5.ファルクスラプス
キーメックスの目の前にいる魔獣を一言で表すと“どこにでも居るうさぎ“である。
大きな違いあるとすれば後ろ足の表面が金属の様な光沢をしていることである。
うさぎの魂と鎌状の前脚を持った小さ魔蟲の魂を融合させた合成魔獣はこの世界には1匹も存在せず、完全なるユニークモンスターである。
今の目線は魔蟲の時の目線よりも高い位置にあり、視線をしたに向ければ警戒しながらも此方の様子を窺っているキーメックスの姿が映った。
身体の構造が変化しても冷静で居られるのはこの合成魔獣を作り出した本人だからか魔蟲ゆえにあれこれ考えず本能で戦っているからかもしれない。
世界に新たに誕生した合成魔獣その名前を付けるとすればファルクス(鎌)ラプス(うさぎ)とする。
ファルクスラプスは後ろ足に力を入れキーメックスに跳びかかり、その小さな魔蟲に右脚で蹴りを放った。
その一撃でキーメックスの身体は横文字に切断された。
鋭い蹴りを受け上半分は岩壁に打ち付けられ、下半分は床を緑色の体液の線を引きながら滑っていった。
勝負はあっさりつきファルクスラプスは綺麗に切断された身体から魔石を抜き出し発達した前歯で噛み砕いた。
融合して生み出した合成魔獣は身体が死滅するか魔石が体外へ出ることでその役目を終える。
死骸を魔力に変換して素材(魂)にして融合、自らを魔石とすることで初めてこの世界に実体を持つことができる。
死骸が残ることは無い。
もちろん融合させた素材(魂)も消えて無くなる。
新しい素材は魔物の死骸を魔力に変換することでストックすることが出来る。
ファルクスラプスは洞窟の出口を目指して移動を開始した。