撲滅教の最高指導者、神我崎清彦現る
鈴音VS土井!
ライドットシティ
七賢人の一人、土井潤一郎と、暴動を止めにこの街へとやってきた夜桜鈴音。お互い向き合って戦闘態勢をとる。
戦いが始まった直後、土井は自身の心臓に向かって思いっきり破力をこめた拳をぶつける!
「破力全放出! 怪々力エネルギール!!」
相手の様子を見る事もせずに、すぐさま破力全開放をする土井。他の人のような見た目の変化は無かったが、鈴音は彼の破力が急激に上昇した事を感じ取った。
「なになに?いきなり本気ー?やる気満々じゃんねー。」
「最初っから全力で、これが俺のポリシーだからな。」
「へー、素敵だね。」
鈴音はそう答えながら、トルナタウンでも使っていた睡眠ナイフ【赤蜻蛉】をズボンのポケットから取り出す。
「ワタシは全力なんか出さないで、パパっと終わらせたいんだよねー。ごめんねー。」
そう呟き、彼女は自身のブラスト【物体操術:舞姫】の力を使い、土井にむかって赤蜻蛉をとばす。
「なんだぁ?このナイフは?」
腕で防御しようと構える土井。
「避けずに身構えるのね、都合がいいや。」
鈴音は土井の腕に向かって思いっきり切り裂くつもりで赤蜻蛉を操作する。この赤蜻蛉には薺さんの人を眠らせるブラストの力が込められており、少しでも対象に傷をつける事が出切れば、その対象を眠らせる事が出来る。
「お し ま い。」
鈴音がそう言ってキメ顔をしようとするが、ここで彼女が予想しなかった事がおこる。
土井の腕は赤蜻蛉によって切りつけられたはずだが、彼の腕には全く傷がついていない。
「うお、まじか。」
「そんなちゃっちいナイフで俺を傷つけられるかよ。」
土井は少し呆れたような表情で話し、そのまま自身の能力の説明を始める。
「俺のブラストは肉体強化。自身の肉体をより強く!固く!する至ってシンプルな力だ!」
「なるほどね、納得したわ。切れ味鋭いこの赤蜻蛉を、鉄を切る勢いで振ったのに無傷......中々やるじゃん。」
赤蜻蛉で傷をつけられない人は今までいなかったので、少し驚いていた鈴音だったが、土井から能力の説明を聞いて納得したようだ。
「本気出す気になったか?」
「なったわ、本気出さないと早く終わらなそうだから。」
「中々余裕そうに答えるじゃねえかぁ。」
「だって本当に余裕だからさー。」
少しニヤける鈴音。破力全放出の構えを取ろうとするが、何かにハッと気づいたような素振りを見せ、直立する。
「いや、待てよ。ここで破力全放出したらこの人倒した後に、他の人たち助けにいけなくなっちゃう。」
破力全放出をした後は、長い間ブラストの威力が急激に下がる。そうなってしまったら仲間たちの加勢に行けないと、鈴音は動きを止める。
「それに老けるのも嫌だしなー。やめとこっと。」
「なんだ、まだ全力出す気にならねぇのか......」
「いやいやー、全力は出すよ。ただ出し方を変えるだけ。先に聞いておくね?今からワタシ、酷い戦い方するけど許してくれる?」
「酷くてもなんでもいい、真剣に戦ってさえくれればな。」
土井はどんな形であれ、本気のぶつかり合いがしたいようだ。
「いいのー?真剣に殺意を込めちゃうよー?何も言わないでこれやるのは酷いと思ったから先に承諾はとったけど、まだ罪悪感がぁ......ええーい!もう全部言っちゃおっかー!正々堂々!」
鈴音はそう独り言を呟いた後、赤蜻蛉を取り出したポケットとは別のポケットから、6本の長針を取り出す。
「今から君にしようとする事、全部話しまーす!この長針を君の眼球と鼓膜を貫くように操作しまーす!頑張って避けて戦って下さーい!はい!ちゃんと話したからねーワタシ悪くないよー!」
長針6本を空中に浮かせる鈴音。
「ああ、いいぜ。それがお前の選んだ手段ならな!」
土井がそう答えた直後に、彼の眼球と鼓膜は全て鈴音の針によって貫かれていた。
「うわあああああああああ!!」
叫びながら、その場に倒れる土井。
「やっぱり卑怯だよねーこれ。国家公認のブラスターハンターがやる事じゃないよ......でもこれが一番効率が良くて、成功率が高いんだよなあ......ごめんね。何とかぎりぎり生活できる程度の視力と聴力は残るようにやったからさ......」
申し訳なさそうな表情で、自傷するように独り言を話す鈴音。倒れている土井の元へと近づく。その時、何処からか声が聞こえた。
「何をやっているのですか?土井潤一郎さん。誰にも負けないのではなかったのですか?」
声の主を探すため、辺りを見渡す鈴音。すると、一人のローブを着た男が、こちらに近づいて来る姿が目に映る。
「お初にお目にかかりますね。私はブラスト撲滅教、最高指導者の神我崎清彦です。」
丁寧な口調で神我崎が挨拶をする。
「貴方が一番偉い人なのねー。てことは、貴方を懲らしめて暴動をやめさせるように言わせれば解決だね。」
「暴動?いいえ、これは人々をブラストと言う名の呪いから開放するための『救済』です。」
つまらないお笑い芸人を見ている時のような表情で神我崎を見る鈴音。
「意味分かんなすぎてウケるー。ただのヤバい奴じゃんね。早く捕まえないと。」
「貴方は何も分かっていませんね。まあ、分かる必要も無いでしょう。今から貴方も『救済』されるのですから。」
鈴音と神我崎の戦いが、始まる。
次回はまた別キャラ視点で!!