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魔法… 不思議な事を起こさせる術。妖術、魔術。
はるか昔に広く存在していた、魔法。それらは今、科学と名前を変えて新たに根付いている。それでもなお、魔法は失われていない。それを信じるものは失われないからである。
「わぁ!!!きれー!!!」
たいしは目の前の光景に、まだ幼い、甲高い歓声を上げた。たいしのスニーカーの下には青々とした木々が広がり、神社に咲くツツジの花がそこに彩りを添えていた。さらにスニーカーのつま先の方を見ると、湖が太陽をキラキラと反射させていた。たいしは、空に、何の力も働かずに止まっているのだ。
「できないって言ってたやつにもこの景色、見せてやりたいなぁ。」
一昨日のテレビ番組で、座ったまま浮き上がる、浅黒い肌をした異国人を見てからというもの、彼は6年2組のクラスメイト全員に「俺は空を飛べるようになる!」と宣言していた。もちろん、浅黒い肌の異国人にはタネも仕掛けもあるわけだし、それをわかっている同級生たちは、笑い、あれは仕掛けがあるんだと説明した。でも、年齢のわりには幼いたいしは、人間は飛べるのだと信じ込み、彼なりの、飛ぶための修行をした。房中術、禅、瞑想、断食など、聞き齧ったことはなんでもやったが、どれも3日と続かなかった。
「それでも空を飛べた!みんなに笑われたけど、修行の効果があったんだ!」
そう、ひとりごちた。