3.奪われた獲物
書きたいことが多いのですが、投稿は不定期にするつもりです。
次話からタイトル通りの展開の予感。
重症を負った変異種と攻撃を成功させたキーメックスが睨み合っている。
キーメックスが左側に回り込もうとジリジリと移動する動きに合わせて変異種も盾状の前脚を前面に出し攻撃に備えている。
しかし、片方の前脚と脚1本を失った状態での動きは非常に鈍く直ぐに防御不可能な間合いに回り込まれてしまった。
キーメックスが追撃しようと跳びかかって来たところで変異種は咄嗟に右前脚でガードを試みたが、体勢が崩れ攻撃の反動で吹き飛ばされて岩壁に激突した。
パラパラと小石や砂が壁際で蹲る変異種の上に降りかかった。
キーメックスは相手が最早立ち上がることも出来ないと見切りを付け、背を向けて頭部を噛みちぎられたキーメックスに近づいて行った。
既に絶命したキーメックスの下にたどり着いたキーメックスは鎌状の前脚で腹部を切り裂き内臓を貪り食べ出した。
グチッグチッと内臓を食い散らかされている腹腔内は緑色の体液で溢れ、その中にアメジストの様な光沢を放つ小さなカケラが出てきた。
そのカケラは魔石と呼ばれ人族社会では生活の至るところで使われている。
魔道具の動力源として使われていたり、加工次第では武器や防具の素材に用いられる。
魔石の大きさは魔物の強さや種族により異なり、内包されている魔力の属性までもが異なる。
魔石は魔物のみが体内に宿し他の魔物は相手の魔石を喰らうことで、魔物としての格を上げている。
キーメックスは魔物界の最底辺に分類されている為、魔石の大きさも内包される魔力も最底辺である。
しかしながら最底辺の魔物だからこそ魔石の存在は大きさや質が最底辺であっても貴重となる。
魔石の視認したキーメックスはそのノコギリ状の顎で小さな魔石を噛み砕いた。
魔石を取り込んだキーメックスは残り2匹の死骸の位置を確認しゆっくりと近づいて先程と同じ様に体内から魔石を噛み砕いた。
変異種は朦朧とした意識の中、自分が殺した獲物が喰われる光景を眺めていることしか出来なかった。