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わざと負けます 頑張ります!

そして 季節は夏!

本日は『夏のランク戦』と呼ばれる剣術大会である。単なる『脳筋の祭典。脳筋フェスティバル』である。


筆記ではダメな学生共が 一気にテンションMAXで 雄叫ぶ祭りである。

そこいら中に 剣を振り回して 脳筋自慢をするバカが蔓延っている。

「俺の剣技 すげぇだろう」「我が剣に斬れぬ物無し」「俺の剣の錆にしてくれる」とか聞こえる。

『バカらし。。アホくさ』


要するに 各学年ごとに男女の区別無く100名の学生達が 剣術で戦い 勝ち残りトーナメントを行う。1位以下『脳筋ランク』を付けましょう大会である。しかし 御前試合である。陛下もお父様も来てるしなぁ。

皆んな気合い入るよねぇー。『もっと座学頑張れよなぁー。その熱量を勉学に向けたらー』


今日は 1年生の大会である。

私は瞬殺で 絶対1位だろう。1対99でも勝つ自信があるもんね。しかし私の戦闘能力を披露する事は出来ない。


1回戦F組

『ヴィラン カシェット』対『ハックマナイト』

ハックマナイトは 平民出身の男子。屈強そうな いかにも筋肉自慢を絵に描いた様な脳筋である。


「俺の相手は ヴィラン様かよ。準備運動にもならねえな。へん!誰か俺の全力で戦える奴は居ねえのかよ」ハックマナイトが 鼻息も荒く。ふんがふんがと剣を振り回して言う。


『ちぐしょー。お前などに そんな事を言われるなんて。。なんて屈辱!!』


「これだから 平民は嫌なのよ。言葉使いもなって無いわ。女性の扱いも知らないご様子なのね」とりあえず 悪役令嬢らしく振る舞う。『さ、更に ストレスがー』


仕方なく 私はハックマナイトと向かい合う。


「構えて」審判はそう言うと 石を上に投げる。石が落ちる。

ハックマナイトが 剣を振り回して来る。『えっー!こんな奴に負けんとあかんのー』


脳内で葛藤する。

「やっちゃっていいんと違うか。ストレスゲージも結構高いぜ」筋骨隆々の悪魔久々。

「だめですよ『シレン』断頭台で死んじゃても良いのですか」貧弱天使?も久しぶり!

「こんな奴ええと思うで。2回戦で負けたらええんとちゃうか」悪魔が良い事を言った。

私はちょっと躱して 当てちゃおっかなぁ。と思っていたら。。


「10億ジュエルが!」天使ちゃん 素敵ーー!!


「うがっ!」私はそう言って ハックマナイトの訳の分からない振り回しに当たる振りをして 倒れ込む。


1回戦で 早々に消える。『ストレスゲージがーー』


『慣れては来たが 剣を実力通り振るえないのは ストレスである。私の任務へのプライドの無さが原因か? それとも実力を示したい自慢・承認欲求か? 子供だから感情のコントロールが難しいのか?』いろいろと考えるが とにかくストレスが溜まる。


しかし周囲は『運動音痴の私の1回戦負け』を当然の様に受け止める。

「まぁまぁ ヴィラン様。貴族令嬢ですもの」「ヴィラン様 惜しかったですわね」とか言われて 慰め半分 見下し半分の反応を示される。『それもなぁー。ストレス!』


結果 終わるまで見学のみ。という。私の様な『知性的・知能派』は 蚊帳の外大会である。

だが 私は殿下を見守る為に居る存在。帰る訳にも 抜け出す訳にも行かず 運動服を脱ぎ捨て 制服に着替えて ずっーとこうして見ている。

周囲には 負けてしまった取り巻き令嬢達がどんどん戻って来て多数居る。勝ち残って行くのは 圧倒的に男子が多い。


「剣術なんて 野蛮な物。貴族令嬢には相応しくありませんこと」「そうよ。ガサツだわ」取り巻き令嬢達が言う。

「その通りですわ」私も便乗する。


殿下は 同学年いや学園内でも 屈指の実力だろう。勝ち残って行く。当然と言えば当然。


ながーい退屈な時間を過ごして ようやく4強となった。

『ゴブキ バースストーン』『モルガナイト ペリドット』『ヘマタイト アクアマリン』『フローライト ダイヤモンド』出揃う。


殿下以外 全員 13大貴族となった。やっぱり貴族は小さな時から剣術を学ぶ。

『紅一点 『フローライト ダイヤモンド』が残っている。女性で残るなんて さぞかし優秀なんだろう』


準決勝1回戦

『ゴブキ バースストーン』vs『モルガナイト ペリドット』

殿下がこちらを見る。目が合う。手を振る。『はいはい。頑張って下さい。応援してますよ』


審判の投げた石が落ちる。

2人の剣が交錯する。激しく打ち合っている。『パキッ。カキッ』しばらく剣撃の応酬である。鍔迫り合いの後 モルガナイトが 後方に一歩下がった瞬間に隙が出来た。殿下は見逃さなかった。下からモルガナイトの剣の柄頭を斬り上げる。モルガナイトは止む無く剣を手放してしまう。飛んだ剣が地面に落ちる。


「勝者『ゴブキ バースストーン』」歓声が上がる。「殿下さすがー」「殿下凄い」

殿下は 剣を掲げて こちらを見る。顔には『褒めて』と書いてある様な。。

私は仕方なく うんうんと頷いておく。殿下は嬉しそうに笑った。

『ドキ!』『うん?胸が高鳴った様な。気のせいか?』


負けたモルガナイトは 悔しそうである。『3位決定戦があるから 頑張ってねー』


準決勝2回戦

『ヘマタイト アクアマリン』vs『フローライト ダイヤモンド』


審判が投げた石が落ちる。

フローライトが 低姿勢から ヘマタイトに一気に斬り込む。『割と速いなぁ』

斬り込まれたヘマタイトは 剣を受けるも体勢を崩される。よろめき次の剣撃まではなんとか受け止めるも 3度目は躱しきれず 左肩に受けてしまい膝を付く。

勝負は フローライトの圧勝であった。


「勝者『フローライト ダイヤモンド』」歓声が上がる。「きゃあー カッコいい」「速過ぎて 見えなかった」


『確かに 騎士団も含めて 速い方だなぁ。あの子やるなー』と思っていると

斜め前に何故か居た脳筋ハックマナイトが「あの子こそ 俺の相手にふさわしい」などとぬかした。これは!!

『てーんちゅーう』


私はとりあえず足元の石を拾って 左手の掌の上に乗せる。右手の中指を親指で押さえて

中指を弾く。すると左手の石がハックマナイトの左肩に直撃する。

ハックマナイトが前に少し飛ぶ。


「あれ? 力加減間違えた?』


「いたたたた!! 何? 誰?」ハックマナイトが後ろを振り向いて周囲を見回す。誰かに叩かれたと思った様だ。私は知らない振りをする。


『はっ!』誰かの視線を感じる。視線の方を見ると 殿下が少し呆れた様なでも楽しそうな顔でこちらを見ていた。


『げぅ。バレた?』


殿下が 右手の中指を親指で押さえて 中指を弾くポーズをなさった。

『あちゃー。やべー』

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