぐっ、、こ、これも ど、毒か」
紫の霧だけで無く 私とカシェット達に 爆散した生物の体液も掛かった。
「ぐふっ、、」
私は 苦痛に耐え 何とか意識を保つ。だが 2人のカシェット達は 意識無く倒れている。
段々と 身体中が痺れてくる。立っていられず 思わず両膝を付く。口から血が出てくる。自身の剣で 左手を刺す。
痛みで 意識を保とうと努力する。しかし 身体は動けそうに無い。。
『もはや これまでか』
「サファイア柱 力を貸せ」
「何? 私を忘れたのか、、私は『ヴィラン』『バースストーン』だ!」
そこへ 突然誰かが やって来た。意識が朦朧としていて 誰なのか?上手く確認が出来無い。
サファイア柱が 眩いばかりに青に輝いた。
その御方は 片手で剣を振ると もう1体の生物が 真っ二つに切れる。あれ程に硬い身体だったのが 嘘の様に スパッと切れた。その生物の死体から 黒い霧が霧散していく。
「サファイア柱 皆に治癒を。うむ よろしく頼む」
朦朧とする意識の中 サファイア柱が 再び眩いばかりに青に光ったかと思うと 身体の苦痛が全く無くなる。意識も徐々にはっきりとしてくる。
周囲の者達も 毒による影響が無くなった様に見える。
『皆 助かった。。良かった。本当に良かった』
「お、王妃様」
意識がはっきりするにつれて 目の前に 『ヴィーナス バースストーン』王妃様が居る事に 気が付いた。
私は急ぎ ふらつく身体をなんとか制御して 立ち上がって 王妃様の前で臣下の礼をとる。
「無事で何よりです。あなた方が サファイア柱の調査に行ったと聞いたので 一応念の為と思い 来て良かったです」
「本当に助かりました。王妃様のおかげでございます。本来なら 私達が護衛すべきところを 申し訳ございません」
「いや 良いのだ。柱に歪があれば 『力』を借りる事が出来るのは 私自身と私の面影。そなた達では 柱の歪を改善する事は出来ない。それに 奴らは『餓鬼』だ。『デスストーン』は既に 地獄を抜けたのか。異常な速さで事が進んでいるな」
「しかし イブキにも その旨を伝えているのに アイツはいつも適当で困る」
「奴らは『餓鬼』という生物でしたか。カシェット全員 王妃様に命を救われました。カシェットを代表して 本当に感謝申し上げます」
「ところで 王妃様 そ、その、、王妃様自身と面影とは? そう言えば『ヴィラン』とは 一体何の事でしょうか?」
「ゴホゴホ、、その様な事を申したか?」
「はい、、確かに聞きました」
「そ、そうか。そなたは宰相であったな。イブキだけでは頼りにならんからな。宰相にも正直に伝えておこう。『ヴィーナス』とは イブキが私の事を『ヴィーナス』『ヴィーナス』と褒め称えるから そのまま名前にしただけなのだ。本当の名前は『ヴィラン』。柱達の元主人だ。柱達は『ヴィラン』を名乗り 神位を感じさせ 相応の力を有した『女性』にしか『力』を貸してくれないのだ。それが私の面影。私との約束だからな」
「な、なるほど。ですが 私がその話を伺っても 宜しかったのでしょうか?」
「構わない。良い機会だ。イブキだけでは不安だからな。私もいずれ歳老いていく。だから そなたが尽力して 何か策を講じて欲しい。但し 他には他言無用だぞ」
「承りました。ところで 神位とは何の事なのでしょうか?」
「そうか、、説明が難しいな」王妃様は 少し考えている。
「よし わかった! 今後『カシェット宰相家』に於いて 『ヴィラン』を名乗り 力を有した『女性』を育てよ。『ヴィラン カシェット』をだ! その者が優秀であれば この赤い石『ローズストーン』を身に付けさせよ。この『ローズストーン』こそが 神位だ。手段 方法は 任せる。イブキと相談して欲しい」
「わ、わかりました。『ヴィラン』を名乗る女性を カシェット宰相家で 相応の力に育て上げ『ヴィラン カシェット』を名乗らせます。そして神位たる『ローズストーン』を持つのに相応しいかの判断を行う『システム』を構築致します」
「うむ。頼んだぞ! イブキは本当に適当だからな」
「承りました。今後『カシェット』は 命を救って頂きました御恩に報いるべく 王妃『ヴィラン様』に忠誠をお尽くし致します」臣下の礼をとりつつ 更に頭を下げる。
「そーだな。それは非常に有難く 光栄な事なのだが、、だが私もいずれ死ぬ。なれば『カシェット宰相家』は 王でも王妃でも無く『ヴィラン カシェット』に忠誠を尽くして欲しい。よいか?」
「は! 承りました。今後『カシェット宰相家』は 『ヴィラン カシェット』様を 主として忠誠をお尽くし致します」
「サファイア柱。『繋がり』を」
王妃様が そう言うと サファイア柱から『青い鱗』が 落ちてきて 王妃様の手の上に乗る。
真っ青に光ったかと思うと『サファイアのブレスレット』に形を変えたのである。
「そなたに『これ』を渡しておく。『サファイア柱』との繋がりだ。これを『カシェット宰相家』が認めた『ヴィラン カシェット』に 渡して欲しい。サファイア柱が『力』を貸すであろう」
「は!承りました」
「よいな。サファイア柱よ。『ヴィラン カシェット』だ。うむ、そうだ。約束だ」
王妃様は サファイア柱と何かを 話しておられた。
「サファイア柱は 今後 神位を感じさせ 相応の力を有した女性『ヴィラン カシェット』にのみ 『力』を貸すであろう」
そう言うと 王妃様は私に ブレスレットを手渡した。
「は! 確かに承りました』




