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ブラスターハンターズ ヤチママタタSAGA  作者: えのしぃ
第5章 決戦
26/30

鈴音の本気、別れの炎

怒る丈夫。その先に待つ霧島。そこに意外な人物が!?

 ―あれ......俺は何をしているんだ......近づいてしまったら死ぬだけだ......その場の怒りに任せて走ってしまった......俺は大馬鹿ものだ......


 (本当に大馬鹿ものだにゃー!!おらー!!)

 (ん?にゃー?......)

 俺は誰かに蹴られて吹っ飛んでしまった。


「キャ、キャトラ!?」

 俺の事を蹴飛ばしたのはキャトラだった。大きな耳栓と目隠しをしている。まさか!?

 (ここはにゃあに任せるにゃ!おっちゃんは早く仲間の元へ!!)

 キャトラが俺の脳内に直接語りかけてくる。キャトラは俺を逃がして、霧島と戦うつもりだ。目と耳を塞いだその格好からすぐに理解出きた。


 (五感全てを塞がれても、にゃあはこのブラストさえあれば何処に誰がいて何をしていようとしてるか把握出来るにゃ!だから早く行ってにゃ!!)

 キャトラ一人に任せる訳にはいかない。戦闘の経験も無いだろうし、とにかく心配だ。

 (うるせええええにゃあああああああ!にゃあも一緒に戦うにゃ!助けて貰った分、ここで返すにゃ!)

 そう言って、キャトラが笑う。

 (分かった、絶対勝てよ!キャトラ!!)

 俺はキャトラを信じて、佐川さんと仰扇の元へ走って戻って行った。


 (なんだこの女は、にゃーにゃーとうるさいな!確かに目と耳を隠せば俺のブラストは効かないだろう。ただその状態で俺を倒すことが出来るかな?)

 霧島が軽く微笑みながらナイフを取り出す。彼はキャトラから直接脳に声が届いてる事にまだ気づいていない。

 (倒せるから来てるにゃよ?あんたおっちゃんより馬鹿なのかにゃー?こりゃ楽勝だにゃ!)

 キャトラの口が動いていない事を確認し、霧島はようやくキャトラのブラストがどんなものか気づく。

 (こいつ、直接脳内に!?なるほど......そういうブラストか。中々厄介だな。)


 キャトラも同じくナイフを取り出し、戦闘の構えをとる。霧島は先程の流血刃りゅうけつじんで腕を出血させため、少し消耗している。

 「おら!喰らえ!」

 霧島はナイフをキャトラの顔を狙って振り回す。しかし、キャトラは相手の頭で何を狙っているかを読み取る事が出来るので、簡単に回避し、反撃する。キャトラの攻撃は霧島の手の甲を傷つける。

 「痛ぇなぁおい!」

 怒りながら、霧島は滅茶苦茶にナイフを振り回す。思考せずに振り回された、その刃はキャトラの顔を傷つける。そこから生まれたスキをつき、霧島はキャトラの腕を掴む。

 (しまったにゃ!)

 (これで終わりだ。直接ナイフで刺すのもいいがこいつの耳栓を外して、ブラストで確実に殺るとするか。)

 霧島がキャトラの耳に手を伸ばす。

 「終わりなのはアンタにゃ。」

 (何!?う......)

 そこで霧島の意識が、突然朦朧としてくる。


「そこでゆっくり眠っていろ......にゃ!!」

 キャトラが使っていたナイフは、鈴音も使っていた催眠ナイフ『赤蜻蛉アカトンボ』だった。霧島の手の甲を傷つけたと同時に、薺さんのブラストを元に作られた強力な催眠薬が傷口に染み込んでいたのだ。

「あ......おっちゃんたちの元へ急ぐにゃー!!」

 霧島に勝利したと思い、俺の元へと駆けつけようとするキャトラ。だったが......


「まだ終わらねぇよ......」

 霧島は途切れる意識を気合で保ち、自身のナイフで左腕を切りつける。


流血刃りゅうけつじん!!俺の心臓を貫け!!」

霧島の左腕から溢れ出た血が刃となり、そのまま自らの心臓を穿つ。


破力ブラスト......全開放オフ!!血の盃(ギーリス)!!」





 その頃、京平、鈴音、網楽さんは城月帝が蘇らせた死者達と戦っていた。

「まさかリベンジマッチが出来るとは、思っても見なかったぜ。さあ、次はお前が本気を出そうが出さまいが、俺は最初っから全力で行くぜ。」

 土井が鈴音に向かってそう話すと、全身に力を入れるように構えをとって叫ぶ。

破力全放出ブラストオフ!怪々エネルギール!!」

 土井の体が膨張し、近くに立っていたビルの3階分ほどの体格、鋼すらも砕くような筋肉をつけた姿になる。


「うわー巨人じゃーん。」

 鈴音がなんとも言えない顔で見上げる。


「こーれは流石にワタシもしなくちゃ駄目かなー。」


「一回した事あるんだけど、結構老けるんだよ?やだなー。」


「......仕方ないかぁ。」


破力全放出ブラストオフ......独裁舞踏会フィルギャマーニ。」

 破力全放出ブラストオフと同時に、鈴音が宙に浮く。

 空中を自由に移動しながら、土井に向かって話す。

「君と力勝負するの、きつそうだなー。」

 その言葉に対し、土井が笑って答える。

「力勝負で俺に勝てるとでも思ってるのか?」

「うん。じゃあ行くよ、そい。」

 鈴音が両腕を右側に思いっきり振る。

「何!?」

 すると、土井が足を掬われたかの様に転び、地面に倒れる。実際鈴音は土井の足の部分を物体操作の対象として思いっきり動かしたのだ。

「なーんだ、案外軽かったわ。やっぱワタシ、強いわー。」

「そんな......こんな呆気なく。ぐわっ!!」

 鈴音は次に倒れた土井の首を動かし、何度も顔面をコンクリートに叩きつける。

「自分でやっといて言うのもあれだけど、この戦法えっぐいなー。これしか思いつかなかったんだ、ごめんね。」

 土井が気絶するまで、顔面を叩きつけ続けるつもりで同じ動きを繰り返す。

「お!れ!は!ま!け!な!い!」

 叩きつけられながら声を上げる土井。

「まだ喋る元気あるのー?しぶといねー。」

 叩きつけるスピードを少し上げながら話す鈴音。

「......」

 土井の声が聞こえなくなる。

「ふぅ......やっと終わったぁ......ちょっと休もうかなぁ......うん、休もう。」

 余裕な素振りを見せていた鈴音だったが、かなり消耗してしまったようだ。一方的な勝負の様に見えたが、もう少しの間土井に耐えられていたら、鈴音の破力不足により立ち上がられ反撃されていてもおかしくはなかった。

「こんなに頑張ったの、初めてかもー。あ、でももう少し頑張らなくっちゃ。やっぱり休んでる場合じゃないや。」

 鈴音は、死者を蘇らせている城月帝の方へと向かった。






 その頃京平は、死の世界から蘇らせられ、城月帝の配下となった大瓦さんと戦っていた。

「大瓦さん......見てて下さい、これが、今のオレっす!!」

 大瓦のブラストによって呼び出された、彼の過去の姿の分身が本体の前に立ち並ぶ。

「さあ、見せておくれ、京平よ!!」

 京平は戦いの中で確信していた。城月帝によって蘇らせられた人間たちは、身体は彼の配下として命令に従うが、自我は生前のもののままであり、発する言葉にも嘘がないことを。即ち、目の前にいる大瓦さんはしっかりと京平の成長を感じていてくれていると言う事を!


破力全放出ブラストオフ!!混沌焔こんとんほむらリーヴァテイン!!」

 一日に二度、破力全放出ブラストオフをすると、一体どうなるのか、京平には分からなかった。破力全放出ブラストオフをするのは人生でこれが3回目だ。ただ、使わなければ勝てないと言う思いと、自分の恩師に対して、別れの前に全力を見せたいと言う思いが溢れ出していて、この後の事など何も考えていなかった。

破力全放出ブラストオフ!【終末劇場ラグナ】!!」

 大瓦さんの目の前に70人ほどの分身が現れる。

「京平が、こんな老いぼれじじいに負けるわけが無かろう。」

 大瓦さんの肉体は操られていたが、心までは操られていないようだ。大瓦さんは後ろで様子を見ている帝に話す。

「ここまでしても......勝てないのですね......」


 帝はそれを聞いて何を思ったかは分からないが、黙ってその場から逃げようとする。

「ダメだよー逃げちゃー!」

 そこに鈴音が現れて、彼女のブラストの力で宙に浮かされてしまう。帝は諦めた表情になり、抵抗をやめる。

「全然関係ないけど、ワタシのブラストって生物は対象にならないんだけど、生物の体の一部や衣服は自由に操れるんだよねー。我ながらチートだわーホントにー。」


 京平の周りを炎が包む。

「いっけえええええええええ!!やああああああああきいいいいいいいいいいはああああああああああああらあああああああああああああああえええええええええええ!!」

 京平の声と共に彼の周りを包んでいた炎が、大瓦とその前に立ちふさがる分身たちに向かって一気に解き放たれる。


「強くなったな......京平......」


まもる......やっぱり約束は、果たせそうだ。」


 大瓦は微笑み、炎に焦がされ、灰となった。


「大瓦さん。ありがとう。後はオレたちに任せて。」

 小さく涙をこぼしながら、京平はそう囁いた。





「はい、逮捕だよー。」

 鈴音がブラストを解除し、浮かせていた帝を地上に下ろす。

 地面に足をついた帝はうつむき、つぶやく。

「終わりだね。最後に殺す相手は自分自身。そう決めていたんだよ......」

 帝は懐からナイフを取り出し、すぐさま自身の心臓に突きさす。

「な、何やってんだよ!!」

 遅れてやってきた京平が声を上げる。

「貴方達には......分からないでしょうね......殺す事......死ぬことの美しさが......」

 帝が掠れた声でそう答えた後、彼の呼吸が止まる。

「死ぬことの......美しさ......」

 京平は暗い表情で彼の言葉を繰り返した。

別れと未来。

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