8.九死に一生
変異種はなんとか現状を脱しようとしたがゴブリンに身体を押さえつけられ、首には致命的な怪我を負ってしまった。
こうなってしまうと変異種にはどうする事も出来ない。
その時、魔石と化している変異種の身体が強制的に体外へ引きずり出されてしまった。
ゴブリンは本能的に獲物の肉よりもまず魔石を取り込もうと魔石を取り出し豪快に齧りついた。
が、魔石と化している変異種は魔石を盾状の前脚で完全に抱え込んでいるので側から見れば、見た目は魔石というより黒い甲殻に覆われた盾の姿をしている。
そんな魔石の盾状の前脚は身体のどの部位よりも防御力が高かった。
ガキンッ!! と金属を思い切り噛み付いた甲高い音がなった。
「グキャギャ!?」
ゴブリンは容易く噛み砕く事が出来るだろうと豪快に齧りついた結果、手痛い反撃を受けた。
ゴブリンは容易く噛み砕けないこれは魔石ではないと決め付け、八つ当たり気味に変異種を遠くへぶん投げた。
ゴブリンの怒りはその程度では収まらず先程仕留めた獲物を喰らおうと辺りを見回したが、何故かファルクスラプスの姿がそこに存在しなかった。
ゴブリンが魔石と格闘している間、ファルクスラプスの身体は魔力に変換され霧散してこの世界から完全に消えてしまった。
その事を知らないゴブリンは獲物が何者かに奪われたと憤慨しながら、捨てた棍棒を拾い直し森の中へ犯人探しに走り去っていった。
投げ捨てられた変異種は地面に転がり、ゴブリンが立ち去るまで石のふりをしてやり過ごすのだった。