突然の王城への登城 頑張ります!
事の始まりは 2年前。。私が11歳の時。
『シレン ターコイズ令嬢は ターコイズ子爵と共に 7日後に王城に登城する様に』との 急に それも突然にご命令があった事から始まった。
父である『プルームアゲート ターコイズ』子爵が 急いで王城から護衛を連れて 早馬で帰領して来た。だがいつもの護衛とは違い。護衛にしては 張り詰めており かなり冷たい目をしている。父が怯えている。
「シ、シレン。す、すまない。突然だが お前は私と共に王城に登城せねばならない。ご命令があった。時間があまり無い。急ぎ支度する様に」父がオドオドして言う。
「えっ? なぜ私が お呼び出しを受けたのでしょうか?」
『お父様。目が泳いでいますよー。視線合いませんが?』
「シレンがですか? シレン何かやらかしたのか?」兄が 揶揄う様に言う。
「いえ 何もしておりません。お兄様 心当たりがありませんもの?」
「そうですよねー。シレンはずっと領地に居ましたものね。あなたの方こそ 何か心当たりがございませんの? 護衛も何やら張り詰めている様な 違いますか?」
母も護衛の異変を感じ取っているらしく 父を見て探る様に聞く。
「うぐっ!? い、いや。わ、私に心当たりが在るはずないだろう! 何を言っているのだ。理由はわからないな。。でも王命だから。シレン 急ぎ準備を終えて 直ぐにでも出発するからな。7日後に王城に着かねばならない。ターコイズ領から王都は遠いから」
父は なぜか焦って言う。怯えている様に見える。チラチラと護衛達を見ている。
「仕方ありません。シレン 気をつけるのですよ。マリー 申し訳無いのですが 王都まではシレンに付いて行って下さい」
「わかりました。では直ぐにでも準備致します」
呼ばれた理由はよくわからないが 行かないといけない事は理解したので 一応答えておく。
「承知致しました」
マリーも なぜか少し焦って 顔を引き攣らせた様に見えた。
「でも 良いじゃないか。王都には沢山の人が居て いろんな施設やお店があるから 観光気分で行けば良い。私が行きたいぐらいだよ。観光に買い物に 王都は楽しいところだよ。シレン」兄は呑気に言う。
「そうですわね。直ぐにご挨拶を終えて 観光して来ますわ。お土産を楽しみにしておいて下さい。お兄様」『まっ!王都観光と思えば』
「ゴホっ。ゴホっ」何故か 父が横でむせている。
私は 急ぎマリーと共に準備をする。マリーは 貴族出身では無いが 昨年学園を筆記試験首席 つまり『ローズストーン』という優秀な成績で卒業した16歳の才女である。そして彼女の希望で 学園卒業と同時に私の侍女をしてもらっている。教育係も兼任で それはそれは烈火の如く 厳しくも優しい先生である。何故わざわざ 貧乏であるターコイズ家の侍女を希望したのか理由は不明である。
『給金は安いはずだし ターコイズ家なんて 特に何にも無いのに。。そんな優秀なら 引くて数多のはずなのに?』
私『シレン ターコイズ』は 準備が整ったので 父と侍女マリー 王都から来た護衛騎士数人を伴って 馬車の揺れによるお尻へのダメージに耐え お風呂に満足に入る事叶わず。夜営いわゆる野宿もいとわず。何とか 期日までに 王都にあるターコイズ家の屋敷に到着したのである。
『国王よ!もっと日程考えろよ。ターコイズ領地は 王都から遠いんだぞ』
ゆっくりお風呂に入る間も無く 屋敷の侍女達に揉まれ『ドレスアップ』『メイクアップ』 『へーんしーん』したのである。『シレン!! あなた美しいわ』自己評価!
侍女A「お嬢様。お美しい! お綺麗です!」
『そうだろ。そうだろ。綺麗だろ!!もっと言ってくれーー。はっ! いけない。。シレン 慎ましやかよ』
「ありがとう。そんな事無いわよ。それに綺麗になったのであれば あなた達のおかげよ」
侍女B「長旅でお疲れでしょうに。気丈に振る舞われて」
『そうだろ。そうだろ。本当は疲れてんだよ!!もっと労ってくれーー。はっ!いけない。シレン お淑やかよ』
「ううん。皆んなの方も急な事で ご迷惑をかけて大変だったでしょう」
侍女C「ですのに お肌もツルツル。髪もツヤツヤ」
『そうだろ。そうだろ。ツルツヤ!!もっと褒めてくれーー。はっ! いけない。。シレン 謙虚よ』
「ありがとう。皆んな そこまで言うと なんだか褒めすぎよ」
そんなこんなで 私は国王陛下にお会いする為 食事もそこそこに 準備を整えた。
正直 王都屋敷であんまり寛ぐ事も出来なかった。何せ時間が無い。本当に無い。どちらかと言うと ギリギリ間に合うかどうか?といったところの 強行日程での王都旅程。
『よく間に合ったわ』
再び 父とマリーと共に馬車に乗り 護衛騎士を数人伴って 王城に馳せ参じたのである。
『王城 でけーー!!』
私は 王城に初めて来た。観光気分で テンションが上がる。
「ねえ 見て見て ほら お城がとても大きい。凄い!」
「・・・」しかし 返事は無い。それどころか 向かいに座る父親は どんどん顔が青白くなり テンションだだ下がりである。
「うん? お父様? ご気分が優れないのでしょうか?。それとも 酔ったのでしょうか?」
「う、いいや そんな事は無いぞ」父が 力無く言う。
なんだろう。明らかにおかしい。
隣のマリーを見てみると こちらも 何かソワソワしている。
「お嬢様。もしかしたら あの件を。。」マリーもぶつぶつ言っている。
2人共 何かがおかしい。。
私を乗せた馬車が 王城の門に到着した。護衛騎士の1人が 門番をしている騎士に話しかけに行く。
おそらく ターコイズ子爵家の馬車である事。王命で馳せ参じた事。等 説明しているのだろう。
私達は しばらく待つ。
許可が降りたらしく。馬車が門をくぐり抜け 王宮への入口らしき所で止まる。
父は 馬車を降り様と立ち上がったが それはもう足がブルブル震えていて 上手く立てない。
『何? 何なの?』
「お父様 大丈夫でしょうか?」私は父に寄り添って聞く。
「あ、あー。う、うん。大丈夫だ」父がなんとか立ち上がって 馬車から降りて行く。
『足元フラフラやん。全然大丈夫ちゃうしー』
「お嬢様。到着した様です。降りますよ」
マリーは 意を決した様な キリッとした表情で 私をエスコートしてくれた。私は馬車から降りる。
「ターコイズ子爵家の馬車と お見受け致します」
「『プルームアゲート ターコイズ』子爵だ」
父が 震えながら 小さな声で ターコイズ子爵家の貴族紋章を見せる。
「ターコイズ子爵家が長女『シレン ターコイズ』にございます」
私は スカートの端を摘んで カーテシーを披露する。
「ターコイズ子爵家侍女のマリーと 申します」
「ご挨拶感謝致します。王命の件は伺っております。では 皆様を お部屋までご案内致します。こちらへどうぞ」
「私もご一緒しても よろしいのでしょうか?」
お部屋までは 構いません。ただし 謁見は マリー殿にはご遠慮頂き ターコイズ子爵様 シレンご令嬢様のお2人でお願い致します」
「わかりました」
そうして 私と父とマリーは 城内に案内されたのだった。
何故か? 父は逃げたそうな。諦めた様な そんな気がした。