終焉の時、ヤチママタタSAGA
守り抜け!俺達のヤチママタタ!
キャトラも鈴音も、神我崎にブラストを使おうとした瞬間に、それを無効化され、使った本人がダメージを負ってしまっている。これが神我崎の言う『罪人を裁く力』だと言うのか。奴にとって、ブラストを使う事が罪と言うのであれば、そう言う事なのだろう。だったら......
俺は神我崎の元へと走って行く。ブラストを使わず、直接攻撃すれば、能力を発動させずに奴を倒せるのでは無いか。そう思った。
「くらええええええええええ!!」
俺は拳に思いっきり力を込めて、神我崎に向かって殴りかかる!
「正解です。」
そう言いながら、神我崎は俺の攻撃をひらりと躱す。
「なに!?」
俺の身体が突然動かなくなる。
「今ので皆さんにバレてしまっていると思うので、正直に話します。私の力は『発動したブラストを無条件に無効化し、それを使った人間に不幸のエネルギーを与える』と言うものです。」
神我崎が、自分の能力について説明をする。でも俺はブラストを使っていない。どうして身体が動かなくなっているんだ。俺の中に眠るブラストが怯えているのか?
少し間をあけた後、神我崎が再び話し出す。
「それでは、そろそろ本気を出すとしましょうか。」
天へと手を伸ばす神我崎。すると、伸ばした手の周りに白い光の塊が現れる。そして、その光の塊が小さく分かれ、そこら中に飛んで行く。その内の一つが俺の体に直撃する。
「うわああああああああああああ!!」
俺目の前が真っ白になり、手足の感覚が無くなる。一体どうなっているんだ!?他の仲間も皆光の力に飲み込まれている。
「フフフフフ......ハハハハハ!!これが正義の光!神の裁き!罪の浄化です!!さあ!!新世界の幕開けです!!」
神我崎が思いっきり笑う。
「救え無いやつだな。」
一言吐いて、網楽さんが神我崎の目の前に現れる。過去をすり替えるブラストの力で能力を打ち消したのだ。網楽さんのブラストは、時空や空間に干渉するブラストだ。その為、神我崎に認識される事なく発動する事が出来たのだ。
「何!?ブラストを持つ人間の全てを消し去るこの力をやぶったのですか!!?」
「おらよっと!!」
京平も動き出す。
「なんだよ!諦めないでもがいてたら動ける様になったぞ?神の力ってのも大したこと無いんだな!」
ヘヘッとニヤけながら京平が話す。
「そもそも、この人が勝手に言ってるだけでーこれは『神の力』なんかじゃないよー。ワタシ達と同じ、単なるブラストだよー。」
続いて鈴音も動き出し、そう話す。
「ブラスト使いを滅ぼそうとしている人間自身もブラスト使いなんて、言えないものねぇ。まあそうやって隠すのが、当然っちゃ当然かな?」
「今までよく隠し通せたよね。案外バレそうなのに。」
仰扇と佐川さんも光の力から開放され、神我崎に対して京平と鈴音に便乗するように話す。そして、俺の体も動き出す。
「神様ごっこはもうやめよう。神我崎、何をしてももう、お前の負けだよ。」
俺は神我崎の両腕を拘束し、そう語りかける。
「......こうなったら仕方がありません。最終手段です!!!神よ!!ヤチママタタ地区全ての人間に裁きを!!!!!!!」
神我崎が狂ったような表情で叫ぶ。
「何をする気だ!?」
網楽さんが問う。
「浮上しているこのヤチママタタの大地を思いっきり落下させ、全てを滅ぼします!!!」
今、何らかの力によってヤチママタタは海から4キロメートルほど離れた空に浮いている。
「この大陸を浮上させているのは私です。力を解除すればいつでも落とすことが出来るんですよ?」
神我崎が皆に問いかける様に話す。
「なあ!そんな事したらお前が殺したくないって思ってるブラストを持たない人間や......お前まで死んじまうんだぞ!分かってるのか!?」
京平が彼を止めるために怒鳴る。
「ええ、勿論分かっていますよぉ!!全てが終わるならそれで良いでは無いですか!!!」
神我崎はもう、正気では無い。いつ本当に大陸を落下させてもおかしくは無い。
「さあ!!終焉の時です!!」
「5!!」
神我崎が大陸を落とすまでのカウントダウンが始める。
佐川さんがキャトラの方をみて頷く。するとキャトラがブラストを発動する。
(皆、聞こえてるにゃか?もう大陸落下は避けられないにゃ!)
キャトラがブラストを使って仲間全員に高速で脳に直接言葉を伝達する。
「4!!」
(佐川さんのブラストは人から人へと破力を移す能力にゃ!)
その言葉を聞きその場にいた何人かはこれからするべき事を理解する。
「3!!」
(その力で鈴音ちゃんに皆で破力を送り込むにゃ!)
この言葉で全員が理解した。全員で鈴音に破力を送り、彼女が自身に集まった膨大な破力を消費し、物体操作のブラストで大陸の落下速度を緩めるのだと。
「2!!」
鈴音が今までに見た事とも無いような力強い表情になり。ブラストを使う構えを取る。佐川さんは鈴音の背中を右手で触る。
「さあ!皆は僕に触れて思いっきり破力を送り込むんだ!!」
「1!!」
俺、京平、仰扇、網楽さん、キャトラが佐川さんの体に触れて、ありったけの破力を送り込む。
「0!!終わりです!!全てを無に返しましょう!!」
神我崎が大陸浮上を解除すると同時に鈴音がブラストを発動する!!皆もそれをみて全力で踏ん張る。
「破力全放出!!守るんだ!!ワタシ達のヤチママタタを!!うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
鈴音が叫ぶ!!落下スピードはブラストの力で緩められ、大陸は時速約10キロほどのスピードで落ちていく。
「無駄な事を......」
それを見ていた神我崎は俺達を止めようと再び光の塊を作り出し、こちらに飛ばそうとする。
「そうはさせないよネ。」
ピキタンさんと薺さん、そして4人の研究員がやって来て、神我崎を押さえつける。神我崎は、思いっきり体に力を込めるが6人にがっちりと身動きを止められ、麻酔によって眠らされる。
「この......愚者共が......」
神我崎はそう言葉にし、諦める。
「神我崎様ぁ!神我崎様ぁ!」
ブラスト撲滅教の残党たちが数十人ほど神我崎を助けに、そして俺達の邪魔をしにやってくる。
「ここはオレが!!」
残党達を止めに、京平がその場を離れようとする。
「いいえ、僕が食い止めます。貴方がここから離れたら、破力の供給が足りなくなるでしょう。」
そこに現れたのは、京平のかつての学友であり、ブラスト撲滅教•七賢人の田辺零路だった。
「田辺!ああ!ありがとな!」
京平は零路に一言お礼をし、鈴音への破力の供給をそのまま続ける。零路は残党達への元へと走って立ち向かう。
「全員、凍らせてみせますよ!!」
地上までの距離、残り2キロメートル
予想外の事態が起こる。突然、網楽さんが倒れたのだ。
「みんな......すまない......」
そう言い残して、網楽さんは気を失ってしまう。
「まずい!この破力の量では安全に大陸を元あった場所に戻す事が出来ない!」
焦る鈴音。しかし、皆ここから離れる事が出来ない。あと一人でも破力の供給を止めれば、大陸が大きく揺れないようゆっくりと降ろす事が出来なくなる。
するとそこに、一人の少年がやって来る。
「きょ、キョウスケくん!?」
その少年は、一日前に京平が助けた少年、キョウスケくんだった。
「お礼を、しにきたよ!」
キョウスケくんも佐川さんの身体に触れ、破力を送る。
「網楽さん程ではないが、凄まじい破力の量だ!これで取り敢えず5分は持つぞ!君、ありがとう!」
佐川さんがそう伝える。
「鈴音ちゃーん、京平くーん頑張ってー!」
「キャトラー!!ふぁいとー!!」
声が聞こえて来た後ろを振り向くと、そこには今までブラスターハンターが助けて来た人々や、友人が俺達を応援していた。その中には零路と共に残党達と戦ってくれている人々もいた。
「みんなー!応援ありがとー!」
「おう!頑張るぜ!!」
鈴音と京平が笑顔で応援に答える。
「にゃにゃー!?彩ちゃん!?ミミちゃん!?が、頑張るにゃー!!」
友人がここにやって来るとは思っていなかったのか、驚くキャトラ。
「お兄ちゃーん!!負けないでー!!」
「あ、灯!?」
そこには仰扇の妹、灯もいた。病気で寝たきりだったはずの彼女は、本当にあの謎のブラストの力によって、元気を取り戻したのだ。仰扇の表情が、明るくなる。
「まだまだ現役なんじゃないですかー?佐川さーん。」
佐川さんの元後輩らしき支部の研究員が煽るように声をかける。
「いやー今も結構キツイんだよ!って言うか、君も手伝ってよー!!」
協力するように声をかける佐川さん。それを聞いて破力の供給の為に彼に触れる、元後輩らしき研究員。
「これからの未来を担うのは、君たちだよ!」
佐川さんが声を上げる。
「丈夫!ガンバ!」
オレの友人も何人かやって来る。声を出す余裕はもう無かったので、笑顔で返す。正直、沢山の人々にこんなに見られて、少し恥ずかしい......ただ......悪くはないなと思った。
「これなら、ギリギリ行けそうだ!」
佐川さんが全員にそう伝える。
地上まで残り500メートル
「みんな、ラストスパートだ!」
佐川さんがそう声をかける。全員が力強く構え、集中する。
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ブラスターハンターになって、新しい仲間が出来て、人を助ける為に一緒に戦って、人を守るために人を殺して、悔やんで、怒って、考えて、前に進んで、笑って......たった3日間なのに、色んな事があったな。
これからも俺は、戦い続ける。
その先の未来で、俺が倒れたあの日に登った、きっと美しかったであろう朝日よりも、綺麗な朝日がこの眼で見られる事を信じて......
ヤチママタタ地区•着陸完了。
「やったー。みんな!やったよー!」
鈴音がぴょんぴょん飛び跳ねながら喜ぶ。
「ああ、守ったんだ!オレ達のヤチママタタを!!」
京平も笑顔でそう話す。
「おっちゃん!やったにゃー!!」
キャトラが俺に向かって飛び込んで来る。俺はそのまま押したおされて地面に仰向けになる。
「ちゅーーーーーーーー!!」
キャトラが自分の唇を俺の唇へと近づける。
「おいおいおいおいおいおい!!」
テンションがいつもにましておかしい。このままキスを受け入れようと一瞬思ったが......
「やめろぉ!」
横に転がって避ける俺。
その先には数人の人々に拘束され、麻酔から目覚めた神我崎がいた。
「このまま罪を重ね続ければいずれ、とんでもない事になりますよ。その時に後悔しなさい。」
拘束されながら、神我崎が言葉を吐き捨てる。
俺は神我崎に対して、地面に横たわりながら、こう答えた。
「ああ、だから後悔しない為に、正しさを貫き続ける。正しいと思える未来を目指して、戦うさ!!」
こうして、ブラスターハンター達によって、ヤチママタタ地区の平和は守られた。この出来事は、ブラスト犯罪とそれに対応ひたブラスターハンターの行動が記録される事件簿「ブラハンレコード」に「ヤチママタタSAGA」と言う件名で、伝説として書き残された。
次回、最終回!丈夫たちの未来!