殿下からの尋問耐久 頑張ります!
翌々日 私は 通常通り学園に行く。
私の周囲に 待ってました。とばかりに 人だかりが出来る。
「ヴィラン様。お元気なご様子でなりよりです」
「お怪我をなさったと伺い とても心配しておりました」
「私など ヴィラン様が倒れられた瞬間 命が縮まる思いでしたわ」
などと 声を掛けてくださる。『ありがとう。ありがとう。嘘でも嬉しいよ』
しかし「なんて悪運の強い事」「倒れたフリして 殿下に甘えるなんて」など悪口も聞こえてくる。
「私 神に選ばれし者ですもの! 当然!」
周囲が 一瞬で冷え込む。『だって これが任務だもん。。悲しいかな。悪役令嬢なんですよ。素直にお礼を言えない。悪口には皮肉・嫌味で。だもん』
そこへ ゴブキ殿下が近づいて来る。
「ヴィラン。『相変わらず』元気そうで何よりだ。それより 真に気付くと そなたの言も存外可愛いものだな」殿下が揶揄う様に言う。
『はぁー!何言っちゃてんだよ。このバカ殿下は』
「殿下も お元気そうで何よりですわ。私に何か?」私は殿下を睨み返して言う。
「命を救われたのだ。感謝を伝えたくてな。そなたの顔を見に来たのだ。それより逆に そなたこそ 私に言う事は無いのか?」殿下がまた揶揄ってくる。
『な、何。こいつ 私を揺さぶって。。ちぐしょー』
「ございませんわ。では 私 授業がございますので」そう言って 教室に行こうとしたのだが 殿下に手を掴まれる。
『て、手がーー』『ドキっ ドキっ ドキっ』『拍動がー』
「では そなたが私に言う事が無いのであれば 私がそなたに聞きたい事がある。
授業が終わったら 昼食時 2人っきりで 一緒に食べよう」殿下はニヤニヤしながら言う。『それって ニュアンスが違うだけで 同じ事では?』
周囲から 悲鳴に似た声があがる。
「なんで ヴィラン様なんかが?」「殿下 ヴィラン様の事を?」「偶然とはいえ 命を救ったのだから 単なるお礼よ」
「はぁ? な、何をおっしゃっておられるのですか。わ、私は殿下とお話しなど・・」
私は焦る。
「ほう? では皆の前でも良いのか? 困るのはそなただと 私は配慮したつもりなのだが?」殿下は 更にニヤつく。
『こ、コイツ やっぱりサディストだわー。ちぐしょー』
「うぐっ!わ、わかりましたわ」
私はそう言って 殿下の手を振り払うと『心臓落ち着け。冷静に』教室に向かおうとした。だが殿下が再度 手を握り「約束だぞ」と笑顔で言った。
『む、胸がー!鼓動がー!拍動がー!』死ぬ間際であった。「はぁはぁ」
落ち着きを取り戻し 教室での授業に於いても 運動場に於いても 私は『いつも通り』殿下の位置 周囲への配慮を行うのだが 何故か?『いつもと違い』殿下と目が合う。なんなら目が合った瞬間 嬉しそうに手を振るのだ。
『な、なんなの。この変わり様は??』
そんなこんなで お昼になった。私は仕方なく 殿下に連れられて行く。
「学園長にご無理をお願いして 学園の応接室を借りている。そこなら 野次馬も来れない。ゆーっくり話をしようでは無いか」嬉しそうです。
そう言われて 仕方なく 応接室に入る。応接室にある机を挟んで 向かい合わせに座る。殿下の護衛達が 昼食を運んで来て 机の上に置いて 出て行く。
「年頃の男女が 2人っきりでは 殿下に 在らぬ噂が立つのでは?」
「その相手が 君なら 私にとっては僥倖だよ」
『なっ!』顔が真っ赤になったのが 自分でわかる。
「まぁ。本心だからな。だが今日は告白では無い。聞きたい事は山の様に有る。だが君を困らせるつもりは無い。君と会えなくなるのも私が困る。そこで マリーを同席させる。マリーは全てを知っていると父上から 伺っている。マリーを証人として 君に聞く許可を得た。また 2人っきりでは無くなるからな。マリー入ってくれ」
マリーが 申し訳無さそうに入室して来た。
「お嬢様。申し訳ありません。つい先程 殿下からご連絡がございました。陛下と殿下の連名での 呼び出し命令を 私ではお断り出来ません」マリーが頭を下げて謝る。
『なんちゅう親バカ! ほぼバレてる事に気付いているのか? バカ親父!』
「マリー。いいのよ。こちらこそ厄介事に巻き込んで。っていうか。殿下の責任ですからね」私は殿下を睨む。
「はは。すまない。だが どうしても聞いておきたい事があってな」
『謝罪 かるー』
「ヴィラン。答えるかは 君とマリーの判断に任せる。君に会えなくなるのは困る。難しい時は答え無くてよい。父上からもその条件で 許可を得ている」
『てか 何1つ答えても 断頭台なんでは? 許可ってどこまで? だってバレてる事明らかやん。バレたら 断頭台って。どこまで?』
私は 難しい顔をして 一応頷く。『親バカ基準を教えてくれー』
「ヴィラン 私の事が好きか?」両肘を机に付いて 前のめりになり言う。
私は飲み掛けたお茶を 吹き出しそうになるのを 令嬢魂で堪える。だがむせる。『吹き出さなかったわ。偉い!シレン』
「ゴホ ゴホ ゴホ。で、殿下 な、な、何を?」
顔は真っ赤。冷静な対応が出来なかった。『殿下 恐るべし』
「いや 君に好意を寄せて貰える。ないしは男性として意識して貰えているのなら 嬉しいからな」殿下が私の目を見つめて来る。
「ノーコメントです」
「では 君は出会った時から 心根は変わって無いのだな?」
「そうですね。私の中では何も。以前にも申し上げた通りです」
「ならば 学園での姿は 偽りなのか?」
「ノーコメントです」
「交流会の際 偶然では無く 毒物に気付き 私を守る為 策を講じた?」
『この辺りは ほぼバレてるからなー。』
私は マリーを見る。マリーは頷く。「そうですね」
「私を守る事。それが 君の任務?」ちょっとキツイ物言いの感じがする。
『まぁ 当たりでは有るけど。。それだけでは無い様な。国の為 民の為 秩序を守る為。なんだよなぁ』
「任務などとよくわかりませんが 国の為 民の為 秩序を守る為 王太子殿下の安全を守る事は そこに繋がってきます。貴族として 当然の義務ですわ」
「私の安全を守る事は 君の命よりも大切な事なのか?」更にキツイ物言い。
『な、何 怒ってる? ちょっと語気が。。機嫌が。。』
「殿下は この国において 大切なお方です。私の命など 天秤にかけるまでもございませんわ」『はい 正論』
「なるほど。それは自分の身体を盾にしても 良いと?」一段とキツイ物言い。
『チョー不機嫌!!』
「怪我をしない自信が有れば 危険とは言えないのでは無いでしょうか?」
「殿下にしてみれば 命を張った行為に見えたのかもしれませんが その者にすれば それは命を張った行為では無く 何気ない行為だったのかもしれませんわ」思った事を答える。
『まぁ 正直全然危険は無かった訳だし』
「まぁ 一理ある。では 自信があったと?」少しだけ和らいだ物言い。
「私には わかりませんが 一般的に訓練を積んでおけば それが自信に繋がるかと」
「それも 一理ある。ならば その者は 密かにその様な訓練を積み だが皆には偽りの姿を見せ 正当な評価を受ける事無く それでも良いと?」またしてもキツイ物言い。
「志の高さと。皆では無くとも 身近で信頼出来る者が 正当な評価をして下さるなら 孤高でも良いのではと お感じになっておられるのかも? または逆に 既に何もかも 全てをお捨てになり諦めておられるのかも? 私には その者の真意は測りかねますが」
『なんちゃて。10億ジュエルですよ。10億ジュエル。後 兄の当主。兄の当主が後回しって。。シレンやるわねー』
マリーの方を見る。マリーはなんとなく呆れている様に見える。
しかし 殿下は何か 思い悩んだ 思い詰めた表情をしている。
「ヴィラン その者では無い 君に聞く。辛くは無いのだな?」物言いが非常に柔らかい。
『辛くは無くないけどね。正直母と兄に会えないのは辛い。でも結局 私は家族を捨ててるし。。学園では孤独。真の友人は居ない。でも任務だし。。殿下守って死んでも。殿下を守れず殿下が死んでも。断頭台だし。。って私 諦めてる部分多かったんだね。今更気付いたよ。でも10億ジュエルだよ。10億ジュエル。兄が当主。難しいね』
ちょっとだけ 涙が出そうになった。
「ノーコメントですね」
「そうか。ありがとう。ひとまず君の状況は なんとなく理解した」
殿下はそう言って 思い詰めた表情をして立ち上がると 私の横に来た。じっーと私を見つめて来る。
『ここまで 質問攻めで 全然ご飯を食べれていない。ってか喉通らんだろー。ってのに何?』
よくわからないが 殿下の圧により 私は何となく立ち上がる。
「『ヴィラン カシェット令嬢』これからは 1人で行わず 悩まず 私を頼って欲しい」
そう言って 私の手を握り込んで 見つめて来る。その目には明らかな熱量があった。
『ーーーー!!! どないしよ!!どなたか??』
私は マリーを見る。マリーも酷く困惑している。
確かに こんな状況は予想外も甚だしい。
「で、殿下。そ、その。えっーと。あのー。。」
『任務だから。悪役令嬢だし。。それよりも 何? お手手とその熱き視線は??』
「わかっている。君に事情がある事は!だが 心配なのだ」
「うーん。殿下 とても有難いのですが。その。えーと。」私は返答に悩む。
『バレてるけど。。言ってはいけない。殿下を危険に曝さない事がそもそもの目的だし。。頼れる筈も無い。。断頭台だし。。』
「そうだな。君の困った顔も素敵だな」手を離して 揶揄う様に言った。
それが 逆に温かくて「しかし 私は、、その。あの。。」私は我慢していた涙が 出て来た。
「皆まで 言わずとも良い。今まで 君の真に気付けなくて 本当にすまない」
殿下はそう言うと 私の頭に手を乗せて 撫でてくれた。
久々のマリー以外の人の温もりだった。私は溢れ出る涙を抑える事が出来ず。
殿下の それも護衛対象の前で 泣き続けてしまった。
殿下は 優しく私を抱き締めて 包んでくださると 泣き止むまで そうして下さった。
それからは いつも通り 殿下の護衛 通学時の安全確保であった。
周囲の視線や反応は いつも通り相変わらずであったが 唯一変わったのは
殿下だけは 私にものすごーく優しく 甘くなった。のである。




