ドラゴンと結婚した王子
どうも、王子です。ドラゴンと結婚しました。
長きにわたる我が国と竜国との戦いの末、この度めでたく和睦が結ばれました。
その証として王族同士が結婚することになりました。
国同士ではよくあることですね。
僕は平和主義者ですから、そういうのって暴力よりもいいやり方だと思います。
それが自分事じゃなかったらな!
おいおいふざけんなよ! 俺は人間だぜ!? ドラゴンって、デカいトカゲを無理やり立たせて角だの羽だの生やしてるやつだぞ!? 俺よりどデカいし鱗生えてるし変温動物だ!
それを人間と結婚させるって気が狂ってるとしか思えねーよ!
マンガみてーにヒト型に変身したりしねーんだよ! マジもんの爬虫類と結婚ってどういうことだよ!?
確かに奴らは頭がいい。人間の言葉だって喋れる。竜国じゃあ人間と同じように畑を耕したり商売したりやってるさ! でも爬虫類なんだよ! 界門綱目科属種で言ったら、哺乳類綱と爬虫類綱で分かれてんだよ!
あああ、こんなことだったら贅沢言わずに幼馴染のレイラと婚約しときゃあ良かった! 兄弟で俺だけが独身だったからってこんな割食わせやがって! あのハゲ! ヅラ! 今度会ったらご自慢のくるるんバロックヅラひん剥いてやるからな! 覚悟しとけ!
俺は憎しみを込めて巨大なベッドの上で枕をボスボスと殴る。
まさかの初夜だよどちくしょう! どーすんだよ! 卵産まれても困んだよ!
ドアを見る。
どーせ外じゃあガチムチな竜の衛兵が待機してるに決まってる。
逃げるならこっちだ。
窓を開けて下を見る。
断崖絶壁。落ちたら死ぬ。
それでもやらなきゃ俺の貞操が死ぬ。
平和なんてくそくらえだ。俺が犠牲になるくらいなら世界が死ね。
俺は窓枠に足をかける。なんとか壁伝いに脱出して人間界に戻ろう。
ガチャリ
突然の音にびっくりして足を滑らせて断崖真っ逆さま。
あ、死んだ。
短い人生だった。
俺の人生なんだったんだ。爬虫類の王国で最後はトマトみたいに潰れて終わるのか……。
涙がこぼれた。
その時――
バサバサッ
「エミリオ様!」
鈴を転がすような可愛らしい声。
赤い竜が降ってきて俺を優しく抱き留める。
ぐっちゃりトマト寸前で俺を助けてくれたのは――俺の花嫁だった。
トクン……
胸が高鳴る。
「よかった……」
竜は安堵の表情を見せる。
今まで気付かなかった。
コイツ……いや、彼女はこんな優しい目をしていたのか……。
恋に 落ちた。
挿絵はみこと様より頂いたファンアートです!
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みこと様、美麗なイラストの数々ありがとうございました! 感動が止まらない……!