悪役令嬢『ヴィラン カシェット』頑張ります!
この度は『3代目悪役令嬢 頑張ります!』
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「新入学生代表 『ヴィラン カシェット』」
私は 名前を呼ばれて 椅子から立ち上がり 前に出る。6段階段を登りホール壇上に上がって 壇上の中央にある演説台まで ゆっくり歩いて行く。
私は 同期に居る王太子殿下を抑えて 新入生代表である。
壇上から ぐるりと見渡す。
『愚民どもめー。ってな気分だわ』
「新入生の皆様。私は『ヴィラン カシェット』と申します。そう カシェット宰相公爵家 王族に次いで高位の貴族です。入学筆記試験 ご覧の通り首席ですわ。『ローズストーン』ですわよ。よろしいですか 学園内外に限らず 間違っても 私と対等などと思わない事ですわ。私の発言には従いなさい。くれぐれも反論などせず 身の程を弁えて頂きたいですわ。それと 気安く話掛けて来る事も 迷惑なので ご遠慮頂きたいですわ。当然!」
『まぁ 第1関門突破ってところかな』
本日は 王立学園の入学式 私は とても偉そうに 尊大に傲慢に 新入生代表挨拶を行った。
再度 壇上から見渡すと 教師も含めて皆呆けた顔をしている。歓声が挙がらない。当然拍手も無い。
『まっ! 当然か。威嚇はこんなもんだろ。だって。これが任務なんだもん』
この国では 13歳になる者は 2年間何処かの学園に入学する事を義務付けられている。それは貴族 平民を問わずである。そして優秀な人材を確保する為に 最優秀校として 王立学園が存在する。定員はたった100名で 貴族と言えど 必ず入学出来る訳では無く 厳しい入学試験を通過する必要がある。
そして 入学試験首席には 本の形をした赤い『ローズストーン』が与えられる。
私の右胸には その『ローズストーン』が輝いている。私は 最優秀校の首席 つまりトップオブ ザトップである。『えへん!』
ローズストーンを与えられた者は 学内で圧倒的・絶対的な発言力を得る。試験は年2回有り 年2回共に ローズストーンを獲得すると『デュアローズ』と呼ばれる。『デュアローズ』となれる者は毎年多くは無い。その為『デュアローズ』になると 学園カースト最上位となる。私の目的の1つがこれだ。
「ヴィラン様 ローズストーンなんて 凄いですね」
「私は選ばれた人間なのよ。当然!」
「ヴィラン様 どの様なご学習をなさっているのですか?」
「気安く話掛けて来ないでと 言っておいたはずですわ。当然!」
私は 入学試験首席に加えて あの新入学生代表挨拶。その上 高位の貴族である為 翌日にして 多くの取り巻きを従え『女帝感』丸出し状態となった。
不満を言葉にした者は 言葉と威圧で屈服させ 相手を黙らせる事も忘れない。
学園の食堂でも
「そこを どきなさい。あなた方身分の低い者は あそこの日陰で食べればいいのよ。日陰がお似合いよ。当然!」
そう言って 食堂のテラスで仲良くお昼ご飯を食べている4人組の令嬢学生に 上から睨みを効かせて追い払う。
「あのー。私達の方が 先に座っていたのですが。。」
「あらっ 聞こえなかったの? 私 ローズストーンなのですわ。胸のこれが 見えなくて! ローズストーンよ。ローズストーン。当然!」
『ローズストーン』を強調して言う。
「すいません。失礼致しました」「あちらへ移動します」4人の令嬢達は 少し不服ながらも移動して行く。
私の態度と 周囲の多くの取り巻き達を見て 4人以外 テラスに居た他の学生達も すごすごと避けて行く。
私は多くの取り巻き達と共に テラス席を独占する。
「さすがは ヴィラン様。日当たりの良い場所は 私達高貴な者の座席」
「ヴィラン様 さあさあコチラに」真ん中へ案内される。
『今の チョー悪役令嬢ぽかった! 頑張ってる。シレン』
そして 私は 日当たりの良いテラスに座る。
『あぁー 良かった。殿下が よーく見えるわー』
「でも ヴィラン様。入学試験首席だなんて 本当に素晴らしいですわ」お世辞を言われる。
『そうなんですよー。私 常に首席じゃ無いと クビ!なんですよ。本当のクビ。断頭台なんですよー。正に命掛け!なんですよねー』とは言えず。
「そうね。何せ私は神により選ばれてますもの。あなた方も 私を見習いなさい。当然!」
『メチャクチャ努力してるんだよー。話方1つとっても どんだけ訓練したか! 知っとんか』
取り巻き達も ちょっと視線が伏せがちで 目が泳いでいる。
教室に於いても
王太子殿下の周囲に 令嬢達が群がっている。
「身分も弁えぬ羽虫がうるさくて 教室でゆっくり出来ませんわ」
私は 教室中に聞こえる様に 大きな声で言う。
「こ、これは ヴィラン様 失礼致しました。ただ殿下のお話が面白くて」
「王族の方と お話出来る機会なんて 学園内でしかないので つい声が大きくなりまして。失礼致しました」
取り囲んでいた令嬢達が 謝罪しながら言う。
「それが 浅ましく 群がっている羽虫にしか見えない。と言っているのですわ。ここは 学び舎ですのよ。その様な事も理解なさってないのね。身分が低いって これだから嫌ですわ。当然!」
見かねた 我が国の王太子『ゴブキ バースストーン』が 声をかける。
「ヴィラン それは言い過ぎだ。謝罪しているではないか。少し声が大きくなってしまった事は悪かった。だが そなたの言う通り此処は学び舎だ。なればこそ 此処では身分の差なく扱われるなのでは無いか」
殿下は綺麗事を 決めた感じに言う。
「では 殿下。なればこそ 王太子であるあなたに群がっている事自体 あなたがこの国の王太子殿下という ご身分であるからですわ。それこそ身分の差を顕著に表しているのではないでしょうか?」
私は 正論をドヤ顔で返す。
『お前 ちったあ気付けよ』
「うっ、た、確かに。それは そうかもしれないが」殿下は思い当たったのか。動揺しながら 答える。
「殿下が もし『殿下』で無ければ 羽虫は群がって来ないかもしれませんわ」追い討ちを言う。
「そ、それは 私の肩書きに魅力があって 私個人には魅力が無いと?」
「殿下は 入学試験第三席 私は 殿下に魅力が無いとは思いませんわ。ただ 令嬢方が殿下を正当に評価なさっていると 殿下は本当にお思いでしょうか? 殿下ご自身も 私にはただ令嬢方に囲まれて 喜んでいる様にしか見えませんわ」
「・・・私が浮かれていると?」怒りからか 顔を少し赤くして殿下が言う。
「ヴィラン様 いくらなんでもお言葉が過ぎますわ」「私達が 殿下ご自身の魅力に気付いていないとおっしゃるのですか」などと聞こえる。
「殿下も あなた方も その様な事もお気付きでなかったのですか? 当然!」
『バーカ』
私は この学園に入学してから 尊大で威張り散らしている。なぜなら それが任務だから。
周囲からは 畏怖も込められて『性悪 悪女』などと 既に呼ばれており 一部の学生は不満に思い 陰口を叩かれている。
だが 私は1年生内で既に 3日目にして君臨して居ると言っても過言では無い。
なにせ『性悪令嬢』を 演じなくてはならないのだから。
一方で 私は 今日も今日とて 殿下の通学路の見回りと ゴミ掃除である。
まず トイレで 制服を裏返す。私の制服は特別仕様である。真っ黒な出立ち。
ポケットから布を取り出し 頭の上から顔全部 目以外を覆う。目だけがキラリ!
『忍者』である。『名称イブキファイルより』『へーんしーん』
そして 誰にも気付かれず 颯爽と出撃する。
殿下が馬車で通る 馬車道の脇に雑木林がある。
「あっー! 今日もいたわ。懲りないなー」
私は 武器を携えて覆面をして隠れている3人の不審者を発見した。
こそーと 背後から忍び寄り 相手の背中を指で突く。驚いた不審者が こちらを向いた瞬間に 少し気を込めて脇腹に打撃を入れて 意識を刈り取る。殺す事は無い。そうやって1人ずつ 確実に無力化する。
殿下が馬車で 城へ帰る頃には ゴミ掃除も終わっていた。
『はいはい。今日もご無事で お疲れ様〜』私は 陰なから殿下の馬車に手を振る。
「さてと 後は ゴミだけど」と呟き 縄でぐるぐる巻きにした3人の不審者を
『この人達は 罪人です。どなたか衛兵をお願いします』との張り紙をして 馬車道にポイ捨てして置く。
『本当は ポイ捨ては厳禁だかんね』
殿下の通学時の安全確保 これも私の任務である。
『何故? 私はこんな格好をして こんな事をしているのかなぁー』




