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殿下の視点・回想 頑張ります!

◇殿下視点

意識を失ったヴィランを 抱き上げる。すると ヴィランの左手から矢が落ちる。おかしい。矢に血が付着していない。そもそも刺さったのなら 落ちる訳が無い。

ふと見ると 右上腕にあるはずの『創』が無い。それどころか 服に穴も無ければ 出血も無い。


『おかしい。射出された弓矢を 身体に刺さる直前に受け止めた。というのか?』


しかし よくよく考えてみると 何かがおかしい。


ヴィランが 令嬢のドレスにかけた飲み物から 明らかに毒物の匂いがした。私の落としたガラスコップの床からも。

私は王太子だ。小さい時から 毒物の知識・勉強 訓練。そして多少毒物への耐性獲得も行っていた。

飲み物からの 匂いに気付いた者は ほとんど居ないだろう。私ですら コップの状態では気付かず 撒かれてから 初めて気付いた。


だが ヴィランの行動は 明らかに 最初から 毒物を私に飲ませない為の行動とも思える。


それに 1度椅子に座って 直ぐに立ち上がり 私に向けられた矢を防ぐ。それも矢が放たれる事が直ぐに判り 私との間に入って 自分の身体を盾にして。


こんな偶然が3度もあるだろうか? しかも彼女の奇行が偶然? いやあり得ない。


私とヴィランが出会ったのは 互いに11歳の時だった。


◇殿下回想

私は母と2人 王城庭園のガゼボでお茶をしていた。

「今日はね。あなたに紹介したい子がいます。女の子ですよ」

楽しそうである。母が女の子を紹介するなんて 珍しい。


この国の貴族は 宰相公爵家 カシェット家。4大柱爵家 ダイヤモンド家 パール家 ルビー家 サファイア家。8大子爵家 ガーネット家 アメジスト家 アクアマリン家 エメラルド家 ペリドット家 オパール家 トパーズ家 ターコイズ家。

宰相家と4大柱爵家と8大子爵家を 13大貴族と称する。その下に 幾つかの男爵家 準男爵家が存在する。

そして 王族は13大貴族から 伴侶を選ぶ事が多い。


母から「会わせたい人がいる」と言われていた私も今日は『お見合いなのでは?』と思っていた。


そこへ 宰相と1人の女の子が ガゼボに入って来た。宰相は良く知っている。


すると 宰相が 王妃の前に片膝を付き 臣下の礼をとる。宰相は父の前でも 臣下の礼をとった事が無い。臣下の礼をとる姿を 初めて見た。


「主様 ゴブキ様 本日は 御目通り頂きありがとうございます」

「もう、主ではありませんよ。臣下の礼もやめてほしいわ。それより 待っていましたよ。さぁ早く紹介して」

母は 待ってましたと言わんばかりの 喜び様である。


宰相が 臣下の礼を止め 立ち上がる。

「失礼致しました。こちらのお方が『ヴィエンダル バースストーン』王妃様だ。こちらのお方が『ゴブキ バースストーン』王太子殿下だ」

そう言って 宰相は 女の子に 母と私を紹介した。


「王妃様。ゴブキ様。こちらが 我が娘『ヴィラン カシェット』にございます」

「王妃様。ゴブキ様。カシェット宰相公爵家が長女『ヴィラン カシェット』にございます」

ヴィランは とても綺麗な女の子だった。輝いていた。カーテシーも綺麗だった。力強い瞳。真っ直ぐに澄んだ顔でこちらを見てくる。


「まぁまぁ 可愛らしい子です事。ではこの子が?」

「はい」

「まぁ それは大変ね。こんな可愛らしい子が。。でも懐かしいわ。いい事 ヴィラン!あなたに例え何があろうとも 私はあなたの味方よ。忘れないでね」

王妃は ヴィランに近付き 抱き締めて抱擁する。

ヴィランが うっすら悲しそうに涙した様に見えた。私の心の中に『ヴィラン』が入った瞬間だった。


「ゴブキ。あなたも忘れないで。忘れてはダメよ。ヴィランはどんな時でも あなたの味方なの。ヴィランを疑ってはダメよ。外見に囚われて 本質を見失ってはいけないのよ」


『あぁー。あの時は意味が理解出来なかったが そう言う事だったのか!』


この出会いは 見合いなどでは無かったが 私の心を捕らえて離さなかった。


それから 私は気が付けば ヴィランが王城に居ると ヴィランの姿を目で追っていた。ヴィランは王太子である私よりも 遥かに多忙であった。いつも何かをしていた。


私は1度 気配を消して こっそり騎士団の訓練場に行った事がある。

その時 私は騎士団の誰にもまだ勝った事が無かったのに ヴィランが騎士団長と互角に打ち合っていた。いや ヴィランの方が押している様にさえ見えた。

互いに 集中して本気で戦っている様子で。気迫が凄く圧倒されたので とてもよく覚えている。ちなみに私は今でも 騎士団長には勝てた事が無い。


だが武術の訓練をする為 騎士団の訓練場に予定通り行くと。

ヴィランは 弱く。剣の握り方すらなっていない様子を 私に見せる。確かに貴族令嬢にして 戦闘訓練とは珍しいのだが。


「ヴィラン 剣の持ち方はこうだ」剣の握り方をヴィランに 教える。

「王太子殿下 ありがとうございます。こうですか?」私の説明した通りに 剣を握り締めて 笑顔で聞いてくる。


「ヴィラン。この間こっそり戦闘訓練を覗きに来た時。剣の握り方すら知らぬ筈のそなたが 騎士団長と互角に打ち合っていた様に思ったのだが 私の見間違いであったか?」

「ゲホゲホ。な、なにかの見間違いでは無いでしょうか? 私はこの様に剣の握り方すら 存じません」ヴィランが むせながら 焦った様に言う。


納得はしていないが 何か事情があるのだろうと察し 一緒に並んで剣の素振りをする。その姿が美しく 輝いていた。とても綺麗だと思った。

彼女は 成長するに連れ 更に美しく 更に輝いていた。


であった。なのに、、


それが 学園に入学後『ローズストーン』になると 突然あの態度。最初は おかしいと思っていた。あまりの急な態度の変化に戸惑いを感じていた。だが 私はヴィランを信じてやれず。身分・地位に溺れ 変わってしまったのだと思っていた。


それ自体が 間違いなのだ! 今ならわかる。『ヴィランの美しさ 輝きは 出会った時と同じなのだ』


よく思い返すと。私の側にいつも居て 私を守っていたのだろう。諌める言葉も『嫌味』では無く『真』を付いていたとも思える。


私が ヴィランを信じてやらず 他の誰が味方になってやれるというのだ。。いや 違うな。その様な格好の良い物では無い。

私が単にヴィランの側に居たいだけか。彼女の側に居て 彼女を見て居たいだけだな。


今となって 後悔の念が尽きない。しかし これからは違う。

今後は 後悔しない為にも ヴィランが私を受け入れてくれるなら 彼女の側に居たい。そう私は自分勝手ながら決心した。

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