2代目『ヴィラン カシェット』の戦い 頑張ります!
◇2代目ヴィラン カシェットのお話
「はぁはぁ 強い!」
何度も 切り込んでいるが 剣も使わず躱されるだけで ダメージを全く与えられていない。それどころか 毒物や訓練によって かなり強化されている私が疲労感を感じて来ている。戦闘が長引くのは 圧倒的に不利だ。
私は 呼吸を整えて 剣を左腰に沿わせる。右手で剣を握り直す。
敵も剣を4本構えている。敵は龍の頭が2つ 手が4本 足が2本 長い尻尾がある。ルビー柱に何かをしていた。何かは不明であるが。。敵で有る事だけは 間違い無い。
私は 最速一歩で間合いを詰めて 逆袈裟で剣を切り上げる。2本の剣で防がれる。もう2本の剣が上段から 振り下ろされる。後方に身体をずらす。尻尾が右薙で来た。剣で受け止めるが 身体ごと 弾き飛ばされる。剣で受け止めたはずなのに 尻尾は無傷である。
「つ、強い。隙が無い。力も負けている。身体も硬い。その上 疲れた様子が全く無い」
状況は こちらにとって圧倒的に絶望的である。だが 諦める訳にも 投げ出す訳にもいかない。
『私の力では勝てない。。止む得ない』
右手に付けている カシェット家から預かったサファイアのブレスレットに『お願い』をする。
『サファイア柱の『神様』 どうか御力添えを!』強く願う。
『神位を感じさせ 我との繋がりを持ち 尚且つ望む者よ。そなたは名は何と申す者か?」
「ヴィラン、、『ヴィラン カシェット』と申します」
『『ヴィラン カシェット』良かろう。そなたに 我が『力』を授けよう』
「うぐっ!」
激痛に思わず 声を出してしまった。何かが流れ込んで来る。『力』の塊を感じる。人には過ぎたる『力』を感じる。毒物や訓練で痛みに対しても かなり耐性を得ている私だが 身体全体に激痛を感じる。
「ぐう、、」
私は 激痛に耐えつつ 唇を噛み締めて 立ち上がる。唇を強く噛みすぎて 血が出る。
再度 呼吸を整えて 左腰に剣を沿わせる。右手で剣を強く握り直す。
最速一歩で 左薙に切り込む。敵も防ごうと剣を打ち込んで来たが 私は敵の身体を通り越した。『かなり速い!』
上から敵の腕が1本 落ちてくる。
急いで 敵に向き直り 剣撃を乱撃で打ち込む。敵も3本の剣で 受け流すが 私の方が力が強く 尚且つ速い。もう1本の手を切り落とした。『力負けしていない。それどころか いける!』
だが突然 龍の口から炎を吹き出して来た。炎が顔に向かって来る。
「うっ、、熱い!」思わず 左手を顔の前に出してしまい 左手に炎を受けてしまった。
私は体勢を立て直す為 一旦後方に引く。
『左手が焼け爛れている。もう左手は上手く使えないだろう。しかし あの様な攻撃も可能だとは、、』
『敵の手は2本となったが 私も左手が使えない。しかも 敵の剣 尻尾だけで無く 頭も意識せねばならないとは、、神様の御力を 人の身体でいつまでも受け止める事が出来るとは 到底思えない。時間的にも私の身体的にも 限界を既に超えている、、どうする? どうすれば、、』
その時 ルビー柱が 赤く光った様に感じた。
『ルビー柱の『神様』 どうか!どうか! 御力添えを!』私は縋る思いで 強く願った。
『神位を感じさせ 我に願う者よ。そなたは名は何と申す者か?』
「『ヴィラン カシェット』と申します」
『なるほど 『ヴィラン』か。良かろう。古の記憶により『ヴィラン』には 我が『力』を授けてやろう』
「うぐぐっ、、」
先程と同じく 人には過ぎたる『力』が 一気に流れ込んで来る。あまりの激痛により 意識が飛びそうになる。
『意識が無くる前に 身体が動く間に 一気に決めるしかない。ダメなら 死ぬだけだ』
グッと堪えて 呼吸を整えて 左腰に剣を沿わせる。右手で剣を強く強く握り直す。
「おりゃーーー」
令嬢に似合わない はしたない掛け声と共に 最速一歩で 左薙に切り込む。『か、身体がちぎれる、、』
あまりの速さに 自分の手足 特に剣を振るった右手は引きちぎれたかと思った。
私は敵を通り越して 高速のあまり 前のめりに倒れる。『もう 力が無い。身体が動かせない』
「ドテン ドテン」
後ろで大きな音がした。
顔だけで何とか後ろを見ると 敵の2つの龍の頭が落ちており 身体が後方に倒れていた。身体から黒い霧が霧散していく。
『やった!! やった!! 何とか倒したんだ』
身体から『神様の御力』が 抜け出ていく。途端に激痛が 更に激しくなる。
「うぐっ ぐふっ」
『サファイア柱の神様 ルビー柱の神様 本当にありがとうございます』激痛を堪えて 強く強く 御礼を伝える。
『『ヴィラン』よ。我らは古の記憶により『バースストーン』『デスストーン』の命令には抗う事が難しい。先程の修羅は『デスストーンの者』。我の内にある『デスストーンの力』を取り戻しに来ていたのだ。『バースストーン』との約束により 何とか抗っていたが あのままでは 我の内にある『デスストーンの力』を全て取られていたであろう。我としても『バースストーン』との約束がある。そなたには助けられた。約束により そなたにはこれを渡しておく』
すると ルビー柱が赤く光り 『赤い羽根』が 目の前にヒラリと落ちて来た。
私は 激痛と疲労と身体の限界を超えた酷使により 動かせない身体に鞭を打ち 何とか左手で『赤い羽根』を掴んだ。すると『赤い羽根』は 眩いばかりに真っ赤に輝いて『ルビーのペンダント』に変化した。
『ああ。サファイアのブレスレットも こんな風だったんだろうなぁ』
そう思って ペンダントを見つめていて ある事に気が付いた。
『!!!』意識が朦朧とする中 焼け爛れていたはずの左手が 綺麗に治っていた事に。
そこで 私は意識が無くなったのである。




