始まりの朝、集う狩人たち
そろそろバトル書きたい
2階
「2階は宿になっています。部屋数は22で今埋まっているのは6部屋くらいですね。いつもは満員なんですけど、キーリンタウンの件で殆どのハンターは治療中ですので。」
廊下を歩きながら薺さんが話す。
「ちなみに、ブラスターハンターは半額の3千5百メルで泊まることが出来ますよ!研究員は普通価格なのに......」
少し悔しそうに薺さんが教えてくる。
3千5百メル、とてつもなく安い。普通のホテルに止まったら1万メルから2万メルかかるというのに。
あ、メルって言うのはこの世界でのお金の事だ。
「俺、今日ここに泊まる事にするわ!仰扇はどうする?」
俺の家の家賃は月8万ほど、ここに通うための交通費と光熱費も合わせると10万近くいってしまう。俺は自分の家を売ってここに泊まりこもうかと考えている。
「僕は......辞めておくよ。」
仰扇はそう答える。お金が必要な事や、妹の事でなにか事情があるのだろう。あまり踏みこんで話をするのはやめておこう。
「2階はこれくらいですかね。1階はロビーと小さなコンビニがあるだけなのですが、案内しましょうか?」
なんとなくここで薺さんに別れを告げるのは違うな、と思ったので最後に1階も案内してもらう事にした。
「よろしくお願いします!」
1階は、本当に言われた通りロビーに小さなコンビニがついているだけだった。この階はここの職員だけでなく一般人も自由に入る事が出来るらしい。ブラスターハンターに用がある人は勿論、コンビニの為にここに入る人も少なくないと言う。
「薺さん、案内ありがとうございました!」
「ありがとうございました。」
俺と仰扇がお礼をする。
「ええ、二人とも明日の初任務、頑張って下さいね!ではまた会いましょう。」
そう答え、薺さんはエレベーターで6階の研究室へと戻っていく。俺は手続きを済ませ2階の宿へと戻って行く。仰扇は妹が待っていると言い、建物を出た。
次の日
網楽さんに言われた通り、5階のブリーフィングルームへと向かう俺。中に入ると、仰扇、キャトラ、鈴音、網楽さん、そして見た事のない二人がいる。
一人は白い髭を生やし車椅子に乗った体格の良いおじいさん。厳ついサンタクロースのような見た目だ。
もう一人は、緑色の短い髪をした俺より少し年下ぐらいの少年だ。可愛らしい見た目だったので、最初は女の子かと思ったが勘違いだった。
「二人とも初めまして、今日からここでブラスターハンターやらせて貰います、大丈夫って言います。」
自己紹介をする俺の前に緑髪の可愛らしい少年がぴょんっと跳ねてやってくる。
「ボクは奏累っす!よろしくっす!」
奏……母さんの名前と同じだ。お互い握手をする。
「今、大と言ったか?もしかしてお前は護のせがれか?」
おじいさんが父さんの名前を出す。父さんを知っているって事は元々仲間だったのか!?
「そうです!」
「おおやはりそうか......護、お前の息子は立派に育っているぞ......きっとこれから、お前をも越えるブラスターハンターになるはずだ......」
小さく涙を流しながら、天に向かってそう話すおじいさん。
「ああ、すまんのう。護とは良く一緒に任務に出たものでな......ワシの名前は大瓦五右衛門、よろしくな。」
「はい、よろしくお願いします!良ければ今度、父さんとの思い出話とか聞かせて欲しいなって。」
「もちろん、聞かれなくても話すつもりだったわい。」
自己紹介が終わると、さっきまで鈴音と仰扇と話していたキャトラがこっちに来る。
「おっちゃんおはよーにゃー!」
「おはようキャトラ。ってお前も今日の任務に出るのか?」
キャトラはスティルステラに所属すると言っても、研究員としてだったはずだ。どうしてここに。
「任務には出ないけど、一応一回は参加してみろって網楽さんに言われたにゃー!」
「なるほどな。」
会話をしていると、もう一人部屋に入ってくる。入って来たのは京平だった。
「おはようございまーす。お、もう皆来てたのか!やる気満々じゃねぇーか!」
京平が俺たちのもとまで来ると、網楽さんが咳払いをし、話を始める。
「よーっし、全員揃ったなー。それじゃあ今日の任務を伝えるぞ。」
全員が網楽さんの方向を向く。
「今日の任務も、勿論パトロールだ!!」
笑顔でそう言い放つ網楽さん。
「あーもう嫌だ!って言いたいけどさー、メンバー二人も増えたし、頑張るわ!」
京平がニコッと笑う。
「それじゃあ担当を発表するぞ。夜桜は昨日と同じトルナタウンな。大はイババラを頼んだ。」
俺の担当はイババラになった。イババラは特に目立った建物のない住宅街だ。高齢者が多くブラスターによる犯罪は少なく、詐欺事件などが多い。
「紅蓮柳はライドットシティ、村雲はガーラタウンだ。」
ライドットシティには俺の家がある。一人でパトロールするにはかなり広い大都市だが、京平一人に任せられた。
「え?まじ!ライドットだけでいいんですか?やりぃ!!」
京平はガッツポーズをした。昨日まではこれ以上の仕事を任せられていたのか!?
「奏はパルラを頼んだ。五右衛門さんはゾルラマタウン、キーリンタウン、ダイデンシティをよろしくね!」
五右衛門さんは三つもの地域を任された。これら全ての面積を合わせたら、ライドットシティの2倍はあるのではないか!?
「え?五右衛門さん一人でそんなに!?」
驚きのあまり、俺は質問をしてしまった。
すると、五右衛門さんが笑いながら話す。
「ふぇっふぇっふぇー!ワシのブラストは簡単に言うと忍者の分身の術みたいなものでのう。過去の自分のクローンを5人まで生み出せるのだよ。」
「過去の自分のクローン......しっくりこないけどなんかすごいや!」
「そうであろうそうであろう!ふぇっふぇ。」
誇らしげに笑う五右衛門さん。
メンバー全員に通信機が配られる。これを使って仲間との連絡、位置情報の把握をするらしい。
「任務開始は30分後の午前7時半からだ!今日もよろしく頼んだぞ!みんな!」
「はい!」
同刻 ダイデンシティ 地下
「まさか、ここまで上手く行くとは思いませんでした。」
深い紫色のローブをした男が話す。
「キーリンの計画で予測以上にやられてくれたからね。後は明日の地殻浮上と共に残り4人のハンター、そして睡蓮院網楽を始末すれば良いだけだ。」
僧侶のような格好をした男が、そう答える。
「今から倒しに行くっていうのはダメなのか?」
黒いジャージを着た体格の良い男が現れ、突然話に割り込んでくる。
「そうですね、残っているのは強敵ばかりです。やはり、地殻浮上でヤチママタタを他の地区から完全に分断した後に、戦いを始めるのが一番でしょう。」
ローブの男が答える。
「神我崎さんが言うほどって事は、本当に強いんだろうな。しゃーなし、明日を楽しみに待つとするかな。」
ジャージの男が、ローブの男、神我崎の言葉を受け入れその場に座る。
「楽しみ、ですか......そうですね、私も楽しみです。」
神我崎は小さく笑った。
闇は動き出す。