あの頃
1つ願いが叶うのなら、神様
彼女を俺に下さい。
「もしもし。」そう言うと携帯の向こうから、
「もしもし、、?」と、語尾に少し戸惑いを含んだ声が聞こえた。
そう、聞き覚えのある彼女の懐かしい声が―
「じゃあ何彼女と別れればいいの?」
そう言って半ギレの俺と彼女の間に数秒間の沈黙が流れた。言い合いの最中彼女は携帯の向こうで急にただひたすら静かに黙っていた。
「そういう所が嫌。」
しばらくしてようやく口を開いた彼女は一際落ち着いた声でそう言い放った。その言葉は俺の心の奥底に
深く尚且つしっかりと刺さった、だが俺はそれを無かったかのように
「何言ってんの、意味分からない」
と、彼女に言った。
すると彼女は、まるで今まで溜めて来たダムが崩壊したかのように物凄い勢いで彼女の口からはぼろぼろと言葉が溢れ出した。きっと、俺の言葉で彼女の中で何かがプツンと切れたのだろう。
「そういう所が嫌、私がもういいって言うの待ってる所も、貴方が私を下に見てる所も、彼女が居るのに連絡して来る所も、全部嫌。」
張り詰めた声で彼女は携帯の向こうで苦しそうにそう話した。こんな彼女は今まで見た事が無かった、"見た"と言うよりは電話越しだから"聞いた"と言う表現の方が正しいのだろうけど、携帯の向こうで話す彼女の姿が目に映る程彼女の感情が伝わって来た。