仲間達の言葉、答えを見つける為に
城月帝、敗れる。
それから数分後......
「二人とも、無事か!!?」
京平と鈴音の元へ、網楽さんが駆けつける。
「はーい、無事ですよー。網楽さんはー?」
鈴音が手を振りながら答える。
「ああ、私も問題ないぞ!」
網楽さんは笑顔でそう答えた。睡蓮院義理亜との戦いと同じように、彼女は自身の姉を自らの手で斬り、別れを告げたのだろう。
「さあ、七賢人は全員倒した!後は最高指導者の神我崎清彦だけだ!先に、佐川達が交戦しているはずだ。急ごう!」
網楽さんの言葉に対し二人は頷き、皆で神我崎と俺たちが戦っている場へと走って向かう。
網楽さん、京平、鈴音がそれぞれの敵と戦っている頃、俺は、佐川さんと仰扇に合流し、ブラスト撲滅教•最高指導者の神我崎清彦と対面していた。
「まさか、私が直接罪人を『裁く』事になるとは、思ってもみませんでした。全くの予想外です。」
神我崎は俺たち3人に向かって、そう言い放つ。
「罪人?何を言っているんだ!罪人はお前だろ!」
今までに見てきた惨劇を思い出し、俺は怒りの言葉を言い放つ。ブラスト撲滅教が起こしたテロで、何人もの人間が犠牲になった。これ以上の犠牲を出してはいけない。ここで彼を止めなけば!
「彼のブラストは未知数、慎重に行くよ。」
佐川さんが俺と仰扇に話す。その言葉を聞いた神我崎が、狂ったように笑いながら語る。
「私の力はブラストなどではありません。人々の犯した罪を裁く為に、天から授かった『神の力』です。」
そう言って神我崎は空を見上げる。
「神の力......ねぇ......」
仰扇がボヤく。
「罪を裁くだとか何だとか言って!お前たちは何もしていない人間まで殺しているじゃないか!」
俺はそう叫んだ。自らが神に選ばれた人間かの様に振る舞い、人を殺す事を正当化しようとする神我崎を、俺は許せなかった。
「何もしていない。ですか......霧島薬子も、元々は『何もしていない』人間だったんですよ。」
神我崎がそう返答し、話を続ける。
「彼は自身のブラストのせいで壊れてしまったのです。彼は幼い頃は優しい少年だったそうです、それがいつの日かに自身のブラストを暴走させてしまい、家族や友人、身の回りの人間を沢山殺してしまったのです。」
「そして、その事件を聞いた人々から『怪物』と恐れられ、迫害、差別を受けました。それが原因で精神が崩壊、ブラストの力が抑えられない体になってしまいました。」
「それらに彼が耐えかね、自らの身を投げようとした所に、偶然居合わせた所を私が話しかけ、語り合いました。彼は『ブラストなんてものが無ければ』そう話していました。そこで私が手を差し伸べました。『君の様な人間が二度と現れないよう、ブラストを持つもの達を滅ぼそう』と......」
神我崎が語りを終える。
話しを聞き終わった俺は答える。
「でも、殺す以外の方法だって沢山あるだろ?確かにブラストが存在しなければ起きなかった事件は数多く存在する。だけどそれらは止める事、話し合う事で、解決する事だって出来る。」
神我崎が狂気に満ちた人間だと思っていたが、今ので考えを理解する事は出きた。
「ならば貴方は何故、骨川隆弘を抹殺したのですか?殺す以外の方法で解決出来るのでしょう?」
神我崎の言葉が胸に突き刺さる。殺すつもりは無かった。仕方が無かった。そう答えるしか無い。しかしこれらの言葉は、自身の意見を捻じ曲げる事になる。俺は返答する事が出来なかった。
抑えこんでいた、人を殺したと言う罪の意識が溢れ出す。
神我崎が続けて話す。
「貴方も、霧島薬子も、強すぎるブラストの力を抑えきれずに、人を殺めてしまった。骨川隆弘もまた、ブラストを持っていたが故に、復讐と言う道を選んでしまった。多いなる力は、人を狂わせるのです。」
「だから私が『最後の狂人』となり、全ての罪を背負い、ブラストを持つ人間全てを撲滅するのです。」
「クッ......」
俺は神我崎に対し、何も言い返せなかった。
「ほーほーなるほどねー。」
そこに、城月帝達をを倒し終えた、鈴音がやって来る。
「それがお前の考える正義ってやつなのか?」
少し遅れて京平がやって来る。
「理解は出来るが、納得は出来ないな。」
その後ろから、網楽さんがやってくる。
「皆さん!」
佐川さんが3人の方を振り向く。
「ニャー!!なーにうつむいとんじゃー!!」
3人がやって来た逆方向から、救急隊に運ばれたと思っていた、ボロボロのキャトラが走りながら俺に向かって思いっきり叫ぶ。
「キャトラ!?大丈夫なのか!!」
「あのままだと殺されそうだったから、気絶したふりしたんだにゃあ!怪しまれそうになったんだけど、そこにおっちゃんが来てくれた!そういえば、にゃあの事大切な人って言ってくれてたニャ~ね。も~てれる~!」
霧島に負わされたキャトラの傷は思ったより深くなかったみたいだ。良かった......
「全員集合。だねぇ。」
仰扇がニヤッと笑う。
「みんな......」
俺は、小さな声でそう呟いた。
「おっちゃん!おっちゃんが戦ったから、助かった人間も沢山いるにゃよ!!にゃあだって、おっちゃんがいなかったら......」
俺の耳元でキャトラが話す。
「でも俺は、人の命を......」
骨川が灰になる瞬間が、頭の中で思い出される。
「丈夫!!罪は消し去る事は出来ない。背負わなきゃならないんだ。悔やんで、考えて、前に進んで行くしかないんだよ!!」
網楽さんがそう語る。
「自分に対して、気に食わない事、どうしようもない事、沢山あると思う。そう言う事に思いっきりぶつかって、考えて、答えを見つけるのが、前に進むって事なんだと思うぜ。だからさ!」
京平はそう言って、俺に手を伸ばす。
「今、答えを出さなくたっていいと思うんだ。答えが見つかるまでは、自分の心の感じたままに、歩いて見るのもいいと思うよー。」
京平の後ろでニコっと微笑みながら、鈴音が話す。
「丈夫、僕はこれから、今まで人を傷つけた分、人を助けようって考えてる。僕が僕自身を許せるようになるまでね。僕が何を言いたいか、分かってくれてるって信じてるよ。」
仰扇も京平の隣で、俺に向かって手を伸ばす。
動けなくなった俺に、皆が声をかける。
こんな所で下向いてる場合じゃないよな!
左手で仰扇の手を、右手で京平の手を掴み立ち上がる。
「みんな、ありがとな!もう大丈夫!」
「大丈夫だけにな!!」
「うわ、出たにゃそのギャグ。」
キャトラが少し引きながら呟く。
「京平、なんか寒い、炎出して温めて。」
鈴音が早口で話す。
「お、おう。」
困惑する京平。
「ああ、自分の名前と大丈夫をかけたのか。」
ダジャレの解説をしだす網楽さん。
「フッ」
仰扇が透かし笑いをする。
「うん、もう大丈夫そうだね。うん、大丈夫。」
苦笑いをしながら大丈夫と言う言葉をナチュラルに繰り返す佐川さん。
少しの間を挟んだ後、全員が神我崎の方を向く。
「さあ、神我崎清彦!決着の時だ!行くぞ!!」
「どこまでも愚かな罪人どもに......」
「罰を与えてやりましょう!!」
神我崎が狂気に溢れた表情で答える。
(まずはにゃあがブラストを使い、アイツの脳内を読み取って、ブラストの正体を探るにゃ!)
キャトラが、仲間全員の脳内に直接言葉を伝える。それぞれが、了解のサインを出す。
(それじゃあ行くにゃ!)
「ぎにゃあああああああああ!!」
キャトラが神我崎の脳内を読み取ろうとした瞬間、彼女の頭に激痛が走る。彼女は痛みに耐えきれず屈んでしまう。
「どうした!?キャトラ!!」
俺が近寄り問いかける。
「アイツの脳内が、全く読めない......」
呼吸を荒げながらそう答えるキャトラ。
「人の頭の中を覗く......人間には許されぬ行為ですので、罰を与えました。禁忌に触れた罰を。」
神我崎が、屈むキャトラを見下しながら話す。
「さあ、次に裁かれたいのは誰ですか?」
これが、神の力!?